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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 世界の中心で、愛をさけぶ これは流行に乗って原作読んでたんで、脚色とはこうやるものか、と随所で思った。エピソードをうまくあっちとこっちをつなげたり、生き生きさせている。人物の来歴に手を加えたり(アキが弔辞読む先生とか)、いろいろの加工の跡を見るのが楽しかった。原作のネタをあちこち動かして、シナリオライターが自分の世界にしていく。編曲の楽しみと言うより、コラージュ現代美術みたいな感じ。たぶん原作より締まった。そして反復される台風の空港、長回し。ヘンデルにヒントを得たと思われる音楽が流れている。[DVD(邦画)] 6点(2014-03-12 10:13:59) 2. 真珠の耳飾りの少女 芸術家にとって実生活の鬱陶しさってのがあって、そういうのに関わらずに芸術世界に没入したいという夢を持つが、その芸術の対象に選んだのがまさに「実生活」の少女だった。調理をしたり洗濯したり、芸術家の家の裏で家を支える実生活の部分。苦悩する芸術家って、とかくつまらないのが多いんだけど、演劇的な誇張に見えてしまうからか。名画を実写で撮っていくっていうのには、独特の面白さがある。描きかけのところとか。色の原材料いろいろ。スカーレット・ヨハンソンってポカーンと口を開け気味にしてて、必ずしも色っぽさに収斂されきらない・まだ色っぽいという以前のあどけなさの魅力も合わせ持っている不思議な味わい(むかしのベルイマン映画の常連だったリヴ・ウルマンの唇とちょっと似ている厚ぼったさ。北欧ならではの質感なのか)。ラストで耳飾りを渡されたときの表情が、単純に一つの感情表現に収斂し切れないのと同じで、よい。時代色を楽しむ映画。[DVD(字幕)] 6点(2014-03-11 09:52:26) 3. 子猫をお願い インチョンが舞台。海があり、カキ採りがあり、外国の船員がいて、ソウルに近い微妙な距離。その地方都市の雰囲気が良く生かされている。いいとこに勤めてるけど高卒のつらさを味わってるの。ぼーっとタバコを吸ってるの(ペ・ドゥナ)。いかにもいそうな固い子、などなど。次第に下がって膨らんでいる天井の下で暮らしている圧迫感。迷路のような道の果てにある。青春の終わりを描いていて秀逸。はしゃいでもすきま風が吹き抜けていく感じ。携帯でも「あんたの知らない友だちといるの」とか。親が離婚するとこもあれば、家族で食事に行ってうんざりするとこもある。はしゃぐ親父、けちな親父。なんら目新しいことは描かれていないが、土地の雰囲気がきれいに包み込んで統一感を出している。メールの文字がバスの窓に現われたり、ビルの壁面に電光文字で現われたり。[DVD(字幕)] 6点(2014-03-03 09:56:08) 4. ワイルド・レンジ 最後の銃撃 流れ者の男意気。DVDの時代になり、10分ごとにアクションの見せ場作らないと消されちゃうと心配して「小刻み活劇」が主流になってきているのに、最後の銃撃へとゆっくり高めていく息の長いテンポが嬉しい。雨が降れば道が川になってしまう町。板を順繰りに渡して歩くの。アネット・ベニングとの恋模様もある。指が入らない東部時代の記念のカップいうのは、ラストで家の象徴となる。じゅうたんの上の汚れを拾ってるコスナー。着替えてるベニングがドアを閉めるあたりもいい。ロバート・デュバルとのコンビ。あとマイケル・ガンボンなど周りの役者はおおむねいいのだが、肝心のコスナーが若干魅力に乏しい。あんまりすさんだ過去があるように見えない。[DVD(字幕)] 7点(2014-03-02 10:15:01) 5. 箪笥 ゆったりとしたペースが心地よい。おどかしに新手はないが、やってることは正しい。姉妹は髪の毛の長さでのみ見分けていたので、暗がりになると判断不能になった。だからドラマとして理解してはいない。再見すれば発見することもあっただろが、ホラーだと「一つ一つの怖がらせ」を味わえればそれでいいと思ってしまう口なので。だから継母と妹(?)が重なるようなイメージが、よく分からなかった。妹の死に対する責任感の妄想? 洋風の家であった。韓国風の家じゃだめなのか。東洋的な味わいのほうが合う世界の気がしたが。お父さんはほとんど大杉漣だった。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-27 09:37:10) 6. ファインディング・ニモ 《ネタバレ》 魚だと手足の擬人化がないだけ、アニメの特質とも言える。天然色の海底。ちょっと人形アニメの趣きにもなる。人間社会がすっかり対象化されるのがいい。敵役に徹する。みなに好かれようとしている鮫のエピソードもおかしい。『モンスターズ・インク』の流れか。救出と脱出の物語。短期記憶のドリーのキャラクターもいい。魚族たちが話を伝えていって、協力態勢になっていくの。歯医者のほうも水を汚したりの作戦。ダーラが登場すると『サイコ』のキンキンキンキンがはいり、波止場は『鳥』。あちらでは一般教養として子ども用映画にもヒッチコックが登場するのかと思ったが、分かる客だけ分かればいい、という自己満足なんだろうな。一網打尽後「みんなで下に向かって泳げ!」には、社会派的感動があった。タイトルロールの間をすり抜けたり、ビクビクしている小魚がチョウチンアンコウをパクリとか、休まない。ラ・メールが流れるのもまったく正しい。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-24 09:50:48) 7. 華氏911 この人のトーン何かみたいなんだが、と思って記憶を探ってたら内田裕也の『コミック雑誌なんかいらない!』が浮かんだ。表層を表層として生き生き掬っていく手つき。暴露ものとしては証明が弱いけど、つまり週刊誌的なイキのよさが身上なのね。今回はプロパガンダに徹したことで、限界もハッキリしたが、こっちの見る気分も定まって、これはこれで楽しめた。ブッシュへのからかいはどうにも底が浅かったが。寂れた町から兵隊を募っていくあとで、軍需企業のパーティの場につながていくなど、プロパガンダの面目躍如。でもまた締めを涙でやって弱くしちゃってる。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-23 12:15:12) 8. 春夏秋冬そして春 西洋のイメージした東洋を見ている気がずっとした。老師の感じなんかスターウォーズみたいだし、池の中の浮き堂も美しいんだけど、西洋の視線を経由してるように感じちゃう。季節ごとに若者の設定が替わるの。罪を越えて次の世代の老師になる。それらを仏が高みから見てござる、って感じ。猫の尻尾で般若心経を書いたり、どうも禅的なハッタリにすべて感じられ、まあ禅と言うものが、大部分そういうハッタリの世界なのかもしれないが、他者の思惑を意識しすぎた精神性って、やでしょ。こちらが必要以上に拒否反応起こしてる気もするけど、せっかく画は美しいんだから、それを素直に愛で られるストーリーだったら良かったのに。むかし韓国で作られた『達磨はなぜ東へ行ったのか』なんてのは、素直だったよ。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-22 09:48:46) 9. 隠し剣 鬼の爪 「それはご命令でがんすか」というセリフが三度繰り返され、最後は封建思想を抜け出たときの冗談めいた言葉になっていて、そのうつろいが山田さんの思想の表明なんだろう。この監督はいつも終わりの着地の地点がダラダラし緩くなってしまうものだったが、今回はサッと引いていていい。高島礼子が訪れてくるところも、意外に凄味があって見直した。底に流れているのは砲術の時代の侍の気分。なんじゃあれは、と昔気質の人には言われている。[DVD(邦画)] 7点(2014-02-16 09:39:18) 10. モーターサイクル・ダイアリーズ 1952年、ほとんど半世紀前という時代の空気は感じられなかったが、演出のせいなのか、そういう風土なのか。旅行者・ゆきずりの「見る人」だったものから、次第に「関わっていく人」に変わっていくのがポイントだろう。それもすぐに「怒り」にはならず、社会の不平等への戸惑いが順々に蓄積して高まっていくところを描いているわけだ。銅山のあたりから、船の後ろに繋がれた舟。そして閉ざされたハンセン病の島へ泳いで渡れることを身を持って証明する「行動する人」になっていく。偉大な革命家の誕生物語という型にはまった伝記ではなく、「見る青年」が「行動する青年」に変貌していく記録として描かれている。繰り返されるダンス。南米万歳と唱えた彼が、なぜキューバへ向かうのかは、それはまた別の話と言うことで。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-15 09:45:25) 11. 大統領の理髪師 これ昔の邦画だったらフランキー堺の役だなあ、と思い、今だったら、とあれこれ考えたが出て来なかった。こういうタイプの役者がいなくなったというより、そういう役柄がなくなっていたのか。善良だがしたたかな「庶民」。今の邦画には「庶民一般」が登場しなくなったのかもしれない。花札をやってる場があり、悪しき日帝時代の記憶、というふうに受け取る場面なのかも。責任がかかってくるのが恐ろしく、子どもですら拷問に掛けていく体制。飲み込んだカプセルを排泄するのと、エンコした大統領葬儀車が重なる。次の大統領全斗カンの禿頭が最後のギャグになる。全体に黄色味がかったトーン。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-14 09:55:27) 12. スウィングガールズ あれは本当にある方言なの? 「‥‥‥ず」。みんながそれを喋ってるのって、いいよな。おとぎの国のような雰囲気すらある。この監督は動きのギャグがいいのだが、今回ではストップ画像のイノシシが印象深い。あのおかしさはなんなのだろう、一番動きが激しそうなシーンを、わざわざああ処理したおかしさなのか。洒落っ気ね。「未熟時代の下手な演奏」ってのがこういうのでは難しく、わざとらしくなってしまうのが多かったけど(ドラマで音痴の下手ぶりがわざとらしくなってしまうのと同じで、だいたい音はプロにやらせることが多かったからだろう)、これは実にリアルに下手だった。ドキュメント的な成果。上野樹里は、コメディの勘所を分かっている。[DVD(邦画)] 7点(2014-02-13 09:37:06) 13. オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 壮大な復讐。オ・デスは口数が多すぎるんです、という罪か。15年の監禁が復讐だったのではなく、解放の後に復讐が仕組まれてるの。アルバムをめくっていくときのサスペンス。口数が多すぎた罪の罰として、己れの舌を切り取る。復讐者のユ・ジテののっぺり顔が怖い。復讐の正体が映画のキモのすべてで、このねちっこさをすごいと褒め称えるか、きもちわる~いと顔をそらすか、微妙なところだが、こういう遠大な計画そのものの迫力ってのはあるわな。それが善きことであれ悪しきことであれ、真剣なことであれつまらないことであれ、途中で挫けずにやり通していたってことの凄味。けっきょくそこがこの映画の・この犯罪のキモ。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-12 10:14:25) 14. ビッグ・フィッシュ アメリカ民話に多いほら話の伝統。魔女の眼に映ったという己れの死に方が如何なるものだったかという興味で引っ張っていく。僕の死に方は違う、ってのが生きる支えになるの。次第に話と現実が混ざっていくのは、それ自体が三代目に向けた話になっていくから。フェリーニ臭がある。葬式のときに初めて皆が集まってきたほうが、効果あったのでは。伝承を印象づけたかったのか。これで「幻滅の物語」になっていったら寺山修司だな。夢の町の町長(?)の笑顔が良かった。[DVD(字幕)] 7点(2014-02-03 09:23:26) 15. 茶の味 なんであなたは三角定規なの、のほうが、山よ山よ山は生きている、よりよかった。普通に喋ってる感じと普通でないとことの同居。人工的な画面と夕焼けの自然な場面との同居、でもある。CGを溶け込ませるでなく・際立たせるでなく、同居させている。そういう変な感じ。変なことやってるでしょ、という「どうだ」の姿勢がくどくなりそうなところを救う三浦友和・手塚理美の存在が大きい。栃木県茂木町だそうだ。囲碁囲碁と叫びながら、やがて囲碁マンになって正義の妄想にひたる。うんこを載せられたやくざの幽霊が、掃除をしてるときもボーッと立ってる。さか上がりが出来て仏頂面の少女は最後に笑う。もうちょっとで「どうだ」という態度への反発が起こるギリギリのところで、なんかうまくかわされてしまう。[DVD(邦画)] 6点(2014-02-01 09:21:39) 16. ビフォア・サンセット 会話の表情とか、距離感の描写に全力を傾けている映画。公園の散歩→船→車→家と、次第に近寄っていく。そして会話が最後には歌に至る。恋ですなあ。実際の9年の歳月が挟まれているわけ。フィルムが記録のためにあることをここまで徹底して極めようとした姿勢に、とにかく圧倒されます。でも前作ほど見てておろおろしないですんだのは、ちょっとこっちも醒めて見ていたよう、あるいは「記録」ってことが、ビデオで簡単に行なわれる時代になってしまったからなのか。向こうのせいなのか、こちらのせいなのか、よく分からないのが本当のところ。こういうことやり続けてる監督がいるのが嬉しいのは間違いない。[DVD(字幕)] 7点(2014-01-31 09:26:59) 17. ミリオンダラー・ベイビー スポーツとは相手の尊厳を奪いそれを自分のものとする戦いだ。この競技は屋内で行なわれる。本作では、親密な場は室内の人工の光で描かれ、そうでない場は屋外の陽光のもとで展開する。競技者にとって屋内の世界が「本気」、外の世界が「とりあえず」ってことなのか。まあ、映画ってものが人工の光の極致なんだけども。モーガン・フリーマンがダントツでよく、若造のデンジャー君もいい。どうしてこの監督の映画は、こういつも陰鬱に進むんだろう。ディズニーランドの場など、ちと過剰な展開の気がした。[DVD(字幕)] 6点(2014-01-30 09:31:31) 18. 宇宙戦争(2005) 戦場を経験したことのなかった国が、9・11の同時多発テロを受けて、それなりのアンサーをした作品なのではないか。武力で抵抗することの限度を越えた敵に、どう対処すればいいのか、という問題。本来テロってのは、武力が不均衡のとき劣る側が抵抗する最後の手段だが、それをされる側から目に見える形にすれば、こういう宇宙人の姿になってもおかしくない。とにかく今持ってる武器が無力になってしまう敵なのだ。群衆が同一方向を見上げるシーンって、この監督の映画でしばしば見てきたような気がするが、そういった無力感と通じあっているようでもある。火星人の登場シーンが素晴らしい。穴の底での鳴動、走るひび、それが垂直に建物にも上がっていく。陥没してから吹き上げられる車。奥と手前とのつながり。車での脱出。高架からの列車の転覆、そのスピード感。こういうのやらせると、ノリにノッてしまう。一方、森の中で服が落ちてくるのなんかもいい。小屋での探索が次の見どころ。にゅーっと動き回る「目」の不気味さ。見られることの恐怖。アメリカはボストンからやり直そう、という決意のラストでもあろう(これの映画化はいつもその同時代になってしまうが、原作・19世紀末の英国を生かしても面白いと思う。第一次世界大戦もまだ経験していない時代で、自転車で逃げ惑う人々が馬車に踏み潰されたりする。怖いもの見たさの群衆ってのが小説に現われた最初のころではないか)。[DVD(字幕)] 8点(2014-01-29 09:39:31)(良:1票) 19. フォーガットン 《ネタバレ》 ミステリーかと思ってたら、政府の陰謀ものかと訂正することになり、それが宇宙人か地獄の使者に訂正され、さらに超絶者ものに移行しかけ、まあぎりぎり「はっきりさせない」というところで手を打って踏みとどまって、なんかとりあえず完成した作品らしく繕えた。「彼ら」の実験、中途半端なんだよな。ヒロインのとこだけビデオや写真を14ヶ月も残したりしてて。実験の対象が子どもと思わせといて、実は母本人だってあたりがミソ。愛が勝つ話になっちゃう。ポーンと昇天していくところを見ると、やはり「宗教もの」と見るのが本筋? 神のためしなんでしょうか。[DVD(字幕)] 6点(2014-01-28 09:28:48) 20. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 泰西名画ふうの空、大雑把な建物の直線的な内部と対比されてるのか。これで一番感心したのが、ヨーダの服で、直線的な世界がCGで作られるのにはもう驚かなくなってたが、服のたるみみたいなものまでがどんどんうまくなってきているのに感心し、ちょっと怖くさえ感じた。こういうのまで簡単に作れるとなると(そう簡単でもないんだろうが)、ほとんど自然界の何でもが作れてしまう気がする。なんか技術だけがどんどん先走って進化しているようで、そういう技術の果てに思いをはせるほうがSF気分であった。シリーズの締めとしては、大きな話が繋がっていく快感みたいなものを、ラストで感じられた。[DVD(字幕)] 7点(2014-01-27 09:43:52)(良:1票)
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