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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. ワイルド・アパッチ 《ネタバレ》 生身に迫る恐怖を突きつけられ、事後として提示される事で想像を煽られる、アパッチ族による無機質な殺戮シーン。 広大な自然で遠近感を保ったまま繰り広げられる追跡劇。アパッチ族と追撃隊の位置関係を想像する事で、その空間は画面外までも拡がっていく。 その中で、戦う事でしか関わり合う事が出来ない、対話という交渉手段を失った者達。そして倫理を超えた所にある、男という生物が背負った性、業。 男達の意志は、無言あるいは、言葉よりも表情を欠いた「顔」の優位性ゆえに、無方向に揺らぎ、拡散し続ける。その無方向性はサスペンスにもなるだろう。 そして舞台は渓谷へと向かう。ケ・ニ・テイとウルザナの仲間の時間と緊張感が途切れる事がない一騎打ち。二人が出会う場面の舞台設定。 俯瞰の優位性を生かした渓谷での銃撃戦。 どれもが、過剰も不足もなく映し出される。 そして全てが終わった後に残る、叙情性に湿ることがない諦念を携えた徒労感。 観客にはマッキントッシュが息を引き取る瞬間を観るなどという、一人の男に対する敬意を欠いた行動は許されない。只々彼が葉巻を巻く事が出来るかどうかだけを想像し、それを最後まで見届ければいい。それがこの映画を観るという事に対する最低限の節度なのだろう。[DVD(字幕)] 9点(2017-12-13 00:47:40)(良:1票) 《改行有》 2. カスパー・ハウザーの謎 《ネタバレ》 カスパーハウザーが人間の様々な思惑に振り回される中で起こる、リンゴの下りや社交場での振る舞い、正直村と嘘つき村の話に代表される何者にも縛られない考え方や概念、行動は輝きに満ちていた。 それは同じく何者に縛られる事がない度々差し込まれる美しい風景、音楽と呼応しているかのようだった。[DVD(字幕)] 6点(2017-01-09 19:15:37)《改行有》 3. 小人の饗宴 《ネタバレ》 自分は24時間テレビなどのチャリティー番組を観る事が出来ない。 直向きに何かに挑戦する障害者をどういう気持ちで観ていいか分からないから。 観たらきっと感動するであろう、差別と偏見に満ちた醜い自分を直視したくないから。 この映画では自分より弱い立場の物や動物、人間をひたすらいたぶる小人の姿があった。 心底醜く、不快な存在。視覚的にも、聴覚的にもただただ生理的に不快な描写の数々。 しかし皮肉にもそんな彼らを、偏見も差別もない健常者を観るのと変わらない平等な視点でそれぞれの個の人間として判断している、自分がいることに気づいた。 非難されるであろう、切り込んだテーマと内容を扱った作品を撮った監督には気概を感じた。[DVD(字幕)] 7点(2017-01-07 04:26:34)《改行有》 4. ミツバチのささやき 《ネタバレ》 映画館で子供達が「フランケンシュタイン」を観るシーン。普通子供ならば、フランケンシュタインの姿に恐怖する事が想像できる。 しかし、この映画においての子供達の映画を観る眼差しは真剣である。そして、アナはイザベルに何故フランケンシュタインは少女を殺し、自死を遂げたのか尋ねる。 フランケンシュタインとは自らの実存を問い苦悩する存在であり、そんな彼にアナは恐怖ではなく本能的に思いを馳せ、境遇に共感をしていたのではないか。 小さな子供ですら、無意識のうちに実存を問わなければならない状況。子供が子供として生きられない世界。 それが置かれている状況を全て物語っている。 そして作品全編にまとわり続ける、死の匂い。日常と常に寄り添い続ける死。 ベッドで寝る母を執拗に捉え続ける長回しは、愛の不在と疲弊も映している。 戦場ではなく、日常を淡々と映すことで状況の異常性を映像で語り、何も語らない子供の目線は他の何よりも多くを語り身に迫る。[DVD(字幕)] 7点(2016-06-30 18:45:07)《改行有》 5. 見えない恐怖 《ネタバレ》 個人的には、冒頭から主人公が三人の死体を発見して、地下に落ちるところまでが物語のピークだった。 三人の死体の見せ方やそこに至るシークエンスはジャパニーズホラーに影響を与えている気がしたし、死体を発見しパニックに陥る事で、今まで歩きなれていた家が、彼女に対して全く違う顔を見せる恐怖の演出もよかった。 演出とカメラワークでここまで恐怖や緊張感を作り出せるのは凄い。 「絞殺魔」でも思ったが、未知のものに見られる恐怖の描き方が生々しく、真に迫ってくる。 それはラストカットの無数の野次馬の目線にも象徴されていた。[DVD(字幕)] 6点(2016-02-20 22:55:49)《改行有》 6. ヤコペッティの残酷大陸 特定の人物に焦点を当てず、奴隷制度全体を写すことで客観性、残虐性、そしてその闇の深さ、広さがより現実的に見えてくる。観ている側が感情移入するなどという甘い自己陶酔を一切許さない徹底的な突き放したつくり。流れ続ける美しい音楽。 本を読む黒人の青年とバカンスを楽しむ白人の対比。やった側は忘れても、やられた側が忘れる事はない。これは今も昔も万国共通、どんな境遇でも変わらない事実であると思うし、その事実を再確認し、今までより深く認識しただけでもこの映画を観た価値があると思った。[DVD(字幕)] 9点(2016-01-25 19:36:47)《改行有》 7. アギーレ/神の怒り 大自然に囲まれた大河に浮かぶ一艘の筏、これが全てを物語っていた。敵の姿も見えない、目指す場所も分からない。自分がどこにいるのか、これからどうなり、どこに向かうのかも分からない。そんな中で、互いに疑心暗鬼になり傷つけあい、尽きない欲望に駆られ身も心も疲弊していく。極限の状況の中ではあるものの、むしろそんな状況であるからこそ、これが人生、人間そのものなのかもしれないと思った。 そして、そんな人間を包み込むように、また嘲笑うかのようにただあるがままの姿をさらし続ける自然。この構図は人間が存在し続ける限り変わらない。改めて人間というもの、自然というもの、人間に対する自然というものをCGに頼ることのない、生々しい映像で見せ付けられた。[DVD(字幕)] 8点(2015-10-21 18:22:12)《改行有》 8. ストーカー(1979) 《ネタバレ》 他者を幸福に導く事を自らの幸福であると信じているストーカー。自分の名誉や欲のために部屋を目指す作家。人類の幸福の為であると言い部屋を壊そうとする物理学者。いずれも大義名文を掲げているが欲望に支配されている。 部屋への旅の道中、理系と文系のインテリが人生について机上の空論を交わす。誰が先に行くか、どうやって部屋に行くか、3人の男が四苦八苦している中、なんの障害も感じていないかのように、犬(=本能、純粋性の象徴?)がスイスイと部屋へと進んでいく。 3人はようやく部屋の前までたどり着くが、誰も部屋に入れず自分の本当の姿(欲望)と向き合う事ができない。そして帰路につきバーへと戻る。 ストーカーの妻はどの男よりも地に足の着いた現実に即した、たくましい言葉を言い放ち、ストーカーはただ現実に絶望する。 そして今まで呪われた子と言われた、言葉を語らず足の不自由な娘が、人間の手には及ばない力を発揮する。人間の力を超え、何も語らず瞳を向けるその姿は、神のようにもみえた。[DVD(字幕)] 6点(2015-07-16 03:20:48)《改行有》 9. マンディンゴ 《ネタバレ》 足の不自由であるハモンドは肉体的なコンプレックスを持っている。それ故か、どの白人よりも黒人に対して優しく、理解を示している。残酷な現実が描かれる中で、唯一救いとなりえる存在。 しかし、彼は最後に妻も心の底ではきっと憧れを抱いていたであろうミードも殺し、父を殺され、全てを失ってしまう。 自分という人間を否定されたときでも、まだ他者に理解を示せるのか。人種、時代など関係ない人間という生き物を、白人黒人どちらにも寄ることなく、ヒーローや善人を出すことなく、ただただ愚劣にうつしていた。[DVD(字幕)] 8点(2015-02-04 18:13:20)(良:1票) 《改行有》 10. 鬼畜 《ネタバレ》 利一の全てを達観したような冷めきった目、崖に立ち自殺するのではないかとすら感じさせる悲しい後ろ姿を見ると、自分が子供のとき子供らしくいられたことへの感謝の気持ちとそれがいかに幸せなことであったのかということを感じた。 利一の「父ちゃんじゃないよ、知らない人」という言葉は、宗吉が父であることへの否定、拒絶と最後まで父をかばったというどちらとも取れる展開。どちらにしてもこれほど哀しい結末はない。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-18 16:15:46)《改行有》 11. 仁義の墓場 《ネタバレ》 力夫に感情移入できるわけないし、同情も出来ない。ただの狂っている男にしか見えない。そこには、ギャング映画のようなスタイリッシュさもないし、滅びの美学もない。ひたすら惨めで、悲惨でしかない。暴力の果てにあるものを飾らず、目をそらさず、誠実に描ききっていた。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-11 13:34:18) 12. ファントム・オブ・パラダイス 《ネタバレ》 自分が愛し魂を注いだもの(音楽、女性、声)は全て奪われ、死ぬ自由すら奪われた。しかし、最後にフェニックスはスワンではなく、醜い姿も行動も全てをさらし、何も残っていないウィンスローを選んだ。愛する人を守り、これほどまでに悲しく美しく幸せな死に際なら人生悪くない、そう思えました。そして自分が求めている愛とか恋はきっとここにあるような気がしました。 エンディングの歌詞も含め、本当に悪趣味で露悪的で最高な熱い映画です。[DVD(字幕)] 9点(2014-02-07 20:49:52)《改行有》 13. ゲッタウェイ(1972) 《ネタバレ》 銀行強盗の逃亡劇を描きつつも、強く粗暴な男に魅かれる女性や気持ちとは逆の態度をとってしまうといった今も昔も変わらない共通した男女関係をうまく表現していました。[DVD(字幕)] 6点(2012-02-26 13:58:13) 14. 突破口! やることがどこかぬけてるけど、押さえるべきところはしっかりと押さえるユニークで愛着がある銀行強盗が魅力的でした。[DVD(字幕)] 6点(2012-02-26 13:32:18) 15. 悪魔のいけにえ この緊迫感はすごい。83分間気を休める場面がない。観ている最中は登場人物のだれ一人にも感情移入を許さず徹底的にその出来事を客観的に素早い展開で見せ付けられるので、観ている側はそれをただ受動することしかできない。そしてラストの脱走での緊迫感からの開放、夕日の中チェーンソーを振り回すレザーフェイス。その画からは高い芸術性を感じました。[DVD(字幕)] 8点(2008-12-24 09:47:51) 16. サスペリア(1977) 色の使い方と音楽はよかったものの、ストーリーやラストがいまいちでした。なんとも言いがたい独特の世界観は恐ろしかったです。[DVD(字幕)] 5点(2008-12-22 11:21:37) 17. アメリカの友人 《ネタバレ》 列車での殺人と地下鉄での追跡の場面は見ごたえがありました。自分の死を悟ってから悪人が改心したり、人の為に善い事をするというような話はたくさん観た事が有りますが逆のパターンは初めてでした。よくよく考えてみれば、そんな人間がいても可笑しいことではない気もしました。[DVD(字幕)] 5点(2008-03-23 17:03:41) 18. 緋文字 《ネタバレ》 信仰や宗教は本来何の為にあるのか?自分の中ではそれは心の救いの為にあり、何かを信じる事によって生きる力を得る事が出来るから、あるのだと思っています。しかしへスター・プリンとディムスデールという人物はその信仰のおかげで苦しめ追い詰められた。二人の姦通という行為の善し悪しは抜きにしても、その結果は信仰の本来あるべき姿からは程遠いものであったように思えました。信仰の自由を求めてやってきた地で、自由を奪われ、自由を求めてまた違う土地に旅立つ。そこには本当の自由はあるのでしょうか。寒々とした町と風景がとても心に残った映画でした。[DVD(字幕)] 5点(2008-03-20 20:16:37) 19. 都会のアリス 《ネタバレ》 アメリカでのヴィンターの写真には、人の姿がなくただの風景画。そこには彼自身の思いも存在もなく、ただ自分が「それを見たという証拠をとり続けている行為」だけでしたが、アリスと出会い彼女と行動を共にする中で最後には人や自分を映すようになった。その行為は前のそれとは違い、「その場所で人と触れ合い彼の思いが存在した証拠」になっていてその違いは大きいような気がしました。大事なのは身体的な移動の旅より、精神的な移動の旅。そういった面でもアメリカでの一人旅よりアリスとの旅の方がずっと意味があり、彼を変えたのは綺麗な景色でも美しい音楽でもなく、非人間的なテレビを見て育った一人の少女だったのではないでしょうか。[DVD(字幕)] 8点(2008-03-04 16:14:28)(良:1票) 20. ブリキの太鼓 《ネタバレ》 祖母アンナの時代や動乱を潜り抜けてダンツィヒで生き続けた、ぶれる事のない力強さが印象的でした。彼女のスカートの中から始まる世代を超えた人間群像劇。オスカルはフランスの象徴のようなエッフェル塔を彼女の姿に例えた。それぐらい彼や一族にとっての祖母とは大きな存在で、成長することを決め西へと旅立つシーンでは彼女への思いから故に出た、オスカルのそれまでのとげとげしさが抜けた純真無垢な姿を見ることも出来ました。そして全てが終わり、始まりの場所の荒野に座り込むアンナ。映画の始まりと終わり、戦争、人間の没落などの全てを股にかけ、あらゆる出来事を優しく包み込むかのようなその姿はとてつもなく偉大にうつりました。[DVD(字幕)] 4点(2008-03-03 20:55:58)
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