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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL //www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123
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1.  イレイザーヘッド 《ネタバレ》 幻想と現実が入り混じり、しかもその幻想が安易な解釈を許すほどわかりやすくない。おおざっぱにまとめれば、駄目な男が不幸な現実から幻想の「天国」へ抜け出すまで、といったところだろうか。 あの奇形の赤ん坊から、萩尾望都のマンガ『イグアナの娘』を思い出した。このマンガは子供に愛情が抱けない母親の心情を、「娘が醜いイグアナに見える」という映像的にわかりやすい形で上手く表現した作品。 同じように、もしかしたらヘンリーと妻が子供を気持ち悪い怪物のように感じているだけで、ほんとうは義母の言ったように「ただの未熟児」だったのかもしれない、と思った。近所に住む女から見たら、ヘンリーの顔が赤ん坊の顔だったというシーンでさらにその疑いが強まる。赤ん坊が醜く見えるのは、自分にそっくりだからなんじゃないの? だから殺したかったんじゃないの? と。多分ヘンリーは、妻やその家族、赤ん坊よりも誰よりも、自分が一番嫌いだったんじゃないだろうか。 おそらくヘンリーは赤ん坊を殺したあと、自殺したのに違いない。醜い現実を何もかも目の前から消すために自分自身をこの世から消し、文字通りの意味で「天国」へ向かった。それがこの作品の、ほんとうの結末なのではないだろうか。[ビデオ(字幕)] 8点(2009-09-29 21:34:37)(良:1票) 《改行有》

2.  ダーティハリー 《ネタバレ》 気の滅入るような陰惨な犯罪と、捜査のためなら手を汚すことも辞さない刑事の一騎打ち。人間の最も醜悪な部分に向き合わざるをえない刑事の悲哀が表れている。無駄を削ぎ落としたハードボイルドな作りで、かなりいい味出している。連続殺人犯スコーピオンを徹底的に卑小な男として描いたのは正解だろう。劇場型連続殺人犯としてはちょっと不自然なパーソナリティなのだが、時代を考えれば仕方がない。 事件は一応の解決を迎えるが、終始トーンは暗い。モデルになったゾディアック事件は映画以上の犠牲者を出し、迷宮入りした。当時のサンフランシスコを知っているわけではまったくないが、おそらくは陰鬱な時代の雰囲気を反映しているのだろうと思う。井戸から全裸死体を引き上げる描写など、生々し過ぎて驚くほどだ。 惜しかったのは最後にスクールバスの屋根に飛びついた場面。それまでストイックなアクションばかりだったのに、このジャッキー・チェンばりの行動で一挙にリアリティが薄まった。というか飛びついてどうする気だったんだろう?[DVD(字幕)] 6点(2009-09-05 23:45:01)《改行有》

3.  チャイナタウン 《ネタバレ》 ラストシーンで絶句。けっして暗い話が嫌いなわけではないが、これほど突然にまったく救いのない結末を差し出されるとは思いも寄らなかった。クラクションの音が響き渡り、遅れて少女の金切り声が響くあの流れは文句なしに劇的であるとしても。 若き日のジャック・ニコルソン演じるギデスの、レトロではあるけれど頭の切れの良さを感じさせる捜査方法が面白い。回転の速さとすぐさま行動に移る決断力が凛々しくて、美形俳優とはまた違った渋味がある。くしゃみに被せて紙を破く音を隠したのには痺れた。賢いというよりは狡猾という表現が似合っている。 好きか嫌いはともかく、ハードボイルドものの映画としては知る限り最高の水準だと思う。ロス・マクドナルドを思わせる陰惨な雰囲気で、オリジナル脚本だというから感心した。 でも、狙いがあってのこの結末なのだろうとは思うけれども、感じ入るより唖然としてしまったというのが率直なところ。これほど邪悪な敵役が登場して、しかも完全に勝利するとは……。結末の衝撃が鳴り止まないクラクションのようにいつまでも尾を引いている。それが監督の狙い通りだとしても、なんだか得心が行かない。[DVD(字幕)] 7点(2009-07-14 08:40:01)《改行有》

4.  スティング ダサくてお洒落な音楽、雰囲気は好き。レッドフォードが健脚をもって逃走するシーンはツボにはまった。駅のホームを駆け抜ける場面、異常に足速くないか(笑)。歩幅が松田優作並みだったぞ。どんでん返しとしては革新的だったのかもしれないけれど、それ以上に全編を覆う空気の心地良さが素晴らしい。どんでん返し一本頼みで、それを取ったら何も残らないような最近のサスペンス映画はこういうところを見習ってほしい。ひとつひとつの要素を吟味して、丁寧に積み上げていく職人的な仕事をこそ継承すべきだろう。[DVD(字幕)] 7点(2008-01-05 00:54:12)(良:2票)

5.  未知との遭遇 《ネタバレ》 宇宙人が人類より遥かにレベルの高い存在として描かれていて、ほとんど宗教の匂いすらしますね。宇宙人の行動はかなり意味不明なんだけど、それも人間には計り知れない意図があるから仕方ないんだという空気でスルーされてる。宇宙の彼方からやってきた未知の存在が人類に叡智を与えてくれるという夢想は、いかにもニューエイジ思想で、現在からするとちょっと馬鹿らしく感じられる。 けれどもこの映画は独特の美しさを持っている。それは未知のものへの憧れであったり、拒絶や恐怖であったり、畏怖心であったりする。子供の頃はともかく、いろいろな知識を蓄えた今となってはオカルト系の話には白けきった気持ちしか湧いてこないんだけれども、無邪気にUFOの特集番組なんかを楽しんでいた時代が懐かしくもある。この映画には不可思議な存在に対するさまざまな感情が詰め込まれ、UFOに託されていた人々の夢が理想的な形で表現されている。 スピルバーグの故郷はアメリカで初めてUFOが目撃された町だったという。宇宙人は信じないけれど、人が夜空に抱いた素朴な憧憬の気持ちは、いとおしいと思う。[DVD(字幕)] 7点(2008-01-01 20:26:16)《改行有》

6.  ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう 《ネタバレ》 前半は微妙で点数にして4~6点ってところだけど、最後の二篇は7~8点つけてもいいくらいしょうもなかった。 古典ホラーテイストの第6話、パンとセックスて……「120mのペッサリーを開発した。これで全国規模で避妊できる」この台詞にマッドサイエンティストの真髄を見た。第7話、真っ白な服を着た精子役の男達が次々と穴から飛び出ていく映像を観て、なんか知らんけど映画ってほんとうに素晴らしいものだな、と感慨を覚える。 全体を通してみるとさすがに古さを感じずにはいられないが、30年以上前の制作だと考えるとちょっとした驚異かも。PLAYBOYのロゴにもなっている連中が主役のオープニングとエンディングは大好き。まったくの余談ですが、あいつらって人間にすら欲情するらしいですよ。あんなに可愛いくせして。[DVD(字幕)] 6点(2007-12-18 13:02:23)《改行有》

7.  ピンク・フラミンゴ 中学生の頃に観た記憶があるのだが、さっぱり面白くなかった。下品なネタも引いてしまうだけでとくに笑えない。これだったらガキの使いでも観ているほうが数百倍マシ。普通の意味で面白くないのはもちろん、話のネタになるほどの問題作でもない。この程度のエグい映像なんて探そうと思えばいくらでもあるでしょう。なんというか、あらゆる意味でつまらない。この世から消えてしまってもまったく惜しくない、稀有な作品の一つ。限りなく廃棄物に近い。[ビデオ(字幕)] 1点(2007-11-25 22:32:34)

8.  ファントム・オブ・パラダイス 《ネタバレ》 サイケデリックな狂気に満ちた、非常にあくの強い作風。残念ながら自分はいまいちはまれなかった。それなりに面白かったけれども、音楽も好みじゃなかったし。 ただ、主人公が悲劇の結末を迎えても周囲がほとんど気づかずにお祭り騒ぎを続ける哀切なラストシーンは素晴らしかった(パフォーマンスと勘違いしてふざけてついてくるやつがいるんだよね)。作中作のロックオペラ版『ファウスト』もかなりの出来で、あれが単発作品としてあったなら9、10点ぐらいつけたかもしれない(?)。 実に変てこな作品ではあるけれども、不思議と嫌いにはなれなかった。[DVD(字幕)] 7点(2007-10-21 17:56:03)《改行有》

9.  オーメン(1976) 「『オーメン』をホラーと思ったことはない」、「ホラーであれば引き受けていない」と監督がメイキングで話していて、びっくりした反面、納得した。題材こそオカルトだけど、確かにホラーよりもサスペンス、ミステリーの比重が強い。だからど直球のホラーを期待していると肩透かしをくらう可能性がある。 最近の映画のショッキングな表現に慣れている人ならなおさらのことで、キリスト教に馴染みがない限りは生ぬるく感じるかもしれない。自分は中盤の謎解きの下りで眠気と闘った。期待していたのとは方向性がちょっとずれていたので。 全体を通して陰惨で重苦しい雰囲気があって、今観ると古くさい部分も却って長所になっている。個人的には退屈したけれども、きっと普段はホラーに馴染みが薄い人ほど、とくに宗教に興味がある人であればけっこう楽しめるんじゃないだろうか。意外と真面目で渋い作品なので、そこは覚悟して鑑賞すべき。 ところで、なぜか子どもの頃、この映画が大好きだった記憶がある。これを子どもが面白がったというのが、わがことながら理解できない。きっと早送りして首ちょんぱの映像だけ観てはしゃいでいたのだろう。そんな子どもだった。[DVD(字幕)] 6点(2007-07-30 23:26:29)(笑:2票) 《改行有》

10.  田園に死す 《ネタバレ》 さすが詩人だけあって、タイトルがいいですね。 田園風景に突拍子もないアイテムを放り込んで、それを違和感なく調和させるセンスがすごい。狂気の世界でありながら独自の秩序を持ち、不思議に整然としている。下北半島を「まさかり」に見立てて、青森県のかたちを「人の首を切り落とす瞬間」だという発想なんて、完全に逝っちゃってる。鈴木清順とはまた違ったおどろおどろしさがあり、寺山なりの世界観が確立されている。天才的に狂っている。 明らかに異次元の世界ではあるけれど、それを通して日本の土俗的精神の本質ともいうべきものを浮き彫りにしているように思った。田舎の人間=心の温かい人間とステレオタイプにいわれがちだけど、日本でもっとも自殺率の高い県ワースト3が東北の三県だったりするように、強固な農村共同体によって苦しめられてきた人々は少なくない(自分も東北の出身だから遠慮なくいわせてもらう)。寺山修司はそうした田舎の暗部を鋭く抉っているように思える。異様な世界観ではあるが、むしろ現実を端的に表した結果としてそうなったのだろう。 母子関係という中心的な題材には共感しにくかったが、最後の独白にはそれなりに胸を揺さぶられた。幻想のなかでなお、寺山を支配する人間関係という呪縛。地方の因習にも似た歪んだ精神の戒律が、彼をがんじがらめにして離さない。マザーコンプレックスについてはともかく、そうした人間同士の「呪」のあり方は理解できるように思った。[ビデオ(邦画)] 8点(2007-02-27 23:34:42)《改行有》

11.  砂の器 《ネタバレ》 泣ければいいってもんでもないでしょうが、さすがにこれは泣きました。加藤嘉のあの腹の底から搾り出すような慟哭シーンには胸を揺さぶられます。一件の地味な殺人事件から人の抱える業、日本社会の暗部が浮き上がってくるプロットは見事の一言。終盤の音楽とともに犯人の過去、刑事たちの捜査をつなげてみせる演出もほんとうに上手かった。久しぶりにとても見応えのある、重厚な人間ドラマを観た気がします。[DVD(字幕)] 8点(2007-01-22 23:25:24)

12.  白い肌の異常な夜 《ネタバレ》 意外とよかった。硬派のイメージがあるイーストウッドの色男役が新鮮。 前半は映像といい音楽といい、映画というよりは古い海外ドラマみたいで安っぽかったのだが、なぜかクライマックスでは冷静な演出に。 突出した長所はないけれど、『ミザリー』の亜種のようなストーリーと、南北戦争時代の女学校という珍しい舞台設定が異様な雰囲気を生んでいる。 結末がちょっと安易過ぎる(いくらなんでもあの策略は見破られて当然でしょう)のが残念だったものの、個人的にはけっこう気に入りました。インパクトだけは強烈です。[ビデオ(字幕)] 7点(2007-01-05 22:01:38)《改行有》

13.  スケアクロウ 《ネタバレ》 ユーモアと知恵でもって争いごとを切り抜けていくライオネルと、己の腕力とタフさのみを頼りに生きているマックス。二人の生き方はいわば柔と剛、対照的であるがゆえにうまが合い、友情を深めていく。 ライオネルがマックスに良い影響を与えていたのは目に見えて明らかで、物語が展開するに連れてマックスはどんどん変わっていった。しかしラストに至り、実はライオネルにはマックスのようなタフさが欠けていたことがわかる。所詮案山子は案山子、おどけて戦いを避けるのは得意でも、ほんとうの試練にぶつかったときにはあっけなくへし折れてしまう。 次はマックスがライオネルを助ける番なのだろう。この映画はそこまでは描いていないけれど、あのラストシーンを観ればそうなることは明らかで、だからこそ暗い物語が嫌な後味を残していない。柔と剛、対照的な二つのタイプの強さはどちらも人生に不可欠なもので、ライオネルとマックスが一緒にいる限り、恐れるものは何もないはず――少なくとも、そう信じたいと思った。ラストに込められた幸福への願いが、忘れ難い余韻を残す。 脚本についてはまったく中だるみしていないと言えば嘘になる。けれどもだだっ広い荒地を男が歩いてくる冒頭と、空港の受付カウンターに靴の踵を打ち続けるラストカットは完璧で、それが作品全体を引き締めているように感じた。[DVD(字幕)] 8点(2007-01-04 14:30:17)(良:2票) 《改行有》

14.  狼たちの午後 《ネタバレ》 『狼たちの午後』というタイトルとあらすじを読んで、サスペンスフルなアンチヒーローものかな?と誤解してレンタル。全然違った。アンチヒーローに仕立てられてしまった凡人の行く末を描く、どこまでもリアルで泥臭い、人間ドラマだった。 最初の期待が筋違いだったのもあって、後半からは少し眠気に襲われた。実話に忠実だから仕方ないのだろうけれど、脚本が緩急に乏しい点は否めない。序盤はとんでもないことが始まりそうな雰囲気が満々なのだが、中盤から急に奇妙な家族ドラマの様相を呈し、サスペンスとしては中途半端にしか盛り上がらない。 初めからそのつもりで鑑賞できていれば、もしかしたらちゃんと楽しめたのかもしれない。いっそのことストックホルムシンドロームをネタにもっと膨らませて、ほとんどフィクションにしてくれたらよかったのにと思った(それじゃあ映画の主旨が変わってしまうけど)。なんにせよ、もっと脚本を絞る余地があったはずだ。 俳優さんに関しては文句なし。アル・パチーノはもちろん、神経質で臆病で、なおかつ危険な空気を漂わせるジョン・カザールが素晴らしい。出演作は少ないのに、この人の顔はしっかりと記憶に焼き付けられてしまった。[DVD(字幕)] 6点(2007-01-03 22:28:09)《改行有》

15.  アニー・ホール さすが代表作だけあって、これまで観たウディ・アレン作品の中では一番バランスが取れていると思う。非常にテンポがよく、ジョークはいつも以上に冴えているし、常識に捕われないユニークな表現は目を惹く。これだけ好き放題やっているのに違和感を感じさせないという力加減の上手さは天才的。 また、あくの強い作風が薄れて、全体的に整ったわかりやすい作品となっている。ウディ・アレンが苦手だという人でもこれならいけるんじゃないか――と思ったけど、みなさんのレビューを読むとそうでもないみたいですね…。 ほろ苦い結末がウディ・アレンのシビアな恋愛観を窺わせる。タマゴの比喩は、憎らしいくらいに的を射ていると思った。 しかしあれだけしゃべりまくれば、そりゃふられるわなあ。[DVD(字幕)] 8点(2007-01-01 14:22:58)《改行有》

16.  タクシードライバー(1976) 女性心理を繊細に描く作品は多々あるけれど、これはプライドの生き物である男性の心理を丁寧に描いた作品。職場の先輩に「俺たちのような負け犬に何ができる」と諭される場面はなかなか痛い。社会的な敗者になることへの強い恐怖は多くの男性が理解できるだろうと思う。そしてそれに妥協して生きていくだけの強さ(?)を持ち合わせておらず、たまりにたまったフラストレーションを上手く発散させることができない場合は、危険ですらある。暴力という最悪の手段をもって自己実現を図ることがあるからだ。 美しいが、あくまで硬質で冷たいニューヨークの街並みは『グロリア』を思わせる。なんともいえない寂しい雰囲気とともに、鮮烈に脳裏に焼きついた。[DVD(字幕)] 7点(2006-04-12 08:56:33)《改行有》

17.  時計じかけのオレンジ 『フルメタル・ジャケット』や『バリー・リンドン』と同じく、前半と後半で明確な対称性を為す構成となっている。前半では悪の化身ともいうべきアレックスが好き勝手に暴れまわり、多くの観客は不愉快になって、アレックスに対する憎しみを募らせる。後半ではアレックスが暴力を封じられて、ここぞとばかりに被害者たちが復讐する。しかしこの復讐がまた陰惨で、勧善懲悪のカタルシスなどとは程遠い。前半であれほど憎んだ邪悪、"アレックス"たる可能性が、実はすべての人間に潜んでいることを見せつけられる。アレックスに対して怒りを燻らせて「こんなやつ、死刑でも足りない」と思っていた人は少なくないはずだ。その欲求を満たそうとしたとき、被害者はあんなにも醜い加害者になる。前半では犯罪者/悪の側にあった暴力性が、後半では一般人/正義の側にそのままシフトする。 洗脳して表面上は悪から遠ざけることができても、アレックスが更生していなかったのはあきらかだ。暴力性はちょっとやそっとの小細工で封じ込められるものではなく、人間に普遍的に存在する性質の一つだからだ。暴力を憎む気持ちそのものが、暴力に転ずるという皮肉な真実。時計じかけにしたとしても、オレンジはオレンジ。いくら法律や倫理で縛ったとしても、人間もまた動物だ。いずれにせよ、完全な統制は不可能であり、腐敗する可能性は消えることがない。ところで、この映画を嫌悪してキューブリックに嫌がらせした者も少なくなかったそうだけど、随分と「暴力的」な連中だ。本当は「正義」を嵩に掛けた連中こそ、自らの暴力性を意識すべきなのだと思う。 【暴力表現について、追記】 たとえば『はだしのゲン』にだって残酷な表現が多いけど、それはもちろん戦争の悲惨さを伝えるのが目的なのであって、間違っても読者の暴力性を満たすためではありませんよね? キューブリックの場合ひねくれてるからわかりにくいんですけど、本作の暴力表現もそれと同じ意味で必要だったと思うのです。暴力性を満たすための表現ではなく、暴力性を告発するための表現として。キューブリック作品には一貫して人間の暴力性に対する批判的な姿勢が見られます。決して「芸術的だから」というあやふやな理由で軽々しく暴力を扱う人物ではありません。[ビデオ(字幕)] 8点(2006-04-09 23:18:26)(良:1票) 《改行有》

18.  バリー・リンドン ロココ絵画の名作を思わせる、夢のように美しくて荘厳な映像。絵画を観るのが好きな人なら、これだけでも観る価値があると思う。脚本も恐ろしく完成されており、映像がそうであるように全体の構成が完璧なシンメトリーを描いている(前半は決闘に勝利したバリーが故郷を追われた後に富と名誉を得るまで、後半は財産を浪費したあげく名誉を失ったバリーが決闘に敗れ、故郷へ舞い戻るまで)。登場人物への感情移入を拒否するような作りも面白い。バリー・リンドンは間違っても善人とはいえないが、かといってとんでもない悪党と言い切ることもできない、ある意味ではすごく人間くさいキャラクターだ。エピローグの言葉を人間に対する否定ととる向きが多いようだけど、逆に救いを読み取ることもできないわけではない。ブロンテの『嵐ヶ丘』の結末にも似たような言葉があって、そちらは激しい生を全うした人物たちがようやく安らぎを得た、という慈愛の意味で使われている。栄光を求めて這い上がり、最後には己の欲望に足をとられて転落したバリー・リンドン。ひとりの人間の生涯を、綺麗な部分も醜い部分もひっくるめてまるまる映画にする。ただ「彼が生きた」ということをありのままに提示する。人間を描く方法として、もっとも実直で嘘のないやり方だ。いつものキューブリック作品には人間に対する皮肉や批判が見られるが、今回は趣きが違う。人間の愚かさを受容する、キューブリック流の人生賛歌を唄っているのではないかとも思えた。[DVD(字幕)] 9点(2006-03-31 19:38:20)(良:2票)

19.  サンゲリア あってないようなストーリー…よくこれで91分も続いたなと感心した。キモい、エグい、エロい、それだけ。あのゾンビ対ジョーズの企画は誰が考えたのか。バカなのか。バカだよな。いやに温和そうなサメで、あんまりゾンビに興味がなさそうだった(そういえば、サメのなかでも人間を襲う種類は希少らしい)。さっさと逃げようとするサメの口に無理やり腕を突っ込むゾンビ。アホな人間の思いつきに巻き込まれたサメ君が哀れでならなかった。[DVD(字幕)] 5点(2006-03-23 15:44:03)(笑:1票)

20.  悪魔のいけにえ 怖くはなかったが、面白かった。  これほど幼児的・動物的で理解し難い殺人者も珍しい。実話を基にしているというものの、モデルになった事件とはかなりかけ離れている。このようなパーソナリティの殺人者など実在しないはずだ。それでもリアリティが失われていないのは、この殺人者が属する家族の関係性に妙な説得力があるからだろう。  一番凶暴で強靭だが知性がなく、父親と弟のいうことは大人しく聞く長男(レザーフェイス)、弱々しいが父親に反抗できる弟、いちばんまともだが家族の長である父親、ほとんど死にかけている(認知症?)のに家族には慕われている祖父。一般的な家族愛とは違うが、不思議と強い絆に結ばれているように見える。  レザーフェイスは確かに恐ろしいが、おそらくこの家族のフォローがなければまともに生きていけず、一生を精神病院で送るのが関の山だろうと思われる。つまりレザーフェイスは家族全体が揃って初めて本当に恐ろしい怪物になりえるのだ。この奇怪な一家の存在感は半端ではなく、たぶん(犯罪を犯しているかどうかは別として)モデルとなった家族は実在するのではないだろうか。弱々しい老人に無理やりハンマーを持たせてヒロインを屠らせようとする"家族団欒"の場面が強烈な印象を残す。  いたずらに派手ではない殺し方といい、夕陽の中での奇妙なダンスといい、並みの映画とは狂気の迫真性が違う。監督自身が内側に狂気を秘めた人でなければ、これは創れないと思う。  ちなみに主演女優の方、初見時はただただうるさいと思っていたが、よく観ると恐慌状態にもきちんと段階をつけて演技している。ラストの逃げ切った後のヒステリックな笑いの演技なんかはとくに感心した。[ビデオ(字幕)] 7点(2006-03-23 01:24:02)《改行有》

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