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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. グレイマン まず「グレイマン」というタイトルがいい。世の中の大多数の人間は、社会にとって「グレイ」な存在ですから、この時点でなんとなく共感できます。映画の中での動きはひたすら派手ですが。 で、汚職現場を捉えたらしいチップの行方が一つのカギになるわけですが、あれだけ他国の街中で、しかも白昼に市民を巻き込みつつ派手な銃撃戦を繰り広げれば、さすがにCIAのナンチャラも監督責任を免れないはず。もうチップなんてどうでもいいだろうという壮大な本末転倒感が魅力です。 しかし、最大の魅力はやはりアナ・デ・アルマス。めっぽう強くて頼りがいがありながら、けっして出しゃばらない。たいそうな美人でありながら、けっして〝女〟を武器にしない。世の男性が思い描く理想的な女性像じゃないでしょうか。チップよりはるかに希少な存在だと思います。[インターネット(字幕)] 7点(2025-05-08 01:26:20)《改行有》 2. 侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 評判どおり、けっこう楽しませてもらいました。たしかに時代劇はめっきり減りましたが、それはある意味で自業自得な部分もあるんじゃやないかと。古めかしい時代劇はそれこそ時代を感じさせてくれますが、今風の時代劇は現代劇をチョンマゲ姿で演じているだけという感じ。だったら現代劇でいいじゃないかと。 それはともかく、面白かったのは2点。1つは、主人公が最後まで素性を明かさなかったところ。割とすんなり現代に溶け込んでいたし、周囲の人も、いきなり現れて真剣を振り回す主人公について詮索せず、あっさり受け入れるのが面白い。ギャラの振り込みとかどうしたんだろうと妙に心配になりました。なんとなく、「ウルトラセブン」の最終回みたいなシーンがあるのかなと期待していたのですが。 それからもう1つは、主人公がショートケーキを食べながら「日本はこんなに豊かになったのか」とむせび泣くところ。一緒にもらい泣きしてしまいました。我々が歴史を学ぶ意味は、まさにここにあります。先人たちの苦難の末に今日があることを、我々は忘れちゃいかんだろうと。だけど今風の時代劇は、その教材にはならんのですわ。[インターネット(邦画)] 7点(2025-05-02 03:26:23)《改行有》 3. アイス・ロード 《ネタバレ》 いかにもアクション系のサスペンス映画のためにひねり出しました、という感じの舞台設定が面白い。よくぞここまで〝悪条件〟を思いつくものです。しかも、この手の作品の第一人者とも言うべきリーアム・ニーソンが主役となれば、ラストシーンはほとんど約束されたも同然。どれほど絶望的なピンチや裏切りや仲間の死があっても、〝正義〟はかならず勝つわけです。 だとすれば、期待するのは途中の紆余曲折ですが、なんだか行ったり来たり、倒れたり元に戻ったりの繰り返し。時間に追われているはずですが、あまり切迫感もなし。アイス・ロードより事業所幹部のアイス・ハートのほうが印象的でした。[CS・衛星(吹替)] 5点(2025-04-28 02:03:05)《改行有》 4. こんにちは、母さん 《ネタバレ》 驚くほど何も起きません。リストラも離婚も退職も、あるいは老いらくの恋も、ドラマでも現実でもよくある話。今さらもったいぶって見せられても、という気がしないでもありません。さすが大御所監督になると、何のヒネリがなくても映画になっちゃうんですねぇ。 見どころがあるとすれば、大泉洋と宮藤官九郎と吉永小百合がどう絡んでどんな演技をするか、ということぐらいでしょう。これはこれでけっこう楽しめましたが。 まったく余談ながら、この作品で田中泯が演じる浮浪者の名が「イノ」さん。たまたま少し前に見た「学校」で田中邦衛が演じた浮浪者も「イノ」さん。何かこだわりがあるんですかね。[CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-16 00:25:39)《改行有》 5. フォールガイ これまでエミリー・ブラントの出演作を何本か見てきましたが、もっとも年齢を重ねているはずのこの作品が、もっとも若々しく、かわいらしく見えました。女性は(おそらく男性も?)、実年齢や化粧具合より置かれた環境によって輝きもすればくすみもするということで。 作品自体はお気楽な痛快アクションものという感じ。ふだん見過ごしがちですが、たしかにスタントマンというのはすごいなと敬服するばかりです。 しかし考えてみれば、世の中のサラリーマンというのも、会社やそのトップや上司のスタントマンのようなもの。どんなに活躍しても当たり前のように受け流され、逆に失敗すれば自己責任。そんなことをふと思いつつ物語を追っていると、ついライアン・ゴズリングを必死で応援したくなります。 ただスタントマンも、安全第一の観点から、AIにどんどん置き換わるかもしれません。ちょうどサラリーマンがAIに仕事を奪われるように。[インターネット(字幕)] 7点(2025-03-22 02:02:09)(良:1票) 《改行有》 6. 正体 原作もドラマ版も知りませんが、現実に冤罪事件も誤認逮捕も逃亡劇も起きていることは、周知のとおり。それぞれいろいろな要素が絡み合って、こういう社会的エラーに至っているのだと思います。 この作品もそんな現実をフィクション化したような感じですが、お話があまりに単純過ぎませんかね。一見単純に見えるこの事件には、こんな裏があったんだよと見せてくれるのがフィクションの醍醐味じゃないかなと。複雑だったかもしれない要素をごっそり削ぎ落とし、登場人物をくっきり善人と悪人に分けてしまうと、それはもう「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」とかの世界です。そういうのが見たい場合はいいけれど、せっかく直近の新作で、しかも話題の役者がゴロゴロ出ている以上、もう少し今風のヒネリを期待していました。 ついでに言うと、これだけ話題の役者がゴロゴロ出ているのに、レビューの数がこんなに少ないのはなぜでしょうか。誰も見ていないのか、見ても評価に値しないと判断されたのか。[インターネット(邦画)] 4点(2025-03-07 01:55:14)《改行有》 7. エルヴィス その昔、YouTubeでプレスリーが「Bridge over troubled water」を歌っているのをたまたま見て、いたく感動した覚えがあります。あの力強くて暖かみがあって包み込むような声は、たしかに人気が出るだろうと。本家が歌うより曲のイメージに合ってるんじゃないかと。それまではド派手な衣装で腰をくねらせながら歌うオッサン、ぐらいにしか思っていなかったのですが、認識を改めました。 で、この作品。前半は紙芝居のようにナレーションベースで、激しく切り替わる映像では物語が進行しません。ちょっと変わってるなという印象。後半になってようやく落ち着き、いろいろバックステージが描かれます。どこまでもアクの強いトム・ハンクスがいい感じ。それにしてもやや長くて疲れます。 しかしスターというのは、どうしてこうハッピーなまま人生を終えられないんですかねぇ。スターだからなのか、それとも人間誰しも掘り下げれば似たようなものなのか。[CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-09 04:46:12)《改行有》 8. ザ・メニュー 《ネタバレ》 個人的に胡散臭い顔No.1のジョン・レグイザモに期待して鑑賞。やはり期待どおり、胡散臭い役どころでした。 お話としては、ある種の密室ホラーというか、計画的な復讐劇というか。しかしどれほど恨み骨髄とはいえ、あそこまでする必要はなかろうと。弟子たちまで一心同体というのが、洗脳と解釈すればいいのかもしれませんが、ナンセンス感も否めません。アニヤ・テイラー=ジョイの存在が〝味変〟のエッセンスになっていましたが、結局行き着くところまで行って気の利いたオチもなく、おしまい。要するに怖がらせてナンボの作品ということで。[インターネット(字幕)] 5点(2024-12-27 21:01:33)《改行有》 9. PLAN 75 かなり昔に見た「ソイレント・グリーン」の日本版・SFじゃない版という感じ。身につまされるというか、明日は我が身というか、まるでドキュメンタリーのようにリアルに現代を切り取っているんじゃないかと。むしろ、これ以外の解決方法があるなら教えてほしいと思うぐらい。 それは個人の尊厳とか、倫理観とか、政治家が悪いといった問題ではなく、ひとえに財政の問題だから。周知のとおり、日本政府には1000兆円を超える借金があり、さらに毎年増え続けています。その主な要因は、少子高齢化やバラマキ政策で社会保障費が増大しているから。借金には金利がつきものです。従来は日銀が国債を片っ端から買うことで金利を抑えてきましたが、これからインフレが進行すれば、金利上昇は避けられません。「1000兆円」が意識され、日本の財政そのものの信認も低下すれば(こいつアタマ大丈夫か、と疑念を持たれれば)、金利はより上がります。その分、国家予算の歳出に占める国債元利払い(現在は3分の1弱)は増えるので、代わりにどこかの歳出を減らさなければ財政が回りません。そのターゲットは、国家予算の3分の1強を占める社会保障費以外にないでしょう。 今は所得を増やすとか減税とか喧しいですが、政府が本来取り組むべき財政問題の本丸は社会保障費改革です。しかしそれはどの政党もできそうもないので、結局ギリギリまで先送りされ、切羽詰まって「特攻作戦」もとい「プラン75」みたいな制度に頼らざるを得なくなるんじゃないかなと。しかしどなたが考えたか知りませんが、この制度、フィクションとしてもけっこううまく設計されているように思います。 ただし映画としては、ストーリーも画面もひたすら暗いばかりで、面白みはありません。まあ日本と自分の行く末を考える一助にすればいいんじゃないでしょうか。[インターネット(邦画)] 7点(2024-12-23 04:47:51)《改行有》 10. ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 還暦を過ぎてなお、あれだけ全力疾走できるトム・クルーズはすごい。しかし今さら身もフタもないことを言えば、別に「ミッション・インポッシブル」じゃなくても、主演がトム・クルーズじゃなくてもいいじゃんという感じ。昨今よくある派手さとハイテク機器だけが取り柄の凡百のアクション映画の域を出ていないように思います。 個人的に好きなのは、往年のテレビ版「スパイ大作戦」。いくつもの奇跡を当たり前のように起こすという点では同じですが、何らかの役になりすまして敵陣の中枢に潜入し、チームプレーで大掛かりな小芝居を打って最後に悪玉を唖然とさせる、という頭脳戦が魅力でした。映画版では、残念ながらこれらの要素がほぼ欠落しています。 密かに期待しているのは、そろそろ走れなくなったトム・クルーズが、フェルプス君のような落ち着きと頭脳を獲得し、単独ではなくチームを率いて悪玉と観客を唖然とさせてくれるような新作が登場すること。まあ無理かな。[インターネット(字幕)] 4点(2024-12-22 02:27:21)《改行有》 11. ザ・キラー 主人公の生い立ちとか、人間関係とか、裏で動いているドラマとか、一般的な映画ならふつうに描かれそうな要素をギリギリまで削ぎ落とし、ひたすら「キラー」の生態に焦点を当てましたという感じ。だから全編にわたって主人公が出ずっぱり。こういう作品は案外珍しいんじゃないかと思います。 おかげで緊張感は持続します。やたら饒舌な一人語りで完璧な仕事ぶりを強調しながら、それが〝前フリ〟として機能したり、人間味がふと表れたりすることもあってけこう楽しめます。 しかし全体の印象としては薄い感じ。主人公のみ、しかもその断片しか描かれないので、物語に奥行きがないというか。もしかしたら世の中にはこういう人もいるかもね、というだけのお話です。[インターネット(字幕)] 5点(2024-12-14 02:51:20)《改行有》 12. 望み 失踪した息子ははたして加害者か被害者か。そういう両極端な舞台を設定したところが面白い。しかしそれだけで最後まで突っ走ってしまったというか、物語の展開としては特になしというか。結末を知りたくて見続けましたが、終わってみれば中身はあまりなかったような気もします。どう転んでも悲劇にしかならないし。[CS・衛星(邦画)] 5点(2024-10-20 01:15:50) 13. ドント・ルック・アップ これは面白い。地球に彗星が激突するという、おそらく天文学的な確率の話でありながら、ものすごくリアリティがあります。その避けられない宿命を目前に控えた人間がどう対処するか、笑いつつもいちいち納得してしまいました。 政治家も一般大衆も目先の利益ばかり追求し、都合の悪い現実からは目を背ける。感情を優先させるあまり、科学的な言説を押し潰してしまう。民主主義はあっさり衆愚に陥って、もはや誰もコントロールできなくなる。そんな歴史や昨今のニュースを何度も見てきた気がしますが、結局人間の本質は変わらないようで。「歴史は繰り返す。1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」とはマルクスの言葉らしいのですが、この作品はもはや喜劇にしかなり得ないでしょう。[インターネット(字幕)] 8点(2024-09-14 23:49:55)《改行有》 14. シャイロックの子供たち 《ネタバレ》 最初に佐々木蔵之介と柳葉敏郎が出てくるあたりは緊張感があって期待しましたが、話が進むにつれてヌルくなります。阿部サダヲはたいへん稀有な役者だと思いますが、出てくるだけでバラエティ感・コメディ感が強くなるというか。なんかうまく立ち回って万事解決するんだろうなあと思っていたら、本当にそのとおり。むしろ予想以上の〝活躍〟ぶりでした。最近話題の「地面師たち」とも設定がちょっと似ていますが、あれほどのバイオレンスではないにせよ、もう少しお金絡みならではのヒリヒリするような緊張感を味わわせてほしかったなと。[インターネット(邦画)] 4点(2024-08-19 02:29:16) 15. モガディシュ 脱出までの14日間 《ネタバレ》 これは傑作。「アルゴ」のソマリア・朝鮮半島版という感じ。南北の問題も絡むので、余計に楽しめます。〝素材〟の多い国はいいですね。大げさな暴力とユーモアはいかにも韓流です。 まあこうなるんだろうなあという予想どおりに進行するわけですが、山場はやはり、最終盤のクルマ4台による突破劇。しかしあれほど縦横無尽に撃たれながら、あの結果というのがすごい。ジェームズ・ボンドもイーサン・ハントもびっくりでしょう。 惜しむらくは2つ。1つは、思わせぶりな終わり方でしたが、その後、彼ら(特に北朝鮮側)がそれぞれ祖国でどういう処遇を受けたか教えてほしかった。史実ベースなので、結果は出ているはず。一説によれば、「転向」を咎められることなく金正日に歓待されたとか。正確なところは知りませんが。 もう1つ、アフリカの地理にも歴史にも疎い私は、「モガディシュ」というタイトルをすぐに忘れそう。これは個人的な問題ですが。[インターネット(字幕)] 8点(2024-07-16 01:43:16)《改行有》 16. ファーストラヴ(2021) 《ネタバレ》 妙に重たいです。親子関係で問題を抱えている人は、世の中に多数いるでしょう。それをテーマにするのはいいですが、この作品の場合、主要登場人物4人のうち3人が似たような問題を抱えています。世間一般に比べて濃すぎませんかね。味噌汁が出てくると思ったら、味噌そのものが出てきた感じ。それに中盤以降は、場面が変わってもやたらメソメソ泣いてばかり。味噌に塩をすり込む感じというか。いやもうええてと、見ているこちらが冷めてきます。 一方で、けっこう世間の耳目を集めそうな事件でありながら、心理士も弁護士も若い若い。優秀という設定なんでしょうが、何かフワフワしているというか、もっと重石になるような「大人」が加わっているのが一般的なんじゃないかと思います。そんなことを言い出したら物語の世界観が崩れてしまうかもしれませんが。まあ総括すれば、味噌汁を塩入り味噌で代用するような「深刻なおままごと」の域を出ていないということで。 ただ、芳根京子の狂気には目を見張るものがありました。[CS・衛星(邦画)] 4点(2024-05-11 20:48:50)《改行有》 17. Winny ある種のドキュメンタリーとして堪能させてもらいました。事の本質より言葉尻を捉えてナンボの法廷闘争の面倒くささとか、警察やメディアが当人を悪者に仕立てていく様子とかがリアル。紋切り型な言い方になりますが、概して日本は斬新なアイデアや異能の人を「和を乱す」として寄ってたかって潰そうとする傾向があります。その〝成果〟が「失われた30年」なのでしょう。 ただし、警察や検察が執拗に断罪しようとした理由がやっぱりよくわかりません。愛媛県警の事件との絡みも、ちょっと浮いていたような。[インターネット(邦画)] 7点(2024-04-19 02:50:27)《改行有》 18. ある男 《ネタバレ》 松本清張の「ゼロの焦点」の現代矮小版という感じ。サスペンスとしてけっこう最後まで興味を持てたし、邦画にありがちな無理な展開もなかったように思いますが、終わってみれば「それだけ?」というお話。こういうこと(ビジネス)が現実にあるかどうかは知りませんが、まああっても不思議ではないですね。日本人同士より日本人と東アジア人なら特に。[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-13 01:10:30) 19. アムステルダム この作品に出てくるテイラー・スウィフトって、あのテイラー・スウィフトですよね。ところが序盤であっという間に退場。音楽界ではかなりのスターのはずですが、映画界では扱いがずいぶん違うようで。 この違和感が象徴するように、ずいぶんちぐはぐな印象の作品でした。サスペンス風でありながら謎解きの面白さは感じられないし、コメディ風でありながらさして笑えず。発端となる将軍の人柄についてやたら持ち上げられますが、肝心の本人が生きた状態ではほとんど登場しないため、「あ、そう」としか思えない。だいたい「アムステルダム」と銘打っておきながら、アムステルダムの印象がほぼ皆無。ただ豪華キャストを眺めるだけが楽しみという感じ。 興行的に大失敗だったそうですが、そりゃそうだろうという気がします。[インターネット(字幕)] 4点(2024-03-30 03:22:12)《改行有》 20. オペレーション・フォーチュン ジェイソン・ステイサムのみならず、チームのメンバー全員の危機対応能力が高すぎて、ピンチらしいピンチがほぼゼロ。高級車で高速道路をどこまでもスイスイと疾走している感じというか。最初はちょっとワクワクしますが、すぐに飽きます。破断した道路の先からバイクで飛び降りろとまでは言いませんが、もう少しジェットコースター的なハラハラドキドキがあってもよかったんじゃないかと。[インターネット(字幕)] 5点(2024-02-14 01:39:25)
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