みんなのシネマレビュー |
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1. チェンジリング(2008) 型にはまった御都合主義とは程遠いクリントイーストウッド監督作品。しっとりとシリアスで重厚な作品を好む人ならこの作品はドンピシャで大当たりだろう。娯楽の域を飛び越えてひたすら問題提起を訴えてくる作品はそうそうあるものではない。思い出すたびに胸が苦しくなる作品が多いイーストウッド監督モノ。その中でもこの作品は本当に苦しくなる作品であり、人生とは何かを問うてきた監督の現時点で出せる200%が注ぎ込まれた一作と呼んでも過言ではない。見たあとに色々な思いがわいてきて一口に「感動した」といえないほど哲学的な重たい何かを背負わされてしまうが、それこそまさに監督が狙っていたことではないだろうか。現実に起きた事件をベースにしているという点も驚くが、そんな謳い文句など必要ないぐらい素晴らしい完成度だ。これまでイーストウッド監督の作品は淡々としている場面が多いせいか退屈だという声もあった。たが、この作品は絶妙なバランスでエンタメ要素を盛り込んでいる。もちろんそれは大衆に媚ているのではなく、作品の持つテーマ性をより濃く伝えるための手段である。そして特筆すべきはアンジェリーナ・ジョリーの熱演。彼女がこれほどまでに演じられる人だったとは思っていなかったので良い発見だった。[映画館(字幕)] 10点(2009-04-06 07:19:17)(良:2票) 2. パッセンジャーズ 色々な映画のツギハギのような印象はあるものの、すっかり騙されてしまった。ミステリ小説を読んでいるようなわくわく感があった。こういう作品は冗長になりがちだが、すっきりと短くまとめているところも好印象。ちょっぴり切なさを感じる要素もあり、つぎはぎ映画ながらも見たあと温かい気持ちになれた。[映画館(字幕)] 6点(2009-04-06 07:02:35) 3. フェイク シティ ある男のルール 原作・脚本ともにジェームズエルロイと聞いて期待していた。エルロイの書く原作小説と比べる気はなかったが、男臭い雰囲気と腹をさぐりあう展開はまさに彼の真骨頂だ。ハードボイルドやノワールが好きだったら楽しめる作品だろう。加えてキアヌがこういった役をやっているのは新鮮だった。かっこいいキアヌを見たいなら間違いなくおすすめ。ただ、作品性もあるので仕方ないが、ド派手なアクションよりも人間のいやらしさを表現しようとしているところがあるので、アクション大好きという人には物足りなく映るかもしれない。[映画館(字幕)] 7点(2009-04-06 06:53:44)(良:1票) 4. ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 アンジェリーナ・ジョリーの凛としたかっこよさに感服。ストーリーもどんでん返しがあり楽しめた。非現実的な描写も確かにマトリックス風だったがこれはこれでアリ。一般大衆ウケする作品だと思っていたが意外と評価が分かれているのでびっくり。中盤ややダレるのが惜しい。とにもかくにも、この作品はアンジェリーナありきである。[映画館(字幕)] 6点(2009-04-06 06:46:02) 5. 252 生存者あり 《ネタバレ》 感動救助物にはそそられないのだが、前半のパニック描写は邦画にしては頑張っている。駅が水浸しになっている風景等は、自身の記憶とリンクし臨場感をもたらしてくれた。こういった不死身+自己犠牲を働く男性主人公はうっかり惚れてしまいそうになるのだが、そういうトキメキを与えてくれるという意味でこの作品は少女漫画的なのである。現に、憧れの王子様が大好きな周りの若い女性にこの作品は好評だった。私自身も嫌いではない。ストーリー自体はありがちすぎて興ざめだが、「252」という数字(暗号)という素材が陳腐なストーリーの中で良いスパイスになっている。映画を見た友人たちと「困ったときは252」と確認しあった。ひとつ勉強になった。この暗号というモチーフがなければとんでもない駄作になっていたかもしれない。[映画館(邦画)] 7点(2009-04-06 06:37:21) 6. 少年メリケンサック 予告編にとても期待させられて見に行った。しかし見に行ってわかったのだがこの作品はクドカンワールドを理解していないと難しい。加えて、80年代パンクや当時の時代の空気を懐かしいと思える人種でないとあんまり楽しめない気がする。つまり、ものすごく見る人を選ぶ作品だということ。ぱっと見は一般大衆に迎合したポップでキャッチーな作品に見えるが、ふたをあけると違った。「パンクとはなんぞや?」というテーマなのかもしれないが、そもそもパンクになど興味のない人からすれば「で?」といいたくなる内容かもしれない。個人的には楽しめたのだが、たまたまピンポイントでハマっただけだと思う。客観的にみると好き嫌いのわかれそうな作品である。[映画館(邦画)] 5点(2009-04-06 06:21:55)(良:1票) 7. 地球が静止する日 《ネタバレ》 宇宙人なのに外見は人間という設定が興味をひいた。肌の質感など、ぞくぞくするほどリアルな映像。地球上の生き物や建物が塵と化していくCG。冒頭のスリル。キアヌの美しいビジュアル。良かった点は以上。リメイク作品ということでオリジナルのほうは未見だが逆に見る気がなくなってしまった。ロボットなど懸命に表現している作り手の努力はわかるが、もうこういった作品は今の時代にウケないと思う。なんでもリメイクすればいいというものではない。[映画館(字幕)] 1点(2009-04-06 06:14:13) 8. ドロップ 最近はヤンキー物がハヤリらしい。それに便乗したかどうかはともかく、というよりそんなことはどうでもよく、問題は作品の質である。ケンカの場面が多く、暴力描写に耐えられない人にはおすすめできない。しかしそこをカバーするかのように脚本はギャグ満載で漫画ノリだった。ストーリー自体に目新しさはないが、この漫画ノリの脚本がテンポもよく笑いのツボも押さえており、品川ヒロシの得意分野が功を奏した形だ。青春群像劇の王道をいっており、型に嵌りすぎたきらいもあるが、ベタに展開していく話が好きならばおすすめ。個人的にはラストシーンがお気に入り。[映画館(邦画)] 6点(2009-04-06 06:05:10) 9. NANA 原作を読んでいるかいないかで評価が分かれる作品。なぜならこれは完全なる実写化を試みた“だけ”の映画だからだ。脚本・演出はほぼ原作通りで、役者陣も人によってミスキャストではあるが服装も人物設定もまんま原作通り。原作を未読である場合、それぞれのシーンで胸が熱くなることはあるだろう。しかし原作を知っている者からすると多少ジーンとすることはあっても漫画を読んで初めてそのシーンを見たときの衝撃には及ばない。となると「どこまで原作に近づけているか」という点しか注目できなくなってしまう。私がまさにそれだった。原作を知らない者のほうが純粋に映画として楽しめただろう。この実写化は原作のコアなファンを相当意識して作られたが、面白く見てくれるのは原作を知らない層だった、というのは皮肉な話である。但し原作ではいくら頑張っても表現できないもの、それは音楽である。バンド物語という側面を持っている今作品はライブのシーンが重要であり、どんな曲を歌っているかという点は原作を知っている知っていないにかかわらず興味をひくことは必至である。また中島美嘉、伊藤由奈という2アーティストが役名でシングルをリリースするというクロスオーバー的策略によって、実写化の長所を際立たせようとしたことは評価に値すると思う。原作を知らなければ高い点数をいれたかもしれないが、私は原作を熟読していたため今作品には3点以上いれる気にはなれない。[映画館(邦画)] 3点(2006-07-24 05:37:08) 10. 海猿 ウミザル 《ネタバレ》 ベタな展開が悪いとは思わない。この作品はひたすらベタに、というか王道に徹しようとしている点は潔ささえ感じられた。だから安心して観ていられるのだが、あまりに予定調和に過ぎるためドキドキハラハラ感が少なかったのも事実。遭難するという最大のクライマックスシーンさえもそこに至るまでがあまりにもベタに進んでいたため「一体どうなるの!?」という手に汗を握るような感情はわかなかった。ありとあらゆる場面でベタベタなので「死ぬわけないよ」と端からわかってしまう。王道ストーリーは嫌いではないのだが、面白かったな~という満足感が得られなかったのが残念。演出、音楽がショボかったのも迫力不足の一因かと思う。設定、ストーリー、役者陣、どれも私の好みから外れてはいないのにイマイチ気分が盛り上がらなかったのは、あまりにもベタという枠にお行儀良く収まりすぎてしまったからかもしれない。[DVD(邦画)] 4点(2006-07-18 08:02:28) 11. ダ・ヴィンチ・コード 《ネタバレ》 トムハンクスを始めとする豪華な俳優陣、ラストサムライなど数々の有名作品の音楽を手掛けるハンスジマー。彼らの名を予告編でみたとき期待で胸が踊ったが……結果は期待はずれ。原作が未読だからかもしれないが、話を詰め込みすぎていて展開が早すぎるためわかりにくくなっている。謎解きが軸になっているはずなのに、「○○が××だった」という反則技的などんでん返しに頼ってしまったせいか安直なミステリーという印象だけが残ってしまった。キリシタンに関する興味は持てたが、原作を読まなければついていけない映画など愚の骨頂である。二時間半で収めるのが無理ならば二部作にしたらよい。大物役者が勢揃いなのに彼らの魅力が生かされていない。話題性ばかりが先行し中身が伴っていない。ミステリー・サスペンス映画としてはお粗末な作り。[映画館(字幕)] 3点(2006-07-18 07:35:56) 12. 嫌われ松子の一生 「下妻物語」ではまだ観る者の幅を狭めてはいなかった。しかし本作品ははっきり言って観る者を選ぶ。面白いか否かではなく、生理的に受け付けるか否かという問題である。雰囲気はかなりシュール。物語を描いた映画というよりは、監督の「作品」を見せられている感じがするため、この世界観を新鮮と感じるか驚いて唖然としてしまうかのどちらかに分かれるだろう。不幸な物語をポップに仕上げるという方法には確かに目新しさを感じる。ミュージカルを見ているような楽しさも味わえる。かなり監督の「色」が出ていることも評価に値すると思う。がしかし、監督があまりにもやりたいようにやりすぎた感がしなくもない。悪く言えば独善的なのだ。いつまでもこの調子でやっていてはそのうち飽きられてしまうだろうし、かといってさらに独自のワールドを突き進んでも観客がついていけるかどうかはわからない……というようなことを鑑賞中に考えてしまった私はおそらく本作の世界観に没頭しきれていなかったのだろうと思う。ただ、マニアにはウケそうな作風だとは感じた。[映画館(邦画)] 5点(2006-07-18 07:13:00) 13. タイヨウのうた YUIという歌手の存在は映画を観て初めて知った。難病と純愛を絡めた作品は食傷気味だったのだが、期待していなかった分うっかり感動してしまった。この手の作品にありがちな死を悲しみの象徴として無理やり涙を誘うあざとい展開ではなかったことにも好感が持てた。どうにもならない状況の中、前向きに生きていくことの大切さをおそらくテーマにしているのだろう。そしてそのポジティブな気持ちの象徴=音楽への情熱という形で表現されている。作中でYUIの歌う姿は頻繁に使われているが、余計だとは思わなかった。なぜなら歌うことが生への執着であり、それこそが本作の伝えたいメッセージでもあるからだ。ヘンにじめじめせずに爽やかな雰囲気。一言で言えば「甘酸っぱい」。私のように歳を重ねた者がみると気恥ずかしさを覚えてしまうが、それはきっとピュアな物に対する一種の照れなのだろうと思う。若い人におすすめしたい一作。[映画館(邦画)] 7点(2006-07-18 07:00:18)(良:1票) 14. SAYURI 日本が舞台という大前提があるだけに、英語で会話が進んでいくことに違和感が拭えなかった。字幕スーパーではなく吹き替えを借りればよかった、とやや後悔もした。なぜ後悔したかというと、作品世界があまりにも美しかったから。映像美が評判よかったのでそれなりに期待はしていたが、充分期待に応えてくれた。軸にあるのはラブストーリーなのかもしれないが、それよりもサユリという一芸者の人生の激動期を時代背景を絡めながら描いている印象が強い。それだけにサユリの会長に対する淡い恋心よりも女同士の激しいバトルのほうが見応えがあったというのが正直なところ。そして芸者役たちの舞が素晴らしく、映画であることを忘れてショーを見ているような錯覚に陥った。ラストはやや拍子抜けしたが、それを補うに充分な魅力がこの映画にはある。[DVD(邦画)] 7点(2006-07-18 06:45:41)(良:1票) 15. 日本沈没(2006) オリジナル版未見、原作未読。確かにハリウッドの災害パニック物を要所要所で拝借している感はあるが、そもそもパニック映画というものは良作も駄作もそれぞれ似たり寄ったりなのでさほど気にはならなかった。邦画としてみると最近のものではきちんと手間隙をかけて作られている印象を受けた。さすがにアルマゲドン等には劣るが、その他上映が終わればすぐに忘れられてしまうようなハリウッドの駄作的パニック映画に比べたら今作品のほうがずっとマシである。なにより、日本人による日本人のためのパニック映画である。日本人である我々が観ずして誰が観る?NYの自由の女神が災害によって破壊されてもいまいちピンとこないが、京都の五重塔が壊れてしまう様は日本で生まれ育った者からすればリアルに恐怖を感じる。邦画のパニック物はどんどん進化している、と感じさせてくれる力作だった。中途半端につけたしたような恋愛要素ではまったく感情移入できなかったが、火山・地震など日本ならではの災害が起こる様子は見ていて気持ちがいいぐらい。やはりパニック映画は大画面・大音量の映画館で観るべき。ちっちゃなテレビ画面で観ても今作品の醍醐味は味わえない。[映画館(邦画)] 8点(2006-07-18 06:31:39) 16. ユー・ガット・サーブド 世界トップレベルのダンスが観られるだけでも映像価値として充分である。ストーリーはなんてことないよくある話なのだが、ダンスムービーだと割り切って観れば気にならない。とにかくダンス三昧。これまでのダンス映画はダンスシーンが少なくて物足りないと感じた人もこれなら問題なし。USの黒人音楽番組BETの司会者が出ている点もサービス精神を感じさせる。ダンサーはもちろん、これからダンスを始めたい人、もちろんB2Kファンにとっても忘れられない一作となるだろう。6点(2005-03-09 16:17:22)(良:1票) 17. 東京タワー 俳優陣が適役だった。映像も綺麗で音楽も良い。詩史と透は非現実的で、いかにも映画的なかっこよさ。喜美子と耕二は逆にとても現実的で、おそらく世間の不倫カップルはこういう人たちが多いのだろうと思わずにいられないリアリティがある。憧憬と共感を同時に感じられる二組のカップルについては申し分ない。だが構成が後半になってくるほど破綻していき、前半までの雰囲気をぶち壊している点が勿体ない。喜美子のキレっぷりと吉田の娘の狂気っぷりが妙に浮いているのだ。淡々としている原作に比べて映画版は激情的である。常に誰かが泣いていたり怒っていたりする。特に透の詩史を思う気持ちは大変切なく伝わり、胸を打たれること必至。映像美はなかなか良い線をいっているので、恋愛映画が好きな人やロマンチストな人はそこそこ楽しめるはず。6点(2005-03-09 16:05:36) 18. ターミナル トムハンクスの演技力に舌を巻いた。そしてスピルバーグの演出。映像も悪くない。しかし如何せん脚本がいまいちである。そこそこ笑えるしそこそこ切なくもなるのだが、あまりに出来すぎた展開(特にラスト)、都合よく配置された脇役設定には首を傾げざるを得ない。予想通りに展開していく今作品はまとまってはいるものの、良くも悪くもさすがハリウッドと思わせられる。予定調和でありながら、ついついひきこまれてしまうのは役者と監督の力量に他ならない。下手すれば陳腐になってしまいそうな設定や内容だが、完成度が高いせいか陳腐を陳腐と思わせないパワーがある。観て損はしない映画。9点(2005-03-09 15:51:19)(良:2票) 19. ボーン・スプレマシー カメラワークの揺れは多少なら我慢できるが、これは少々やりすぎであろう。観ているこちらのほうが酔ってしまいそうになる。しかしジェイソン・ボーンの活躍は爽快であり、カーアクションはこれでもかというほど徹底して迫力を追及している。BGMの使用を極力減らしている点もクールな雰囲気を保つのに一役買っていた。鑑賞後はジェットコースターに乗り終えたときのような疲労を感じるが、それは最初から最後までストーリーがボーンとFBIの追いかけっこに終始徹しているせいかもしれない。感動を求める映画ではないが、クールな雰囲気に浸りたいときには最適。その分、内容が薄くなってしまっているのでレンタルでも充分という気はしなくもない。5点(2005-03-09 15:40:35) 20. ローレライ 二時間以上もある大作ではあるが、展開が早いせいか飽きなかった。しかしそれだけに走りすぎている感もある。艦内で次々と起きるハプニングなどエピソード自体は悪くないのだが、人物同士の絡みが少ないため感動が薄い。CGは確かにリアリティが感じられないが、深海の神秘的な雰囲気は伝わってきた。戦闘シーンにもう少し迫力がほしいところ。音楽は文句なし。BGMやパウラが歌う透き通った歌声は小説では得られない、映像ならではの味わいがある。音楽も映画の大切な一要素であることを痛感した。役者も豪華な面々をそろえており、大御所や流行りの若手俳優のみならず、ピエール瀧やKREVAなど意外な人物が出演している点が興味深い。号泣するというより迫力や展開を楽しむ系統の娯楽に徹した映画であり、歴史的背景や辻褄など細かな点は目を瞑ったほうが楽しめる。当時の思想を今改めて振り返り、生きることの大切さを訴えようとする良作であると感じた。但しCGの安っぽさはどうしても目につくので、できれば映画館で鑑賞することをお勧めしたい。8点(2005-03-09 15:31:11)
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