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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12
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1.  復讐するは我にあり 《ネタバレ》 長尺を一気に見せる抜群の構成力と演出力はすさまじく、また名優たちによる質の高い演技の応酬戦には圧倒されました。 狂気を隠そうともせず欲しいものにはすぐに手を出す巌と、信仰や家庭といった守るべきものを防波堤として欲求を抑え込もうとしている鎮雄・加津子は対の存在として描かれています。また、男に振り回される幸薄い女という共通点を持ちつつも、巌が死刑になり、かよが病死してくれれば鎮雄は自分のものになるという打算を持って生きている加津子に対して、どこまでも運命に流されるだけの非力なハルも対の存在として描かれています。まさに四者四様であり、見る人の個性によって誰に感情移入するのかは違ってくるように思うのですが、私はハルの物語にもっとも心動かされました。 ハルは日陰者の人生を送っていますが、それは母親が殺人者になってしまったためであり、根本原因に彼女自身の落ち度はありませんでした。彼女の落ち度と言えば、不遇を振り払うだけのパワーもガッツもなかったことと、おそらくは他人からの冷たい仕打ちに遭い続けてきた人生なのに、それでも誰かを頼りにしようとしたことでしょうか。 本編登場時、ハルは住み込みで働いているボロ旅館のオーナーの言いなりになることで、そのうち旅館を譲ってもらえるのではないかということを期待していましたが、どう見てもオーナーにその気はなく、決して与える気のないニンジンを鼻先にぶら下げられているという状態でした。当のハルもオーナーの腹の内には薄々気付いてはいるものの、目の前の淡い期待にしがみつき厳しい現実を見ないふりしておく方が、現状打破のためのリスクと労力を負担するよりも楽であるという無意識の判断をしていたように見えました。巌が現れた後も同様です。巌が見せる夢に盲目的にしがみつき、後に巌が詐欺師であることが分かっても同じ夢を見続けようとし、そのことがハルと母親の死に繋がりました。 ハルは徹底的に非力で愚かな存在として描かれるのですが、こうした弱さは誰にでもあるものです。現実を直視し必要な対策を講じるということは精神と肉体を大変疲弊させます。だから多くの人は、現在の平穏が今後も続くものと漠然とした期待を抱き、目の前の問題を見ないふりしようとします。この要素には私自身にも多分にあるため、ハルの弱さには大変共感できました。 他方で、主人公・巌の物語には感覚的に理解しづらい部分がありました。巌とハルの母親の会話や、逮捕後の巌と鎮雄の会話にて明言されているのですが、巌は父・鎮雄を殺したいほど憎んでおり、その屈折した感情が一連の反社会的行為に結びついていたとの解釈になっています。両者の対立はそれほど重要な要素であるにも関わらず、その憎しみの根源というものがよく見えてこないのです。何か個別の事例がきっかけということではなく、根本的な人間性が合わない、生き様を1mmも肯定できないという対立なのだろうことは何となくわかるものの、鎮雄の何がそんなに気に入らなかったのかがよく分からないために、肝心の巌の物語の通りは悪くなっています。[インターネット(邦画)] 7点(2018-07-04 18:46:37)《改行有》

2.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 裸一貫でスタートしながらも、仲間を増やしつつトントン拍子で成功を収める若き日のヴィトーと、金も権力も持った状態でありながら、何かもがうまくいかないマイケルの対比。マイケルは優秀なビジネスマンではあるが、人間というものが見えていなかったのです。だから組む相手を間違えるし、身内のグリップにも失敗してしまう。そして、マイケルの行動原理は一貫してファミリーの合法化であったにも関わらず、事態を収拾しきれずに殺しでカタを付けざるをえなくなるという皮肉な結末。 本作はテーマの打ち出し方が素晴らしかったし、過去パートと現在パートを同時進行で見せるという製作当時としては掟破りの構成が監督の意図した通りの効果を上げているという点で、第一作並みに優れた作品だと思います。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-03-18 02:48:40)《改行有》

3.  ゴッドファーザー 冒頭、娘をレイプされた葬儀屋の親父の話をじっくりと聞いてやるヴィトーの存在感。彼がセリフを発する前の時点ですでに、この人に相談すれば物事が解決するのだなということが充分に伝わってきます。このマーロン・ブランドの魅力と、その演技に対して余計な干渉をしないコッポラの落ち着いた演出の凄さは本当に凄いと思います。 本作はキャラクター劇として優れており、ヴィトーをはじめとしたコルレオーネファミリーの面々に、憎たらしい敵対マフィアや汚職警官と、全員がキャラ立ちしています。また、3部作中ではもっとも娯楽性が高く、忍従を重ねたコルレオーネファミリーが、最後の最後に暴力的な手段で問題解決する様には適度なカタルシスが宿っていました。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-03-18 02:48:02)(良:1票) 《改行有》

4.  SF/ボディ・スナッチャー 《ネタバレ》 過去4度の映画化作品の中でも最も印象的で、『ボディスナッチャーズ』と言えば本作を連想する人が恐らく最も多いであろう作品。確かにその完成度には素晴らしいものがあります。 問題が顕在化する前でも不安定なカメラワークや耳障りな環境音、薄気味の悪いキャラクターの挿入等で観客に何ともいえない不快感を与えており、この内容にふさわしい雰囲気が醸成されています。社会が変貌していくことの恐怖、知り合いが別人格となっていくことの恐怖、そして自分自身も望まぬ変化に襲われるという恐怖の描写は克明かつ的確だし、睡眠不足に耐えながらの逃避行という主人公たちの疲労感までが観客に伝わってくるため、一種のライド映画としても機能しています。70年代の社会派SFでありながら見世物映画としての面白さも兼ね備えており、さらには観客を絶望感で打ちのめすオチのつけ方も秀逸で、極めて上質な娯楽作となっているのです。 ただし話の展開は遅く、「すでにネタが割れてるんだから、早く次に行ってよ」という部分でも相変わらずもったいぶった演出をされて、説明的な部分では少々退屈させられることがマイナス。製作年代を考えれば仕方のないところではありますが、もう少しテンポアップして欲しいところでした。[DVD(字幕)] 7点(2016-01-19 15:00:00)《改行有》

5.  脱出(1972) 《ネタバレ》 ド田舎には、常識の通用しない土人同然の集落があるのかもしれない。狭い国土の日本でもこの感覚は多少ありますが、広大な国土を抱えるアメリカともなれば、それは大きな恐怖でもあります。本作は、アメリカ人が潜在的に抱えるそうした恐怖を映像化した作品であり、根強い人気を誇るテキサスものの源流ともなった映画史上の重要作なのです。 世間知らずの頑固者っぽい地元住民と、田舎を小バカにした主人公グループが接触し、いつ爆発するかもしれない緊張感を孕んだ冒頭から、イヤ~な汗をかかされます。そんな中、ギターが得意なドリューと、バンジョーを持った地元少年が即興でセッションし、両者とも素晴らしい腕前を披露して場の緊張感を和らげます。通常であれば心温まる一幕となるはずの場面ですが、その少年が近親相姦を連想させる奇形チックな顔立ちなので、観客に残るのはむしろ不気味さだったりします。 本筋に入るとヴィルモス・ジグモントによる素晴らしい撮影によりアメリカの美しい自然が映し出されるのですが、その合間にも不吉な前兆がいくつも挿入され、またしてもイヤな気分にさせられます。アナルレイプとその反撃後には、人を殺した罪悪感と、田舎者に復讐されるかもしれないという不安感からグループは精神的に追い込まれていきますが、ここからの畳み掛けは最高でした。 ドリューが川に投げ出されたが、その理由は分からない。そのうち、「ドリューが撃たれるのを見た」と言い出すメンバーが現れ、見えない襲撃者との戦いが始まります。彼らは、近くにいたもうひとりの田舎者を襲撃者であると考えて殺害しますが、そいつがアナルレイプに加担した歯抜け男かどうかは分からないし、グループの命を狙っていたのか、それともたまたまそこに居ただけなのかも分かりません。 命からがら襲撃者(と思われる人物)を撃退したグループはドリューの遺体を発見しますが、そこに銃傷はなく、狙撃説は間違いだったことが明かされます。さらに、川下りのゴール地点へ行くと彼らの車が無傷で届けられており、田舎者が結託して襲ってきたという物語は、彼らの幻想だったことが判明します。極度の緊張と情報不足により、彼らには現実とは異なるものが見えてしまい、その幻想からさらに不安が増幅していくという悪循環に陥っていたのです。そのすべてを見透かした保安官による締めくくりも素晴らしく、70年代らしい含蓄ある作品となっています。[DVD(吹替)] 8点(2015-08-06 16:03:30)(良:1票) 《改行有》

6.  マーティン/呪われた吸血少年 他人より若干色白ということ以外に吸血鬼らしい特徴はなく、十字架も日光も平気で、カトリックの教会にまで出入りするマーティン。時折挿入される20世紀中頃と思われる回想も、彼が実際に経験したことなのか、それともただの夢なのかが判然とせず、マーティンは本当に吸血鬼なのか、それとも自分を吸血鬼だと思い込んでいる普通の人間なのかが意図的にぼやかされています。観客に解釈の余地を残した作りはいかにも70年代っぽくて、私は嫌いではありません。また、吸血鬼と言えば性的なアイコンでもあり、本作にもちょいちょいヌードが出てくるのですが、どの場面も艶かしく撮られていることには感心しました。ロメロはゾンビ親父としての印象しかありませんでしたが、監督としての引き出しは意外と多いようです。 こうして部分評価可能な点が少なからずある反面、作品全体としてはとっ散らかっていて、良作にはなりきれていません。例えば、マーティンとクーダの関係。クーダはマーティンを心の底から忌み嫌っているし、マーティンもクーダの頑固さには手を焼いているのですが、そんな二人が共同生活をするに至った経緯がまったく描かれていないため、ドラマの通りが悪くなっています。二人の間には捻れた依存関係があると思うのですが(信仰心の強いクーダは、神の存在証明の裏返しとして悪しき者を求め、内向的なマーティンは、吸血鬼という自分のアイデンティティを額面通りに受け取ってくれる人を求めていた)、そうしたものがまったく描かれていない点が残念でした。また、マーティンを「なまけもの!」と言って責め立てるババァの存在なども単発エピソードで終わってしまっていて、その意義を感じられるまで深掘りされていません。他方、マーティンがラジオの人生相談の常連になるものの、いたって真剣な本人の意図とは裏腹に「伯爵様」と呼ばれてネタキャラ扱いされてしまう件は、作品全体から見て明らかに不要です。 ファーストカットでは2時間45分もあったのですが、無名監督と無名キャストで内容も地味とあってはヒットが見込めないと、完成後2年もオクラ入りした後、世に出たバージョンは95分にまで縮められたと言います。その過程で重要なシーンの多くがカットされたようです。全体としては決して甘い作りではないだけに、まだロメロが元気なうちに完全版がリリースされることを望みます。[ビデオ(字幕)] 6点(2015-07-30 18:12:25)《改行有》

7.  地獄の黙示録 戦場に適応しまくった歴戦の勇者が、一方で戦争への適正を持たない新兵達を引き連れて理不尽なミッションを遂行する物語。どっかで見たことあるなぁと思ったら、スピルバーグの『プライベート・ライアン』とまったく同じ話でした。ジョン・ミリアスによるオリジナル脚本、及びコッポラの当初の構想では、見せ場が連続する『プライベート・ライアン』ばりの大戦争映画になるはずだった本作ですが、あらゆることがスケジュール通りに進まず、撮りたいものが撮れないという状況から、哲学性を前面に押し出したこの形に落ち着いたのだとか。。。 メイキングドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス』を見れば現場の混乱ぶりがよく分かるのですが、コッポラはこの状況でよくぞ最後までやりきったなと感心させられます。また、完成した映画にはそうした混乱がはっきりと反映されているのですが、それでも作品として一定の形に収められているという点に、コッポラの天才性が表れています。現場も映画も完全に破綻しているのです。ぶっ壊れて、どうやってもまとまらないところにまで追い込まれているのに、その破綻自体を映画の肥やしにしてしまっているという神業。スケジュール通りに撮られていれば出来の良い戦争映画止まりだったかもしれない本作に、芸術作品として数百年に及ぶであろう寿命を与えたものは、この破綻だったと思います。。。 ただ、これが面白いかと言われれば、それはまた別の話。凄い映画ではあるが、決して面白い映画ではありません。序盤のキルゴアパートをピークとし、その後どんどん盛り下がっていくという観客の生理に反した歪な構成。作品の要であるはずのカーツ登場以降の地獄のようなつまらなさ。役の存在意義がわからないのにやたら目立つデニス・ホッパーと、ウィラードの前任者という重要な役柄なのに完全に忘れ去られたスコット・グレン(当初の構想ではラスボス)。結局オチが付かず、なんとなくの雰囲気で逃げたラスト。見ていて眠くなりましたね。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2014-11-24 02:30:00)(良:1票) 《改行有》

8.  エル・トポ 監督自身が「娯楽を意識して作っていない」と言っている通り、個人の感性に合うかどうかのレベルの作品なので、点数をつけるのはとても難しいです。私はつまらないと感じたし、中盤辺りから映画に対する関心も失われてひどく退屈したものの、その一方で、物語にも映像表現にもめちゃくちゃにエッジが立っていて、「つまらない」で切って捨てていい作品ではないとも感じました。なので、中間の点数をつけときます。。。 本作がカルト映画として40年を超える寿命を得ているのは、作品の質だけでなく、容易に鑑賞することができないという稀少性にもあったのではないかと思います(プロデューサーと監督との間の確執によって、リリース困難な状態が数十年も続いた)。仮に、本作が容易に鑑賞可能な状況にあった場合に、ここまで熱狂的に支持されたかどうかは疑問です。 [DVD(字幕)] 5点(2014-06-05 00:04:58)《改行有》

9.  タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 公開当時はベトナム後遺症ものの一つとして理解されていましたが、現在の目で見れば、本作には時代や社会に縛られない普遍性があるということがわかります。トラビスがベトナム帰りであるという点は、銃器やナイフの扱いに慣れているという便宜上の設定に過ぎず(完全な素人では、クライマックスの大殺戮が荒唐無稽になりすぎてしまう)、作品の本質には何らの関係がありません。誰にでもある心の闇、それが克明に描かれているからこそ、本作は40年近くに渡って見続けられているのだと思います。。。 トラビスを完全な基地外ではなく、多くの人にとって心当たりがある範囲内でズレた人にしたという設定は、極めて秀逸でした。人と接したいんだけど、うまく立ち振舞うことができない。シビル・シェパードをナンパする時にトラビスが着ていたジャケットの絶妙なダサさ加減が(なぜ小豆色をチョイスしたんだ、トラビス)、何とも言えない哀愁を漂わせています。さらには、初デートでもこのダサいジャケットを着てくる。トラビスにとって唯一のおしゃれ着であるという点が二度泣かせます。初デートの失敗についても、彼らの周囲にはカップルが多く座っており、完全アウトの行為ではなかったという点が哀れみを誘います。ただ初デート向きではなかっただけなのですが、トラビスにはそれが分からなかった。デート先の選定ミスは男であれば誰もが経験することですが、迷惑そうなシビル・シェパードの表情と、気まずさ漂う二人の間の空気感には、自分自身の苦い経験を思い出させられるほどのリアリティがありました。。。 いくつかの失敗を重ねたトラビスは世間との関わりを諦め、自分自身の世界に閉じこもるようになるのですが、「今のみっともない自分は、本当の自分ではない。自分は、何か大きなことを成し遂げられる人間のはずだ」という漠然とした自信や、「自分を踏みつけた人間達に、いつか目にもの見せてやる」という復讐心は、誰しもが持つものです。こうした負の感情は映像化しづらいのですが、これを見事に映画で表現できているという点が、本作を傑作たらしめている要因だと思います。。。 ラスト、ちょっとした街のヒーローになったことでトラビスの虚栄心は満たされ、職場の同僚と談笑したり、自分をフった女とも大人の会話ができるようになる。あれだけ人を殺しといてオチはこれかいという脱力感も、本作のテーマに沿っていると思いました。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-15 15:52:15)(良:3票) 《改行有》

10.  ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版 《ネタバレ》 ダリオ・アルジェントとジョージ・A・ロメロというホラー界の2大巨匠がタッグを組んだ作品にして、泣く子も黙る世紀のマスターピース。映画史上の最重要作品のひとつであり、100年経っても見続けられるタイプの映画だと思います。。。 前作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の時点では曖昧だったゾンビの設定を明確化し、以降に製作されるすべてのゾンビ映画の基礎をこれ一本で確立してしまったという大きな功績を残した作品なのですが、そのレベルで終わっていないことがこの映画の本当に凄いところ。ホラー映画と言えば、主題となるモンスターや現象をどれだけ恐ろしく描くかという点に心血が注がれるものなのですが、驚いたことに、本作はそのベクトルで作られていないのです。ゾンビは弱く、ある程度の注意を払っていればその脅威から逃れることができるし、運と知恵次第では安全な居住スペースの確保も可能。文明崩壊の恐怖と同時に、文明に縛られず奔放に生きられる世界の居心地の良さをも描いている点が、非常に先進的だと言えます。さらに、主人公達が築き上げた均衡を破壊しに来るのはゾンビではなく人間だというオチの付け方も秀逸であり、生者と死者の対比とも相まって、「人間とは何か?」という哲学的なレベルにまでテーマを敷衍させています。ここまで多くのテーマを盛り込みながら、娯楽作としての面白さもきちんとキープできている映画は非常に稀であり、ロメロの構成力には舌を巻きます。。。 問題点を挙げるならば、登場人物が一様に魅力を欠いていたことでしょうか。美男美女はまったく出てこないし、特にかっこいい見せ場もない。いかにも70年代らしい映画作りなのですが、これが映画に地味さをもたらしています。また、尺の関係からか、登場人物達が過去に何をやってきた人間なのかについても触れられておらず、このことが観客との間の共感の接点を狭める結果をもたらしています。キャラの弱さについてはロメロも自覚的だったようで、本作の続編では、ローズ大尉やカウフマンといった強烈なキャラを配置するようになりました。。。 また、本アルジェント版については全体の描写が軽めになっており、さらには頻繁な音楽の使用も映画全体の雰囲気に悪影響を与えています。出来の悪い映画ならともかく、そもそもよく出来た映画に監督以外が手を加えちゃいけないなぁという好例となっています。[DVD(字幕)] 6点(2013-09-01 04:15:07)《改行有》

11.  地球爆破作戦 『ターミネーター』や『ウォーゲーム』の雛形となった映画という点で歴史的意義は感じられるものの、完全に色褪せた映画だと感じました。コンピューターの考えは浅はかだし、対抗する科学者達の戦略も弱く、「なるほど!」と唸らされる展開がありませんでした。さらには、世界大戦の恐怖を背景としている割に緊張感もなく、シドニー・ルメット監督の『未知への飛行』のようなポリティカルサスペンスを期待すると裏切られます。。。 公開当時、テーマの先進性ゆえに客が入らなかったという悲劇の歴史と、日本においては数十年間にも渡ってソフト化されなかったという稀少さが、本作の価値を実態以上に押し上げているのではないかと思います。70年代、80年代にテレビの洋画劇場で本作に触れた方々がその内容にブったまげたことは容易に想像できるものであり、ソフトによる再検証ができなかったことによって、伝説が一人歩きするに至ったのではないでしょうか。[DVD(吹替)] 4点(2013-01-07 00:26:07)《改行有》

12.  天国の日々 評判通り、映像美には引き込まれました。役者も美しく、テレンス・マリック監督作品中でも最高の評価を受けているだけの風格は十分に放っています。また、『シン・レッド・ライン』以降のような押しつけがましさがなく、意外なほどさくさくと物語が進行していく点も好印象です。テレンス・マリックは登場人物の心情描写を徹底的に排除しており、起こったことを淡々と描写することに専念しています。。。 ただし、映像とドラマがうまくシンクロしていた前作『地獄の逃避行』と比較すると、本作は映像が立ちすぎていて全体のバランスがやや崩れ気味のような気がしました。印象に残るのは映像ばかりで、肝心のドラマの存在感が薄いのです。鑑賞直後には「良い映画を見たなぁ」という気分を味わえたものの、レビューを書くにあたって内容を振り返ってみると、ストーリーの面で印象的な部分がほとんどなかったことに気付きました。深いようで深くない、いわゆる”雰囲気もの”に終わっている映画だと思います。[DVD(字幕)] 6点(2012-09-03 00:42:20)《改行有》

13.  地獄の逃避行 《ネタバレ》 突如挿入される自然の描写や詩的なモノローグといったテレンス・マリックの手法がすべてぶち込まれており、デビュー作の時点でスタイルを確立してしまっている点には恐れ入りました。『天国の日々』以降20年も監督業から遠ざかっていたのも、「これ以上監督業を続けても同じことの繰り返しだろう」と考えた結果なのだろうと思います。。。 『俺たちに明日はない』の二番煎じのようなあらすじですが、その実態は当時流行していたアメリカン・ニューシネマへのアンチテーゼ。負の感情をぶちまけまくっていたアメリカン・ニューシネマに対して、本作はいかなる感情をも排して光景のみを切り取るという作業に専念しています。1958年に発生したスタークウェザー=フューゲート事件をモチーフとし、無軌道な若者による連続殺人というショッキングな題材を扱いながらも、主人公を義賊とも悪人とも扱っていない点がなかなかユニークです。この主人公には何の目的意識もなく、行く先々でただ人を殺しているのみ。しばらくは決死の逃避行を繰り広げていたものの、飽きがくると自ら車のタイヤをパンクさせて警察に投降。逮捕後にも悪びれもせず、それどころか全米を騒がせた有名人として無邪気にはしゃぐという有様。なかなか斬新なアプローチではあるのですが、このレベルの無茶な犯罪に手を染める人間の心理って、案外こんなものではないかと思います。当初は殺人を犯す意図はないものの、目の前で発生した問題を解決するもっとも簡単な手段として殺人を選び続けた結果、死体の山が築かれるという。こうした本作の切り口にはなかなか惹かれるものがありました。。。 また、『シン・レッド・ライン』以降のような冗長さがない点でも、本作を良いと感じました。なんせ上映時間は94分ですからね。無意味に長い環境映像や、周りクドくて訳の分からんポエムは一切なし。物語をサクサクと進めていく簡潔な演出には感心しました。やれば出来るじゃないか、テレンスさん。[DVD(字幕)] 7点(2012-09-02 03:47:35)(良:2票) 《改行有》

14.  未知との遭遇 『ジョーズ』の成功で映画を自由に撮れる立場となったスピルバーグが、自身のオリジナル脚本をスタジオに持ち込んで監督した唯一の作品(スピは他に『A.I.』の脚本も執筆しているものの、そちらはキューブリックのアイデアを具体化しただけのもの)。かけられた製作費は『スター・ウォーズ』の2倍、『ジョーズ』の3倍であり、当時としては史上最大規模のSF大作だったわけですが、若干30歳にして一大プロジェクトの陣頭指揮を執り、大勢のベテランスタッフを動かして映画を完成させたスピの手腕は驚異的だと思います。また、彼の演出も絶好調。それまでは『激突』や『ジョーズ』などサスペンスアクションの分野で才能を発揮していたスピが、はじめて大規模な見せ場を含むSFに挑戦した作品だったわけですが、初めての経験ながらも彼の演出は堂々たるものです。後の『ジュラシック・パーク』も『宇宙戦争』も本作の演出を繰り返しているのみであり、この時点でスペクタクル演出の基礎を完成させていたという天才ぶりには驚かされます。才能とは恐ろしいものです。。。 以上、スピ演出のレベルの高さは認めるものの、映画として好きかどうかと聞かれると、個人的にはそれほど好きな映画ではありません。リチャード・ドレイファス演じる主人公ロイがあまりにウザすぎたのがその原因で、子供を3人も抱え、美人で優しい奥さんがいるのにUFO追跡に固執し、騒動の最中に出会ったシングルマザーと良い仲になるという自己中心的な人物を受け入れることができませんでした。この主人公については、小学生だったスピを残して家を出た父親像が投影されており、あえて否定的に描かれているというフシもあるのですが、それにしてもこの人物のウザさは異常。彼が家庭をブチ壊す様を見せられた後にファーストコンタクトだ、宇宙の神秘だと言われても、素直に感動することが出来ませんでした。彼は脇役の一人に留めておいて、より観客が共感しやすい人物を主人公とすべきだったと思います。[DVD(吹替)] 5点(2012-08-06 01:07:21)《改行有》

15.  ザ・クレイジーズ(1972) 低予算ではあるものの映画にはスケール感があり、なかなか見応えのある仕上がりとなっています。舞台は田舎町で大規模な見せ場はないものの、国家の一大事というハッタリは利いているのです。この時期においてウィルス感染ものといえば「アンドロメダ…」くらいしか存在しておらず、その「アンドロメダ…」にしても地下の研究室でウィルス対策にあたる科学者のドラマがメインであったため本格的に感染パニックをテーマにした作品は本作が初であると思うのですが、そんな中で本作は感染パニックものとしてほとんど完成形とも言える姿をしています。以降に製作される「カサンドラ・クロス」や「アウトブレイク」といった大作が完全に本作の影響下にある点から、この映画がいかに先進的な作品であったかが伺えます。また感染もののプロトタイプであるに留まらず、ロメロらしい体制批判の映画である点からも本作は評価できます。問題の根本的な解決よりも秘密保持や治安維持といった体裁を優先したために対応が後手に回り、さらには現場でウィルス撲滅の対応にあたる科学者の邪魔までしてしまうという政府や軍部の無能ぶりが描かれるのですが、本作製作から40年近くを経た現在の日本において、原発事故の最中で日本政府は同様のミスを犯しました。この先見性はやはり凄いと思います。ホラーとしても見どころが多く、幼いわが子を殺す父親が登場する冒頭にはじまり、編み棒で兵士を刺し殺すおばあちゃん、銃撃戦のど真ん中で掃除をするお姉さんなど、狂気の見せ場が目白押し。本作におけるロメロの仕事ぶりは神がかっています。唯一残念だったのは主人公にまったく魅力がなかったことで、ボサボサ頭のブ男には感情移入できませんでした。[ビデオ(字幕)] 7点(2011-10-20 22:20:24)

16.  カプリコン・1 打ち上げの迫ったロケットにスーツ姿のおやじが現れ、これから宇宙に飛び出さんとする飛行士達に「ロケットから降りろ」と言い出します。「何言ってんだよ、あんた」「いいから降りろ、大変なことが起こってるんだ」、、、この冒頭には引き込まれました。ミステリーとして最高の幕開けではないでしょうか。スーツのおやじは有人火星探査計画の責任者なのですが、この博士のキャラクターは実によく出来ています。元は夢と希望に溢れた有能な科学者だったが、大計画に携わっているうちに世渡りを覚え、気がつけば現実主義の悪人になっていた男。不満たらたらの飛行士に向かって一席ぶつ場面などはかなりインパクトがあります。このケラウェイ博士が引っ張る前半は出色の面白さで、この映画は史上空前の傑作ではないかと思いました。しかし、博士の出番が減る後半になると映画は一気につまらなくなります。新聞記者の暗殺に何度も失敗したり、監禁状態にあった宇宙飛行士があっさりと基地から逃げ出してしまったりと、細かい部分でもアラが目立つ状態に。もうちょっとシャキっとして欲しいところでした。宇宙飛行士のエピソードなどは丸々削ってしまい、主人公を新聞記者ひとりに絞って彼が陰謀を暴くという物語にしてもよかったと思います。[地上波(吹替)] 6点(2011-01-13 21:05:16)

17.  フューリー(1978) 《ネタバレ》 本来は90分程度で描くべき内容を2時間近くにまで引き延ばしており、正直かなりダルイです。緊張感皆無の追っかけ、恐怖心を微塵も抱かせない超能力者の脅威が何のメリハリもなくダラダラと描かれ、デ・パルマのやる気のなさが全編に漂っています。ビジュアルの巨匠による作品でありながら視覚的に面白いのは最後の1分だけで、あとは脚本に書いてあることをそのまま撮ってますという状態なのです。さらにこの映画を悲惨にしているのは脚本の出来が恐ろしく悪いことで、ダラダラとムダなエピソードが多い割に、本筋に関わる重要な点に限って舌っ足らず。元は親友同士だったというカーク・ダグラスとジョン・カサベテスの関係や、息子探しを献身的に手伝ってくれる看護師の人物像など、描かれるべきものがまったく描かれていません。主人公であるはずのカーク・ダグラスが中盤以降は空気同然の存在感となったり、空中浮遊のできる超能力者が転落死するという冗談のような展開を迎えたりと、一体何を考えて書かれたのか理解に苦しむ内容となっています。[DVD(字幕)] 2点(2010-11-27 22:17:58)(良:1票)

18.  ミーン・ストリート デ・ニーロの演技がはじめて評価された作品であり、かつデ・ニーロとスコセッシの最強タッグによる初の作品(それまでのデ・ニーロは、デ・パルマと仲良くやっていた)。登場人物達による意味のない会話や監督の好きな音楽がひっきりなしに流れるという演出は明らかにタランティーノに影響を与えており、映画史における本作の重要性はよく理解できます。しかし「面白かったか?」と言われると”No”で、鑑賞中に何度も時計を確認し、「あと1時間もあるのか」などと考えていたほど退屈した映画でもあります。マジメに働きもせず借金を重ねる親友の面倒を見ているうちに大変な目に遭うというだけの物語なのですが、この本筋に入るまでがまぁ長くて、はっきりとした物語も提示されないままひたすら登場人物達の意味のない会話を見ることは正直つらかったです。この題材で2時間弱という上映時間は長すぎで、もっとコンパクトにまとめてくれた方が見やすかったでしょう。[DVD(字幕)] 3点(2010-08-01 20:28:57)

19.  恐怖のメロディ 《ネタバレ》 「ストーカー」という言葉もなかった時代に、ヒステリックで危ない女性像をここまで作り込んでいることには驚きです。登場場面では「ちょっと良い女かな」と思わせておいて、除々に異常なところが出てくるという細かい演出は見事なものでした。バーテン役として出演もしているドン・シーゲル師匠の手助けもあったのでしょうが、監督デビュー作としてはかなり上出来だったと思います。ムダに長いラブシーンや音楽フェスなど、物語においてはまったく不要な場面もいくつかありますが、好きなものを入れたかったんだなぁという監督の個性が感じられて、こちらも好意的に見ることができました。ただし残念だったのがラストで、暴力で決着がついてしまうのではハラハラドキドキしません。男と女ではどちらが勝つかが明確なので、これではサスペンスは盛り上がらないのです。しかも相手がイーストウッドですからね。ストーカー女に勝ち目などありません。また、人質にされていた主人公の恋人は、もっと酷い目に遭わないといけないでしょう。髪型を変えられただけですからね(笑)。最後の最後で、ストーカー女の怖さが半減してしまいました。主人公の恋人は殺されるか、顔をズタズタにされるか、それぐらい絶望的で後味の悪い結末でもよかったと思います。[地上波(吹替)] 6点(2010-06-30 20:22:32)

20.  ディア・ハンター 《ネタバレ》 よく問題とされるアジア人の描写については、それほど気になりませんでした。ベトナム戦争は舞台に過ぎず、本作が扱っているのは戦争がいかに人を壊すものであるかというより普遍的なテーマであって、アジア人を悪く描くために作られた作品でないことは十分に読み取れるからです。。。にも関わらずきびし目の点数を付けたのは、ドラマがいまいち心に入ってこなかったため。まず、役者に問題ありと思いました。地方に暮らす普通の若者たちを主人公としつつも、それを演じているのがデ・ニーロにストリープですからね。どう見ても普通の若者ではありません。シリアスな後半では彼らの演技力が如何なく発揮されるものの、前半のバカ騒ぎでは「普通の若者を演じてますよ」という取って付けたような感じがしました。ルックスに幼さを残していたウォーケンはセーフ、残りは全員アウトでしょう。30代半ばを中心とする俳優達の年齢はキャラクター達に合っておらず、この内容であれば20代の役者を使うべきだったと思います。本作は前半のバカ騒ぎに合った人選をすべきだったのであり、後半を演じられるか否かで俳優を決めてしまったことは誤りだったと言えます。。。次に、本作のキーだったニックの行動があまりに突飛で、私の理解が追いつきませんでした。なぜ、ロシアン・ルーレットのプレイヤーとなったのか。なぜ、マイケルが迎えに来たにも関わらずロシアン・ルーレットを止めなかったのか。「戦争で心を壊したから」ということは分かります。ただし細かい原因を読み取れなかったので、自殺願望を掻き立てるまでに彼を追い詰めたものとは一体何だったのかがよくわかりません。私は、戦場に仲間を置き去りにした罪悪感のためかと思っていたのですが、だったら迎えに来たマイケルの前で死ぬ理由がわからなくなります。戦争により人格が完全に変わってしまい、故郷には戻れない人間となってしまった。だから戦争の終わりとともに命を絶ったとも解釈できます。しかし、そうした背景を匂わせる描写が本編中にほとんどないため、こちらもスッキリしません。前半の日常の光景は長い時間をかけてじっくり描いたのですから、こうした狂気の部分も丁寧に描いて欲しかったです。[レーザーディスク(字幕)] 4点(2010-06-26 20:48:38)(良:1票)

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