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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 教皇選挙 《ネタバレ》 ■キリスト教を背景としたミステリーということで、『薔薇の名前』をイメージしたが、あちらは純然たるゴシックミステリーであるところ、こちらは極めて現代的な作品であった。 ■テロによる爆発で選挙会場のシスティーナ礼拝堂の高窓の一つが吹っ飛び、選挙の場に圧倒的な暴力がインパクトとしてもたらされた。あれはそこにいた枢機卿たちにとっては神の怒りのように感じられたに違いない。さほどに旧約聖書における神は荒々しい。その直後のシーンで、その高窓から差し込む日の光が礼拝堂の有名なフレスコ画を美しく照らすのだが、その神々しさが、あれは実に神の怒りであったことの証左となる。 ■最後の投票のとき、その破れた高窓からかすかに外界の喧騒が聞こえてくる。何百年と厳格に密室で行われてきたコンクラーベが、わずかにではあるがこのとき初めて外との接触の中で行われたのだ。その喧騒をBGMに、枢機卿たちは教会の歴史に新たな一歩を刻む一票を投じる。 ■この一連の流れによって、全体として神の意志によって教会の閉鎖性・保守性に風穴が開いたというつくりになっている。見事な脚本だ。いや、原作がそうなのかな? ■演技巧者ばかりの俳優たちの演技が、本当に素晴らしい。とりわけ主役のレイフ・ファインズ、新教皇にその位を引き受けるかどうかを聞く場面で、嫉妬を隠し切れない何とも言えない複雑な表情をする。お見事。 ■主役がいよいよ教皇の第一候補となり、「教皇名は考えてあるか?」と聞かれ、実に神妙に「ジョン…」と答える。後から考えれば、あれはコメディなんだね。ファインズの絶妙な顔芸が浮かんで、思い出し笑いしてしまった。[映画館(字幕)] 7点(2025-04-01 17:04:16)(良:2票) 《改行有》 2. 首(2023) ■史劇とたけしが好きなので、これは観ないと!! ■総じて満足だったけど、加瀬亮の怪演は確かに怪演なのだけど、とても尾張半国から天下人に上り詰めた才能の持ち主には見えない。あれじゃ十三人の刺客の松平斉韶の上位互換レベル。もうちょい稀代の風雲児信長としての才覚や風格を描いて、説得力を持たせてほしかった。歴史ファンとしては。 ■あと、特に中盤の中村獅童の旅のパートなど、時空が圧縮されてる表現が何か所かあって、それが気になった。あれはただの簡略化なのか、もうちょっと別の意図があるのか。 ■音楽があまりに平板かつありきたりで、岩代太郎ならもっとやれるはずなのだが…。鈴木慶一の方がはまったと思う。[映画館(邦画)] 6点(2023-12-03 21:16:05)《改行有》 3. 君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 ■初回上映時に劇場から出てきたお客さんにワイドショーかなんかがインタビューして、感動のあまり泣き出してしまった青年の画像がネットで出回ってたけど、私はまさにあの状態になってしまった。劇場前にカミさんが迎えに来てくれてたのだけど、車に乗ってカミさんに「どうだった?」と聞かれたとたん、ボワーっと涙があふれてきて、次に「え?どんな話だったの??」と聞かれて、「全然分かんない…」と答えるのがやっとだった。 ■イマジネーションのオンパレードに圧倒された、という感覚は、千と千尋にも匹敵した。あれが80のじいさんの頭の中から出てきたという事実に、全く打ちのめされた。 ■尻切れトンボ感は各所で指摘されているけれども、怒涛の折り畳みからプツっと終わって、真っ青な画面で米津を聴かされる、ってのは、何にも整理できなくて心がぞわぞわさせられたままで、それが泣いた原因の一つだとも思う。 ■ブログやYouTubeで考察を見るのが大好きなのだが、その意味では私にとってこれほどおあつらえ向きの映画もない。どこそこの場面は何とかという絵画や映画がモチーフで、という指摘は実に勉強になるし、今作は日本中のアニメスタジオから著名なアニメーターをかき集めて作ったそうで、彼らの作画への影響を論じるものもあって、大変興味深かった。傑作は、これはジブリの内情を表しているというもの。半ば都市伝説めいているのだけれど、真偽はともかく、それ自体がエンタメとして面白い。 ■さはさりながら、基本的には不思議の国のアリスなのだろうから、「説明不足」の類の批判は見当外れかと思う。その意味では意外と子供の方が素直に楽しめるのかもしれない。 ■母や義母の描写が、今までの宮崎作品にはないほど艶めかしかった。考察によれば、それは外部アニメーターのアイデンティティの発露、という意見がある一方、齢八十にしていよいよ宮崎翁がリミッターを外してきた、という人もいる。今作から「みやざき」の「ざき」の字が別字になったらしいから、シン・ミヤザキとして、後者であるのだと思いたい。[映画館(邦画)] 8点(2023-07-19 10:46:28)(良:1票) 《改行有》 4. ゴーストバスターズ/アフターライフ 《ネタバレ》 ■マジメ過ぎ。ゴーストバスターズは徹頭徹尾バカ映画であってほしい。同じ80年代でもスピルバーグとかグーニーズみたいなのでは決してなかったはず。くだらないギャグと、軽いお色気と、ノリノリの音楽と、荒唐無稽な展開と、ど派手なメディアミックスの広告展開、それがゴーストバスターズではなかったのか… ■初作は、私が初めて映画館に見に行った本格的な洋画で、パンフレットも買ってもらってしばらく穴が開くぐらい眺めていたから、独特の思い入れがあるだけに、今回のマジメ展開は残念。スピルバーグ風としても、SUPER8には到底及ばないのでは? ■もしかして、あの先生はコメディリリーフなのか? だとしたら容姿がマジメ過ぎる。お母さんちょっとシガニーに寄せてる感あるんだけど、こちらもマジメ。リアリティあり過ぎて、シガニーのようなキャラクター感がない。このお二人、いい役者さんなんだろうけど、この作品のマジメ感に一層拍車をかけてしまってる。役者さんのせいというより、ミスキャスト。 ■終盤のオリジナルメンバーそろい踏みとシガニー登場は確かにムネアツだったが(リック・モニラスもお願いしたかった)、なぜかそれ以上にゴーザ復活に興奮した。+1点。 ■エンディングのレイ・パーカーJr.がこんなに空しく響いたことは無い。 ■男はつらいよシリーズが、回を追うごとにどんどんお涙頂戴風になっていって、しまいには笑いの一つもなくなってしまったのを思い出してしまった。コメディとして生まれた作品は、最後までコメディ道を貫き通してほしい。そうでないと、かえって寂寥感ばかり募るものだ。[インターネット(字幕)] 4点(2022-11-05 08:59:22)《改行有》 5. コーダ あいのうた 今年の一番はもう「トップガン マーヴェリック」で決まり!! と高をくくってたが、本作が私の中で首位奪取。 コーダ、という複雑な立場があるのだな、とか、聾者の世界ってこんな感じなんだな、とか、社会的な勉強になったのは言わずもがなだけど、何といってもドラマそのものと、キャスト、アンサンブルが良かった。何というか、とてもいい「朝ドラ」を見てる感じ。 珍しい状況の家族だけど、抱えてる問題は私たちと地続きで、決して障碍者に対する憐憫などではなく、真に共感したからこその感動だった。 最近のアカデミー賞は…、みたいに言われるけど、いやいや、作品賞らしい作品だと思う。 今年これを超える作品が出るや否や。[インターネット(字幕)] 9点(2022-07-29 16:48:49)《改行有》
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