みんなのシネマレビュー |
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161. 花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 真ん中の木立が画面を二つに分けている。センパイを引き連れているアリスが、木立につかまって、左のフレームに体を乗り出して、花に電話をする。この人どうするの?センパイは右のフレームにおとなしく収まって料理されるのを待っている。花が答えて曰く、「記憶喪失」のセンパイはアリスの元カレっていう設定なのよ。アリス目を点にして「うっそぉ、はやく言えよ」。このなんとも可笑しいシーンだけでも、ほんとうによくできた瑞々しい「映画の映画」だ。映画の筋の展開を、登場人物がフレーム内フレーム(木立)につかまって相談するという「映画の映画」。[DVD(邦画)] 10点(2011-08-19 13:14:38)(良:1票) 162. アジャストメント 《ネタバレ》 ドアとともに映画史はある。ドア一枚で異界と日常世界が接しているという発想は面白いし、映像的にも刺激的である。とくに主人公が、異界から日常へドアを介して投げ込まれるとき。[映画館(字幕)] 5点(2011-06-11 22:55:31) 163. フラガール 《ネタバレ》 蒼井優の踊りだけでも値打ちがある。しかし、「受けなかったら(入りが悪ければ)どうしよう」恐怖症の作品である。すこし恐がりすぎ、ベタにやりすぎで、そういう映画が多すぎる。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-26 11:28:17)《改行有》 164. 蟻の兵隊 《ネタバレ》 この映画を観ながら私は、比較の意味で、アイヒマンを扱った映画『スペシャリスト』を思い浮かべていた。個々人としてはみな小心で凡庸なのに集団としては残虐なことをしてしまう、とは『スペシャリスト』の認識で、そういうふうについ言ってしまうが、そういう理解の仕方ではものの役には立たない。もっと正確には、集団の上下関係の残虐性ということなのだ。集団の上下関係の残虐性に歯止めを掛けるような仕組みを制度化すること(いかにして可能か?)が必要だ。ターゲットは中国人というより、ひょっとしてむしろまず日本人下級兵だったとしたら?このことをあの『ゆきゆきて神軍』も強力に取り上げたのだった。これは過去のハナシではなく、集団の上下関係の残虐性が現在の日常において批判的に検証されているかどうかが問題なのである。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-26 10:34:12)《改行有》 165. キューポラのある街 《ネタバレ》 走る、きびきびした吉永小百合。吉永の最高傑作がこれ(いまだにこれ)。北朝鮮に「還る」友人を見送る際に吉永は言う「私たちもっと話し合えばよかったね」。これは泣ける。話し合うことができたのに自分の不明のせいでそれができなかった、これは泣ける(貸し切り状態の「京一会館」で私は人目をはばかる必要もなかった)。[映画館(邦画)] 7点(2011-03-26 09:20:47) 166. 花様年華 《ネタバレ》 寄り映像が観客の見晴らしを奪う。これがいい。それとパラレルなのは、お互いの妻と夫同士の不倫関係を特にきちんと見据えようとはしない男と女の姿勢。階段で出逢うこの二人とせつない音楽。[映画館(字幕)] 7点(2011-03-26 01:32:21) 167. ろくでなし(1960) この「噂の名作」を映画館で観るのに時間がかかった、かつては。ついに観ることができたときにはほんとうに興奮した。世間に追従するだけではない「若者」の映画、映画は若者のための野心的なジャンルとなったのだった。若者表現において吉田には小津との有名な確執があったし、これも日本映画史の貴重なひとこまである。[映画館(邦画)] 10点(2011-03-25 22:40:58) 168. すかんぴんウォーク 《ネタバレ》 大森一樹の吉川晃司三部作もすべて私の映画館的日常(「京一会館」に入り浸り)において観た。冒頭バタフライだった映画のはず。三部作の分まとめて5点献上。[映画館(邦画)] 5点(2011-03-25 21:33:50) 169. 座頭市(2003) 北野映画は『あの夏・・・・』が「いちばん」であると思う。北野映画がどうも途中でとまってしまうのはもちろん意図的な仕掛けなのだが、そんな余裕こいている場合ではないと、ほんとうに思う。もう私は、映画館に北野映画の封切りを観に行かなくなっているし。[映画館(邦画)] 4点(2011-03-25 20:54:08) 170. EUREKA ユリイカ 《ネタバレ》 青山真治とは相性がいいとはいえない。青山は暴力を主題としたいらしいが、暴力は映画を弛緩させる。さて『ユリイカ』における、探すのを止めたとき犯人が転げ出てくるというかたちは、この長回しの手法と合っているかもしれない、とはいえる。[映画館(邦画)] 4点(2011-03-25 20:11:27) 171. お葬式 《ネタバレ》 伊丹十三の書き物やタレントぶりのファンであったので、この第一作にはとくに注目した。過剰な演技にはしる財津一郎に抑制を命じたように、この監督はもっと自分自身に抑制を命じるべきであったろう。香典が木へと飛んだり、高瀬春奈のおしりがアップになったりとかは、不要であるとおもう。もっとさりげなく、緑と風だけで十分にいい映画であったろう。なお、以後の伊丹映画は駄目だった。[映画館(邦画)] 7点(2011-03-25 18:39:41) 172. 浮雲(1955) 《ネタバレ》 私にとって『稲妻』が最高であり『めし』や『驟雨』も素晴らしい。『浮雲』はもちろん名作なのだが、一見陰気だし、腐れ縁というものもあまり直視したくない。ほんとうにせつない、セクシーな映画ではある。[映画館(邦画)] 9点(2011-03-25 18:18:21) 173. 東京日和 《ネタバレ》 旅先で行方不明になった奥さんは小舟の中にいた。そのとき主人公のカメラマンがそれにカメラを向けたというショットはないのに、のちに死んだ奥さんを回顧するシーンで、小舟の中に横たわる彼女の写真が出てくる。これがうまいが、それだけ。竹中の映画はスタティックすぎる。[映画館(邦画)] 5点(2011-03-25 17:41:00) 174. ミスティック・リバー 《ネタバレ》 映画館から出てきた観客が、後味悪い映画だと吐き捨てていた。強者の犯罪がおとがめなしである「ハッピーエンド」は、アメリカ支配の隠喩かとも思わせる。ならばこれがアカデミー賞を取ったのは、ほんらいすごいことではないだろうか。[映画館(字幕)] 5点(2011-03-25 15:46:35) 175. 蛇の卵 《ネタバレ》 昔ドイツで観た。いまや、原語の直訳である邦題ならびにDVDがあるとは知らなかった(といっても私はDVDを見る気がしない)。ベルイマンにしては観念性を抑制して、ナチの「卵」が目立ち始める20年代を描いている。 いい映画だと思った。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2011-03-25 15:25:50) 176. ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 これはミュージカルファンでない私でも、素晴らしいと思えるものである。リタ・モレノは最高。ミュージカルは劇の舞台や俳優の身体をはるかに超え出る表象なのである。ということは、表象はこの場合なんらかのスタティックな代理・代行ではない、つまりシニフィエなきシニフィアンである。[映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 14:59:19) 177. ニュー・シネマ・パラダイス 映画館で観たときからべたついてくる映画だなという感じがあった。映画を好きになるはずの映画、ということを押し付けるような感じと言おうか。子供をあしらっているが、子供にとって映画はむしろ怖いものである。この映画の否定派の感想をいろいろ聞きたい気がする(ここまで2011年のレビューで評点が4)。いま見直すとフェリーニ感もあるし切ない味も良くて、評点の変更(2024年)。[映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 11:46:46)(良:1票) 178. カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 この世のせいで精神を病める人が、この世から病院へ逃亡しても、病院がまたこの世の縮図であるという悪夢。ところで、特定の人物を悪者として描くのはいうまでもなく問題の単純化である。[映画館(字幕)] 5点(2011-03-25 11:30:50) 179. 無常 《ネタバレ》 若き日に大阪の『北野シネマ』で入れ込んで観たこういう映画をいま見直すとツライことになるだろう。映画ってそのときにしか(『北野シネマ』にしか)存在しないと思えた時代は幸福だった(のかどうか)。「これでいいのや、自然なんや」という田村亮の大胆な台詞が耳に残っている。[映画館(邦画)] 8点(2011-03-25 10:32:00) 180. 気狂いピエロ 《ネタバレ》 この映画を二度目観た映画館は、京都の『松竹座』で、この映画館も今はもう無い(というか、シネマコンプレックスに建て替えられた)。サミュエル・フラーも出ていること、海はシネスコの横の広がりに合っていること、ワンシーン・ワンショットを執拗に追求しラストは溝口健二へのオマージュのパンで終わること、ランボー絡みのアナーキーな内容が映画の快楽の炸裂であること、等々、いい気持ちになれた映画だが、もっといい気持ちになってもいいはずの映画である。だがそうならない、なぜだろう。ゴダールはエクスタシー向きのシネアストではない。[映画館(字幕)] 7点(2011-03-24 22:46:24)
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