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1. 救命士
《ネタバレ》 誰も正気ではない空間。ろくに眠れない虚ろな目の主人公の前で、走馬灯のように幾人もの死が通り過ぎていく。誰が生きていて、誰が死んでいるのか分からない。登場人物たちは、自分の生死の境目でさえ、最早見えていないのだろう。夜の暗闇に制服の白いシャツ白い救急車のボディがぼんやりと浮き上がり、レッドライトが日常を非日常に照らし出す。血液と麻薬、白と赤の対比。これらの表現に音楽が組み合わされることによって、救急医療の死への近さや非日常感がコミカルに描かれる。ある種のトランス状態や幻覚のような画面に酔う映画。[DVD(字幕)] 9点(2013-10-16 06:25:52)
2. デッドマン・ウォーキング
《ネタバレ》 死刑執行直前の人間の思考、行動、感情、そして周囲の人間の態度。外見的な強がりと内面の葛藤とが、登場人物それぞれの立場から絶妙なバランスで描かれている。最後まで黒か白か分からないという流れにぐっと引き込まれた。始終重い画面で進むのが見る人を選ぶ点なのかもしれないが、たまに見える安堵の表情や笑い声や笑顔が逆に際立って、深みを感じさせる。複雑な人間らしさを映し出そうと真摯に取り組んでいることが分かるのがよかった。S.サランドン演じる女。寄り添えばあらゆる人の力になれると信じてきた育ちの良いお嬢さんであった彼女が、立場に葛藤しながら真の尼僧へと近づいていく。被害者遺族からことごとく無力を思い知らされたからこそ、救いの手とは何かと考え始める。宗教が欠かせない作品ではあるが、ひとりの人間として死に向かう姿を提示した作品であったと思う。[DVD(字幕)] 7点(2013-10-10 13:41:28)
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