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161.  さよならくちびる 《ネタバレ》 冒頭からいきなり「解散」の宣告で始まる。しかもその理由の説明もなし。これはもしかしてありがちサクセスストーリー系音楽青春モノとは違うのでは、という予感が走りますが、はたしてそのとおりでした。一つ一つのシーンの撮り方が丁寧だし、台詞も軽くない。だから、すべてが本音のぶつかり合いになっています。また、デュオのくせしてちっとも仲が良くない主人公2人の関係性も心地良く感じますし、それを扇の要のごとく的確につないでいる成田凌もいい仕事をしています。いろんなライブハウスの風景をきちんと作り込んでいる点も含め、制作側の手抜きのなさを感じます。難点は、このグループの立ち位置自体がはっきりしないこと(インタビューでは「飛ぶ鳥も落とす勢い」と言われていながら、ライブではガラガラだったりするし、かと思えば最後の函館では突然満員で大受けだったりするし)。[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-12-26 00:45:09)

162.  憐 Ren 学園ものの枠組の中でSF設定があるというのが売りのようなのですが・・・肝心のその学園描写が、観念的というか恣意的というか、つまり生徒たちが生きていないのです。与えられたシーンを言われたとおりに生徒役の人が演じているだけ、にしか見えません。よって、基礎が乏しいので、SF部分も効果が発生しませんでした。あと、意欲的な長回しも何か所かありますが、描写内容と関連しているわけでもないし、撮影技術が完成されているわけでもないので、それほど機能していません。[DVD(邦画)] 3点(2023-12-25 00:27:38)

163.  あぶない奴ら~TWO GUYS~ チンピラが若い詐欺師に負債の取立に行ったら、そこから二人してトラブルに巻き込まれて、いつの間にか追われるようになって・・・という王道アクション・コメディです。したがって、設定から展開からハリウッド・テイストなのですが、至る箇所にどんくさいB級風味もちりばめられています。スリルのつなぎ方や笑いのとり方はそれなりのレベルに達しており、ネタをぎゅうぎゅうに詰め込んでくるのはサービス精神旺盛ともいえます。しかし、それらのネタの相互間は著しく未整理というか、登場人物はまともに説明もされないまま次々に怪しいのが出てきますし、結局誰が何をしたかったのかもよく分かりません。まあ、そういった勢いと執念で突っ走りという作り方は、嫌いではないです。[DVD(字幕)] 5点(2023-12-24 00:06:07)

164.  東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2007) 映像を撮っているんだからそれをそのまま流せばいいのに、実況解説かと思うほどの同じ内容のナレーションを延々と重ねてくる構成にうんざり。出てくる人たちもことごとく類型的かつ表層的で、人格的な面白みがありません。●結局、東京タワーが何で出てきたのかも不明。●あと、九州弁が全然ダメです。[CS・衛星(邦画)] 3点(2023-12-23 02:20:08)

165.  メイキング・オブ・モータウン タイトルから推測できるとおり、モータウン全般というわけではなく、主として発足時に焦点を当てたドキュメンタリーです。よって、基本的には、最初に出てくる創始者のベリー・ゴーディとスモーキー・ロビンソンが喋りまくる内容です。ただし、スプリームスやスティーヴィー・ワンダーやジャクソン5など、有名どころの(特にデビュー前後の)あれこれはきちんと出てきますので、ただ2人が喋るだけというわけではないです。作り方としては、特に系統立てられているわけではなく、むしろ未整理にいろんな情報や映像が次々に提供されるという感もありますが、その後膨大な規模にまで発展したこのジャンルがどのようにスタートしたのかという歴史探究的観点からすれば、意義深いものがあります。[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-12-21 00:55:14)

166.  ボンベイ 《ネタバレ》 若い男女が一目で恋に落ちるが、両家の宗教が異なっているため、両家の父親からは猛反対を食らう。おおこれはボリウッド版「ある愛の詩」か、どんな怒濤のラブロマンスが展開されるのか、と期待が高まります。しかしその辺は前半であっさりクリアされてしまい、子供まで順調にすくすく育っていきます。そして後半は一転し、動乱だのテロだのというのが前面に出てきます。これはこれで凝っていて力も入っているのですが、しかし、結局家族のドラマはどこかに行ってないか?という気になってしまいました。クライマックスのところは、結局、主人公家族の側から見れば、「行方不明になった子供と無事再会した」というだけですからね。途中でせっかくストーリーに合流した双方の両親も、一瞬で退場してしまうのがもったいない。双方の父親が、最初は憎しみ合っていたのが徐々に和解するプロセスとその先とか、そういう側面からむしろ描いてほしいところでした。中盤のこの辺のコメディチックなところはなかなか面白かっただけに。●とはいえ、実際の暴動事件からこの当時はまだ間がなかったわけで、むしろ制作者の真意はそっちの方だったんだろうなあ。[DVD(字幕)] 6点(2023-12-20 00:39:14)

167.  宗方姉妹 脚本や芝居のつまらなさはやっぱりこの監督なんだけど、この作品に関しては、絹代さんと秀子さんのあふれ出る個性が、その教条的・威圧的な演出を何とか跳ね返そうとしていて、その渦のような衝突が興味深い。とはいえ、結局はあらかじめガチガチに定められた枠組みを出ることはなかったんですけどね。[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-12-19 01:32:28)

168.  小早川家の秋 《ネタバレ》 ある家族が支柱を失って離散状態になりました、というだけの話なのですから(そのコンセプト自体は悪くない)、まずその1人1人にどれだけ個性と位置付け、そして存在の必然性を与えられるかが勝負なはずなのですが、そこからしてできていません。家族の全員が平坦な演技、平坦な造形ですし、段取りで動いているだけです。したがって、それがどういう結論になろうと、ドラマになりません。●一方で、ごくちょっとだけ登場の笠智衆&望月優子の夫婦が与える不協和音的かつ不条理な存在感は、異様です。こういうシーンがもっとあればよかったのに。[CS・衛星(邦画)] 2点(2023-12-18 02:07:19)

169.  サウスランド・テイルズ とりあえず第三次世界大戦が起こって、その世紀末感の中で、いろんな登場人物があれこれをしていくということのようなのですが・・・とにかくぶつ切りの自己満足シーンが次々に流れていくだけであって、中心軸もなければ構築もありません。あえて既存のセオリーを破って作ってみましたと言いたいのかもしれませんが、結局、殻を破ろうとして、かえって殻に閉じこもってしまったというだけです。しかもその破綻した内容で140分以上というのは、実に辛い。[DVD(字幕)] 3点(2023-12-16 01:25:57)

170.  シン・ゴジラ 導入部で、勢いだけは感じつつも、えらく場面も台詞も切り替わりまくりで目まぐるしいなあと思っていたら、最後までそのまま行ってしまったのにはびっくりしました。この時点ですでにダメです。一つ一つの場面や台詞にいかに重みを持たせるかということはまったく考えられていないばかりか、むしろ積極的にその逆方向に行っています。つまり、役者たちはただの段取りをこなしているだけであって、演技は何もしていないということです。●そのことからは必然なのですが、人間側(政府側)の各人物が、有能とはいわなくてもせめて魅力的には映ってほしいのですが、それも達成されていません。もちろん、これだけ登場人物がいながら、それぞれの個性もありません。ということは、それを一掃するゴジラの怖さも表現されないということです。ただ、映像がそこにあるだけです。[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-12-13 01:19:18)

171.  婚前特急 《ネタバレ》 やたら観念的で設定ありきな導入部では期待が下がったのですが、一番のダメ男の田無が前に出てきてからは、話がぐいぐい引っ張られる。チエが不自然に暴力的なところに目をつぶれば、この2人のやりとりは、コメディとして完成しています。一つ一つのやりとりもシーンの置き方も丁寧です。一方で、難点は、田無以外の男がほとんど機能しておらず、最初にもっともらしく言っていた5人の分析とかどうとかが意味をなしていないこと。それなら、最初から2人に絞った上で、スパイスで西尾を出してくるくらいの方がよかったのではないでしょうか。●ラストは今日の基準ではえらくあっさり切り上げ風味ですが、50年以上前の映画ではむしろこういうのが普通であり、この作品はその辺のクラシカルな作風を意識したのではないかと思います。[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-12-08 01:09:09)

172.  好きだ、 高校生のときにあれこれあって、そこから17年後の34歳のときに再会なんて、いくらでも切ない胸キュンラブロマンスになりそうな設定なのに・・・とにかく全編にわたって、およそ演出の意図というものが感じられない断片映像が切り貼りされているだけです。もちろん、時の経過の表現もなければ変化もありません。まずこの監督は、「間」と「何もしない」とは全然違う、という基礎事項を最初に知っておくべきでした。宮崎あおいや永作博美まで起用しておいて、よくもこんな無駄遣いができるものです。[CS・衛星(邦画)] 2点(2023-12-07 00:59:57)

173.  アメイジング・スパイダーマン2 《ネタバレ》 前作に引き続き、やっぱりアクションヒーローの定式をなぞっただけになってしまいました。エレクトロは誕生時には割と魅力的で、どんな強い奴なんだと思わせてくれますが、あまりに何でもできすぎるくらい強すぎなので、逆にスパイダーマンに敗北すること自体に違和感しかない。グリーン・ゴブリンは、ライミ版の扱いにおける丁寧さと比べても、オマケ感がありありです。そしてライノに至っては、最後に出してきたのはちょっと凝ったつもりなのかもしれませんが、まったく機能していません。これはやっぱり、中盤のアクセントとして出てきて前座を務めるくらいが妥当でしょ。一方でヒロインとのあれこれも、別れたかと思えば未練がましくじめじめとよりを戻すというのを繰り返しているだけで、ラブロマンスとしても標準レベルに達していません。[ブルーレイ(字幕)] 5点(2023-12-06 00:24:01)

174.  アメイジング・スパイダーマン 《ネタバレ》 ライミ版の終了からわずか5年でまた最初からという理由が想像もつかなかったのですが、実際に見てみてもやはり分かりませんでした。とにかくライミ版の1作目の劣化コピーみたいな感じで、しかも話を速く進めたかったのか、正体はえらくあっさりばれてしまいますし、重要シーンのおじさん死亡のあたりなんかも、えらくあっさりです。また、エマ・ストーンは女子高生には見えませんし、逆にサリー・フィールドの老けぶりにもがっかりしました(同年の「リンカーン」ではそういうことはなかったので、これはやはり撮り方のせいでしょう)。それと、アクションシーンが、下水道とか校舎内とかえらく狭いスペースでチマチマやっているのも、何だかなあ。●全体としては、定番テクニックの駆使によって退屈せず見ることはできるのですが、あえて独立したシリーズの価値を保っているかと言われれば、そこまでは達していません。[ブルーレイ(字幕)] 5点(2023-12-05 01:13:52)

175.  油断大敵(2003) 《ネタバレ》 刑事と泥棒の、立場が正反対であるがゆえの友情類似の感情(極端にいえば「ヒート」のような)に着目した発想は悪くない。これを発展させるならば、刑事が泥棒から何を学び取るか、はたまた刑事は(まっとうな取調では落ちることがない)泥棒を、どうやったら変えられるのか(このあたりは「羊」か?)といったあたりが縦軸になるが、ネタの仕込みはもっと欲しかったとは思うものの、その筋を尊重しようという気配は窺える。●一方で、夏川結衣のパートは短時間の割に出来が良すぎるため、かえって宙ぶらりんな結果となっている。あれなら、絶対に後半にも登場しないとおかしいよね。そのため、結局、娘との関わりと泥棒とが、終盤に進むほど、横軸として絡まなくなっている。ソーセージのくだりが強烈だっただけに。[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-12-03 00:19:15)(良:1票)

176.  8年越しの花嫁 奇跡の実話 《ネタバレ》 それなりに特殊な症状ではないかと思われるのに、医学的な説明なり描写がほとんどない。覚醒した後の主人公の認識や記憶はどうだったのか(そもそも昏睡中の出来事に意識はあったのかなかったのか、なかったとすればどこをどうたどって社会生活への回復を遂げたのか、とか)が、まったく無視されている。つまり、「婚約者の存在だけ忘れている」という設定に飛びついているだけ。8年も見守り続けるというのは相当な苦労だと思うが、それについての主人公の葛藤や労苦が見当たらないので、むしろあっさりこなしているように見える(ないならないで、何が主人公の原動力や後押しとなったのかという要因はあるのではと思うが、それもない)。つまり、全体的に、エピソードの上辺だけをまとめたものにしかなっていないのです。[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-12-02 00:54:06)

177.  可愛い悪魔(1982)<TVM> 《ネタバレ》 これは「火曜サスペンス劇場」なのですが、当時のテレビでは「月曜ワイド劇場」「水曜ドラマスペシャル」「木曜ゴールデンドラマ」「金曜ドラマスペシャル」そして「土曜ワイド劇場」と、連日連夜、単発の二時間ドラマが見られたのです。その中には優秀な作品も数多くありますが、ほとんどは本放送一発きりで後は再放送頼み、もちろんソフト化すらされておらず、今では見ることができません。今だったらウェブアーカイブとかもできるはずなので、何とかしてほしいなあ。●そんな中でこの作品ですが、きちんとDVDにもなっているのは、やはり大林監督だからかな。内容的にも、テレビの枠内とはいえ気合が入っています。というか、よくぞゴールデンタイムに堂々と放映できたというような内容です(オチも含めて)。導入部はほんのり「オーメン」ですが、むしろベースは「悪い種子」ですね。いくつか、思いっきり下敷にしている場面もあります。脚本は突っ込みどころはいろいろありますが、まあ許容範囲内でしょうか。ただ、主人公が反撃らしい反撃をせず、ひたすらやられっぱなしなので(それがラストにつながるともいえますが)、見ていてストレスはたまります。わざわざ最初に、主人公もかつては異能力者だったという設定をしているのですから、そこが後で何か出てくると思ったのですが(それともまさか、あれは本当に単なる事故だったってこと?)。●というわけで、高い点かといえばそうではないのですが、火曜サスペンス劇場というフォーマットを物的な形として後の世に残した功績は大なので、この点数。[DVD(邦画)] 6点(2023-12-01 02:19:51)

178.  永い言い訳 《ネタバレ》 初期設定に溺れない丁寧な描写。何より、2人の妻を事故後は回想シーンですら出さないという慎み深さが、不在による「喪失」を強く実感させ、かえってその存在を強める効果を発揮している。また、子役兄妹の演技力の高さも驚異的。主人公2人の方が、むしろ押されている。●で、そのような地道な積み重ねは優れていますし、ありがちハプニングなんかがないのも良いのですが、結局そこで終わってしまったような・・・。例えば、ティーラウンジでの津村とマネージャーの会話の切り返しなんかは、静かな緊迫感に溢れています。下書メール発見の一瞬がもたらすパンチも強力です。誕生会のじわじわした会話内容もスリリングです。しかし、それらの前後を通じて、登場人物が何も変わっていないのです。したがって、それらをどう「受けた」のかが分からないので、せっかくの誠実な作りも、もやもやを残す結果になっています。[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-11-30 01:40:38)

179.  山猫は眠らない2 狙撃手の掟 《ネタバレ》 あえて続編まで見るまでもないと前作では思っていましたが、なぜ見たのかというと、「暗い日曜日」の名女優、エリカ・マロジャーンの他の作品を見たかったからなのでした。しかし、最初はそれっぽく登場するものの、その後は何か能力なり存在感を発揮するわけでもなく、「ただいただけ」なのが残念でした(しかも、ここぞというところで無理矢理な理由で退場させられるし・・・)。なお、作品としては、途中まではそれなりにいろんな登場人物が集合するのに、その後の処理が超雑です。あの兄弟なんて、「味方はこれだけだ」の台詞のためだけに出させられたようなものですよね。あと、最初の狙撃シーンでいかにも敵の強者っぽく映される護衛兵も、結局何もしてないし。[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-11-29 00:18:36)

180.  西部無法伝 白人と黒人が組んで、奴隷として黒人を売っておきながら、後で黒人が脱走する詐欺、という驚くべきコメディ設定。邦題はえらく古めかしいのですが、71年にまで下ればこういうのもありだったわけです。中心の2人は、丁々発止のテンポの良いやりとりを繰り広げながら、時にはタランティーノばりのダラダラ無意味会話もあったりします(タラは絶対にこれ見てるだろう、などと想像したりもします)。そしてそこに、まるで峰不二子のような敵か味方か分からない女性キャラが絡んでくるという展開。また、サブで登場する黒人少女もいいアクセントになっています。全体としては、もうちょっと引っ張れそうなネタでもすぐ次に行ってしまってかなり目まぐるしい印象も与えるのですが、それでもぎりぎりのところで一本の筋が通っています。[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-11-28 00:33:44)

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