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1. 雨月物語 《ネタバレ》 戦国時代。人が集まる町では、節度ある町民たちによって、繁栄が保たれているものの、農村は落ち武者の襲撃に会い、道中は賊が跋扈する混沌とした世界設定。時代の動乱の中、農村に暮らしながらも、野心を胸に、動かずにはいられない男たちと、平和と安定を望む女たちを描いているのですが・・・最終的に女の生き方の強さを、まざまざと感じさせる作品ですね。常に焦燥感に駆られて足掻いている男の生き方ってなんなの的な。あと、とにかく、映像がすばらしいです。農村から町に向かう道中、船で漕ぎ進む先の霧に煙る水面の幻想的風景。主人公が迷い込んでしまう、朽木屋敷での妖艶な誘惑。直接的な表現を排して、なお妖しく艶やかなところは、海外作品では、なかなか見られない日本映画の真骨頂でしょうか。シーンのつなぎでの地を這うカメラワークは印象的でした。また家屋内での、蝋燭を光源とした光と影の繊細なコントラスト。白黒映画で、これだけ幻想的魅惑的表現が可能なのかと驚きました。日本映画のスペクタクルに付き物の安っぽさが微塵も感じられないことも驚きでした。もう、日本映画は新作でも半分は白黒でいいんじゃないかと思ってしまいました。[DVD(字幕)] 8点(2024-10-10 18:23:27) 2. おろち 《ネタバレ》 梅図かずおの原作漫画は小学生のころ、たぶん1巻だけ読んだのだと思います。他は忘れてしまいましたが、「姉妹」のエピソードはトラウマ的に強烈に記憶に残っています。さて、本作品についてです。屋敷の中のシーンが大半で、セットは、きちんと作っているようですが、映像として、重々しさ、禍々しさがないというか、狂気が漂ってないというか、なので、まったく怖くないんですよね。あと、尺の都合もあるのでしょうが、ひたすら間延びしていて、テンポが悪く感じました。また、おろちの役割がほとんど意味不明です。おろちが前面に出てきてしまったことで、恐ろしいエピソードにキレがなくなり、非常にまぬけに感じてしまいました。原作と同様オムニバス形式で3つくらいのエピソードをテンポ良くつなげていけば、それで十分で、おろちの狂言回しとしての立ち位置もはっきりして良かったのでは?と思ってしまいますね。個人的な嗜好の範疇になりますが、おろち役には、透明感のある美少女を選んでほしかったところです。また、子役の使い方も、キャストの段階から含めて、もう少し気を使ったほうがいいのではないかと感じました。ホラーであれば、子供に下手に演技をさせなくても、効果的に使うことはいくらでもできるわけで、スタッフの手腕が問われますよね。とはいえ、収穫もありました。映写機で一時停止をすると、ライトの熱でフィルムが焼けてしまうらしいことがわかったのは、収穫でした。収穫のついでに思い出してしまいましたが、映画の中で、映画を扱うというのも、新鮮味がない割りに、ハードルだけが上がって、あまりいいことないような気がするんですけどね。まあ蛇足です。[DVD(字幕)] 2点(2024-10-10 18:14:46) 3. リンダ リンダ リンダ 《ネタバレ》 前知識ほぼなしで見ましたが、お話としては、女子高校生4人の急造バンドが、高校文化祭で、ブルーハーツの「リンダ リンダ」を披露しようと、猛練習したりするという、知っていたらスルーしてしまいがちな内容で、更に、ボーカルは韓国からの留学生という、駄作街道まっしぐらというか、駄作無双というか、そんな感じです。横道にそれますが、ブルーハーツが流行ったとき、私はリアルタイムで高校生でしたが、朴訥な感じがあまり好きにはなれませんでした。しかし今となっては、唱歌として再評価しているところで、日本語がはっきりしていて、思わず口ずさんでしまいます。聴きたくないけど歌いたくなるカテゴリーにおける、ひとつの完成形と言えます。話を元に戻しますが、冒頭に述べたとおり、駄作臭のきついプロットにもかかわらず、こんなに面白い映画を創れてしまうというのは、ちょっとした魔法を見たような感覚です。各シーンにおいて、人と人との関係により生じる「空気」であったり、「間」であったりが、ごくごく自然に再現できてるんですよね。各役者が下手な芝居をせず、役になりきり、キャラクターの魅力を最大限に引き出しています。また、そのシーンが持っている味が出尽くすまで、ギリギリまで引っ張ってから次に繋いでいくので、空回りとか、上滑りとかが全くなく、着実にヒットが重なっていく感じです。出演者とスタッフ間において、そういった作品に対する姿勢や意識が、高いレベルで共有できているのが感じられ、監督の並々ならぬ才能を感じました。[DVD(字幕)] 9点(2024-10-10 18:11:50) 4. 4ヶ月、3週と2日 《ネタバレ》 予備知識ゼロで見ました。1987年、チャウシェスク政権下という設定。学生寮らしきところに住む20代前半?の女子学生二人(ルームメイト同士)が、なにやら泊まりがけで出掛ける支度をしているところから始まります。部屋の中は、ぬいぐるみやらのkawaii系グッズなどは皆無で、無機質で男前です。さて、泊まり先としてホテルを予約していたのですが、実際に行ってみると、予約係のミスで予約が入っておらず、フロントには冷たくあしらわれます。逆に、前日に予約確認をしていなかったことを責められる始末。計画経済における供給者側の傲慢さに加えて、利権すら見え隠れします。余分に請求されたお金はフロントの懐に入ってしまうのでしょう。そして、映画が始まり30分ほどしたところで、ようやく、闇医者に闇中絶をしてもらうために、ホテルを予約したことがわかってきます。そう言えばネットか何かでみた作品概要に、妊娠中絶の話って書いてあったなと思い出しました。勘の悪い私は、ここでようやく、タイトルと内容を結びつけることができました。さて、ルーマニアでは、妊娠中絶は違法行為なので、闇市場化しています。健全な市場であっても医者と患者が対等な関係となるのは難しいと思いますが、いわんや闇市場をや、です。ホテル代を支払ってからの価格交渉では、後に引くにもコストがかかり、供給者側の圧倒的有利な立場により、言い値が通ってしまいました。仮に金を多く持っていたとしても、やられていたことでしょう。人間のエゴをコントロールして、推進力として活用しようとする市場経済システム。人間にエゴはないものとし、資源は計画的、効率的に配分されるものとする計画経済システム。コントロールされないエゴの醜悪さを、まざまざと見せつけられた気がします。妊娠をするに至った経緯や相手の男について一切触れないことにより、想像の余地が非常に大きくなっています。見た人によって感じ方が著しく異なるであろうところが面白いですね。他の人の感想を知りたくなる作品です。私の感想は、社会システムが悪いのは、重々承知の上で、まあ自業自得かなと。主人公は、巻き込まれた被害者でもあり、気の毒ではありますが、妊娠した本人は、胎児を殺すわ、親友を巻き込むわ、まったく自覚がないので、腹が空いたら飯を喰らうが如く繰り返しそうです。胎児の父親については、特定できない可能性もあり何とも言えませんね。仮に特定できるとすれば当然男も悪いですが、この妊娠女に至っては、100人に1人の悪い男を100発100中で選ぶような勢いすら感じられ、同情の余地がありません。憎めない感じではありますが。ドジっ娘属性ありますが。結構好きですがなにか。P.S.映画中で説明はないのですが、ネットなどで調べるに、当時、チャウシェスク大統領夫人の考案で、労働人口を増やすために、避妊と堕胎を禁じる政策を布いていました。うん、わかりやすいよ、うん。結果として、ストリートチルドレンがあふれました。[DVD(字幕)] 7点(2024-10-10 18:05:16) 5. 里見八犬伝(1983) 《ネタバレ》 独特のケバケバしさと、毒々しさと、特撮セット感のある手作り感と、光輝く玉や弓の映像効果の組み合わせ。嫌いではないです。当時のPVの内容はあまり覚えてないのですが、英語の歌が流れてたのは覚えてます。それなりに面白そうで見たくなるようなPVだったと思います。そこに角川みを感じます。だがしかし、大作を2時間程度にまとめるのは土台無理があったとは言え、もう少し何とかならなかったものか。終盤、八犬士が次々と捨て駒のように倒れていくやっつけ仕事の中、真田広之だけなぜか生き残って(というか1回死んだよねw)、姫役の薬師丸ひろ子と恋愛成就というのが、安っぽ過ぎてなぁ。[インターネット(字幕)] 4点(2024-10-10 17:54:15) 6. 松ヶ根乱射事件 《ネタバレ》 冒頭にて、脚色はしているものの、事実に基づいた作品である旨、字幕で示されます。木村祐一、川越美和周りの設定は、面白くするための捏造と思われますが、話は嘘臭くても、流れている空気にリアリティがあるんですよね。普遍的、本質的に、最近の田舎ってこんな感じなんだろなっていう。人口密度が低いと言うだけで、住んでいる人は現代人にもかかわらず、こうも都会と異なる社会になるものかなぁと、感じ入ってしまいました(それは私の勝手な見方であって、都会の方が異常なわけですが)。田舎だと社会における男女の役割があまり分化してなくて、男女が同じ地平にいることが、とても新鮮に感じました。分化しないからこそ女性的価値観の鏡であるマッチョが育つという意味で。[DVD(字幕)] 8点(2024-09-09 20:01:32) 7. CUBE 《ネタバレ》 削ぎ落とされていること。研ぎ澄まされていること。この二点において、質の高さを感じさせる作品です。90分程度と比較的短い作品ですが、濃密な緊張を保ったまま、最後まで息を着かせません。冷徹な法則に従って作動する硬質な箱(CUBE)の連続体と、その中に閉じこめられた、あまりにも脆弱な人間の肉体と精神とが、見事な対比を生み、芸術的です。余計な説明がないことから、この作品世界を現実世界と捉えることも、精神世界と捉えることも、現実世界の暗喩として捉えることも可能です。私は、この箱(CUBE)を、再現性のない芸術を生むための装置として捉え、そのデモンストレーションとして本作品を堪能した・・・ような気がします。[DVD(字幕)] 9点(2024-09-09 19:37:45)(良:2票) 8. 母なる証明 《ネタバレ》 非情に、厭な後味の残る、快作ならぬ怪作ですね。作者の狙いどおりだと思います。冒頭、荒野でおばちゃんが変な踊りを踊り出したのには、どうしたものかと思いましたが、これが後で、どすんと効いてきます。最初の方は、ベッタベタな笑いを入れてきて、どうしたものかと思いましたが、こなれてきて、便器の蓋が当たるあたりではクスリときました。この作品を見終わった後で、気づかされたのは、これまで、私は登場人物の生きざまの中にある美学が好きで、それを見出しては感動して泣いたりしていたのだなぁということです。本作品の登場人物の行動は、衝動に任せるままで、自分をコントロールすべく信条を、美学をまったく持っていないように写るので、行動は凄まじいのですが、共感はしないし、カタルシスもない。あえて共感するとすれば心の闇のみ。結果、いや~な後味だけが残るのだと思います。この手の変化球を投げた場合、ベースの技術がしっかりしていないと、へなちょこボールになってしまうのですが、そこのところはしっかりとしていて、なかなか、うまいです。妥協がありません。[DVD(字幕)] 7点(2024-09-09 18:35:17) 9. めし 《ネタバレ》 サラリーマンの夫のために「めし」をつくる主婦業に嫌気がさして、実家に帰って、数日間、ごろごろして、頭が冷やされてきたところに、夫が迎えに来て、元の鞘に収まるという、まあ、言ってしまえば、たわいもない日常話です。日本でテレビ放送が始まる1953年より前のことですから、その後テレビでやるようなホームドラマの需要を映画が担っていたんでしょうね。原作ありのホームドラマという時点で、監督の作家性が出にくいのだと思いますが、質素なサラリーマン夫婦を上原謙と原節子という必ずしも役に似つかわしくない映画スターに演じさせているところも、配役が先にありきの印象を持ってしまい、監督の作家性が今ひとつ見えて来ないところですね。ただ、作家性が表に出てこない分、時代の要求に忠実につくられているように感じられ、時代の記録として、貴重なものになっているような気がします。その反面、非常に古臭さばかりが目立って、時代を超えた何かが感じられないってことでもあるんですけどね。ここからは余談です。本作は大阪が舞台になっているのですが、この時代に、すでに、くいだおれ人形があったのですね。そういうことがわかるだけでも、なかなか貴重です。[DVD(字幕)] 5点(2024-09-09 18:32:40) 10. Winny 《ネタバレ》 ファイル共有ソフト「winny」の開発者が著作権法違反幇助の容疑により逮捕されたwinny事件をテーマにした作品。ファイルのダウンロードという身近に感じられる行為が、著作権などの知的財産の侵害だけにとどまらず、社会が抱える闇を暴いてしまうような、思いもよらないほどの大きな影響を及ぼしたことに興味がそそられ、作品に引き込まれ、楽しむことができました。著作権の侵害を阻止すること自体は、知的創作的活動を活性化するためにとても重要なことですが、そもそも親告罪である著作権侵害を、警察が躍起になって、開発者の逮捕にまで至ったのは何故なのか?前述のような高邁な目的と警察とは無縁であろうことを考慮すると、警察内部のwinny利用が内部情報の漏洩をもたらしたことから、とんでもないものをつくりやがってという報復、および、この調子で警察の闇が暴かれたらたまったもんじゃないという予防措置または見せしめのためのターゲットにしたのでは?というようなことを強烈に匂わせた作品となっています(実際に悪さをしたのはwinnyではなくウィルス、またはウィルスをダウンロードした警察内部の不届きものなわけでw このことが、むしろ逆ギレ魂に火をつけてしまったのかも知れませんw)。これまでの警察の醜聞や組織としての行動パターンなどを考慮すると、実際そんなところなんだろうなと思わせる説得力しかないところが、困ったものだなと┐(´д`)┌。警察の中の人間の問題というよりは、警察というシステムの設計の問題なのだと思いますが(システムが一定の傾向の人間を集めやすい、排除しやすいことも含めて)、手に余る問題なので、ここでこれ以上の深入りはしません。裁判対決ものの作品に仕立てるにあたって、もちろん脚色も多くあると思いますが、ことさらわざとらしくドラマチックにしたてるような力みは感じられず、開発者と弁護団の交流を丁寧に描いていたのは好感が持てました。[インターネット(字幕)] 8点(2024-09-06 18:38:13) 11. 首(2023) 《ネタバレ》 北野流バイオレンスと多少のユーモアを戦国時代に舞台を変えて、詰め込んだり、ちりばめたりしてみました的な作品という印象ですかね。アブノーマルを描くことにより、受け手が居心地の悪さや不快感を覚えることも狙いの内だと思われますが、果たしてそれを超えて心に訴えるものがあったかというと、そうでもないのかなと。部分として、面白いところはあるものの、主題として、戦国の世における、騙し合い、殺し合いに見られる人の醜さ、挙句、何も残らない無常観のようなものを読み取ることができる程度で、最後に束ねられてガツンと来るような面白さは感じられませんでした。以下、配役について。キチガイパワハラバイオレンスホモ上司の信長の造形は、従来描かれていた狂気の信長像を超えてきているし、どちらかというと優男風の加瀬亮が、なかなか良く演じていたと思います。また、浅野忠信が演じた黒田官兵衛も、結構な大男で頑強そうな割に、幽閉の後遺症でびっこをひいていて弱弱しく、それでいて飄々としているアンバランスに目新しさ、面白みを感じました。忍者の郷の大ボスの白塗りの怪物も凄味があって良かったと思います。全般的に、役者は与えられた役を良く演じていたと思います。その一方で、ビートたけしによる秀吉は、たけしである必要はなかったかなと思いました。成り上がり途中にしては老人過ぎる。監督に専念した方が良かったんじゃないかなと。木村祐一については、上司のご機嫌取りのわかりやすくも面白くない笑いがまったく板についてなくて、これをやらせるなら普通の役者の方がよほどうまく演じられるかなと思ってしまいました。[インターネット(字幕)] 4点(2024-09-05 18:47:57) 12. ねじ式 《ネタバレ》 つげ義春の原作漫画は、確か学生の頃読んだと思いますが、内容は全く忘れています。さて、冒頭、何の前置きもなく、暗黒舞踏(山海塾とか白虎社とかそういう系統)が始まり、度肝を抜かれました。犬神サーカス団みたいなメイクをした人もいました。全身土くれの人や、羊膜をドロンとぶら下げた人もいました。チチとフンドシ、いいよっ!いいよっ!余談はさておき、冒頭部は主人公漫画家が思い描き、漫画では表現し得なかったイメージということで強烈ですが、その後は、一応現実世界に戻って、ちょっと落ち着いた味のある雰囲気で物語が進みます。主人公は売れない漫画家で、貧乏に苦しめられながらも、実は安定・安住をこそ最も恐れ、恐怖・焦燥と性欲・官能とが混ざり合った奇妙な心象風景が描かれていきます。そのバランスが絶妙で、私は好きなのですが、好き嫌いが分かれそうなところではあります。大笑いしてしまったのは、藤森夕子(CCガール)が、主人公の浅野忠信に、水を引っかけられるシーンです。顔にです。どうやって、狙い撃ちできているのか、しくみはよく分かりませんが、あの開放感は何なのでしょうか?ちょっとやばいですね。[DVD(字幕)] 8点(2024-08-06 17:26:46) 13. イラク -狼の谷- 《ネタバレ》 トルコ映画史上最大の製作費(約1,000万ドル)で、トルコ史上最大動員を果たし、アラブ各国でも好評を博したとのことです。イラク戦争後の米軍によるイラク支配を描いた作品で、トルコ映画なので、トルコ人が主人公なのですが、イラク戦争におけるトルコの立ち位置の微妙さ、複雑さを反映してか、序盤は次々と出てくる登場人物達の関係が把握しづらいです。そんな複雑で微妙な話が進むのかと思いきや、後半はトルコ人主人公グループvs米国軍グループのドンパチアクションになってしまい、米国の大衆向け娯楽映画並に分かりやすいことになっていて少し残念です。米国製の戦争映画とは予算が一桁違いますが、自爆テロの映像は迫力ありましたし、特に破綻したところはありませんでしたね。米兵によるイラン人捕虜の虐待を取り入れて見たり、覆面過激グループによる人質の斬首事件を絡めて見たり、当時ニュースとして話題になったことを、うまく取り込んで、飽きさせません。この映画に出てくる、米国軍人は、いつもどおりの通常営業なのですが、この作品は、なぜか反米映画とされているようですね。米国以外の国がつくる反戦映画が、反米の認定を受けてしまうというのも困った話です。作中で米国人役を演じた役者の役者魂には本当に頭が下がります。[DVD(字幕)] 6点(2024-08-06 17:26:28) 14. 転校生(1982) 《ネタバレ》 石段を一緒に転がり落ちたのがきっかけで、中学生男女の心と体がお互いに入れ替わってしまう、ドタバタ青春ドラマです。中身が入れ替わる男女の役を、尾美としのりと小林聡美が演じています。二人とも当時は17才くらいですが、尾美としのりはあどけなさが残っていて可愛いですね。一方、小林聡美は今の方が可愛いくらいです。当時は日に焼けていて、松崎しげるみたいな顔をしています。お世辞にも可愛いとは言えません。当時は男女が入れ替わるというアイディアは、奇抜で、破廉恥で、新規性があったのでしょうが、今からすると、アイディア一本勝負でひねりがなく、話の展開も想像の範囲内で意外性がないのですよね。入れ替わった後の演技をわかりやすく、かつ、演じやすくするために、作者の世代が考えるところのステレオタイプな男子像、女子像を演じさせ、また、作者自身のノスタルジーも反映させたのでしょう。セリフ回しも古臭く、不自然な印象を持ちました。入れ替わる前はそうでもなかったので、違和感が大きくなりました。二人の両親役の佐藤允、樹木希林、宍戸錠、入江若葉らが、貫禄の演技を魅せる中で、不自然さが目立ちました。こういう細かいところに気持ちが行ってしまうのも、作品の肝の部分を面白いと思えなかったためでしょう。その後のこの分野の発展故に、アイディア自体に新味がなくなったこともありますが、定型的な笑いがメインで、不意打ちがなく一本調子で、リズムも良くない気がしました。でも、劇場では、思った以上に、笑い声が聞こえたので、いい意味でのマンネリに対する需要があるのかも知れませんし、一回りして新鮮味があるのかも知れませんね。[映画館(字幕)] 4点(2024-08-05 17:19:36) 15. 嫌われ松子の一生 《ネタバレ》 原作小説は未読です。50代で公園で野垂れ死んだ女性の波乱万丈人生を、遊び心に富んだ脚色と映像で綴っていく悲喜劇です。光GENJIの内海さんなど、ツボに嵌るところと、遊びが過ぎて悪ノリの域に入り、見ていて引いてしまうところと、色々と、ごちゃ混ぜですが、テンポが良くて飽きることはありません。例えば、幼少時の松子が、変な顔をして父親を笑わせようとするのは、まあ、微笑ましいエピソードで済ませることができますが、大人になった松子が、窮地に立たされると癖で変顔してしまうというバカ設定は、痛くて笑えないので、できれば無い方が、こちらとしては助かります。キャラクターがマンガティックにデフォルメされていて、ちょっとあざとさが見えてしまうつくりなので、受け手側も構えてしまい、どうしても繰り出される笑いに、アタリ、ハズレが出てしまいますね。ベタベタの直球は、やはり笑うのがなかなか難しく、変化球で、なんとかカウントを稼ぐという感じですかね。例えば、谷原章介の演じる男性教師キャラの歯が光るのは笑えないけど、ジャージのズボンを引き上げてゴムをパンパンさせるのは結構笑えるとか、細かいことなんですけどね。映像は、やりたい放題に、原色鮮やかに不自然な絵づくりをしていますが、毒々しいところがありつつも、色彩のバランス感覚は優れていて、一風変わった独特な作品世界を築いています。[DVD(字幕)] 6点(2024-08-05 17:16:53) 16. ルナシー 《ネタバレ》 二人の屈強な大男に押さえつけられて、拘束衣を着せられそうになる幻覚に怯える主人公青年が、同じホテルに泊まっていた貴族のおっさんに助けられて、何故か気に入られ、屋敷に招待されるも、そのオヤジが主催して執り行われるアンチキリスト教的儀式(性的な意味で)をのぞき見してしまい、オヤジに虐げられている女性に対して恋心が芽生え、その魔の手からなんとか助けようとするも・・・と言うような展開です。わけがわからないと思いますが。しかし、貴族オヤジのタヌキっぷりが、すばらしいです。宗教のくだりなど、言ってることは結構まともなのですが、やってることはメチャクチャで、トコトン人をバカにしています。ストップモーションアニメーションのパートは、要所要所に断片的に入り込んできて、豚の舌や、切り身や、目玉などが、あたかもそれ自体が一個の生物のようなコミカルな動きで、ヨーロッパ的な古びてくすんだ景色の中を這い回ったり、目的地を目指して群れで移動したりします。ちょっとしたグロかわいさです。これらは、最初は肉欲の暗喩表現のように取れますが、話が展開するにつれて、その意味するところが、あからさまになっていくところ、なかなかうまいものです。さて、この話はいろいろなとらえ方ができると思いますが、私の勝手な見方ですが、すべては、貴族オヤジの罠であり、最終的に自らの犠牲も顧みずに、計画通りに主人公を陥れ、すべてを失いながらも悦に浸る究極のサディズムの形態を垣間見たような気がしました。いずれにしても、撮影に使用した、泥の中を這い回った豚の舌や、切り身などを、このあとスタッフがおいしく頂いていれば問題ないのですが、問い詰めたいところではあります。[DVD(字幕)] 8点(2024-06-25 18:13:59) 17. 彼女が消えた浜辺 《ネタバレ》 夫婦3組くらいに、独身の男女1人ずつを加えたグループで、独身男女をくっつけるための企画として、リゾート地への泊りがけの旅行に出掛けます。浜辺での、あるハプニングを機に、メンバーの女性1人が行方不明になっていることに気づき、残されたメンバーが右往左往するというお話です。序盤での親しい者同士での旅行の楽しい雰囲気、ふざけあい、中盤でのハプニング時の緊迫感、失踪後の、疲弊、後悔、思惑のすれ違いなど、役者は皆よく演じていると思います。また、映像の撮り方もうまいです。配役については、女性が、お互い違う人種かと思わせるくらい、違ったタイプの美人が揃ってます。それに比べると男性陣は全体的にむさくるしい感じですが、白人っぽい顔立ちの人が多い気がしました。さて、中盤までは、非常に良質な映画の雰囲気が感じられ、期待感が高まっていくのですが、中盤のハプニング以降、大の男たちが、バレーボールで遊んでいたという落ち度が、あまりに大きすぎて、悪いことが重なったとか、そういうレベルじゃなくなっています。登場人物達が、その落ち度がないこととしてふるまっているのも驚きです。このおかげで、その後も一展開あるのですが、すべて瑣末事に思われてしまい、中途半端に終わってしまったように感じました。いい雰囲気が出ているだけに、ものたりない、もったいない感じがしましたね。[映画館(字幕)] 6点(2024-06-25 18:11:08) 18. ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う 《ネタバレ》 冒頭アバン部分はなかなかインパクトがあっていいと思います。ですが、展開の節目になる出来事のリアリティの無さが目立ち、その点は、作者の開き直りすら感じます。ダークな世界を描くのに、ツッコミどころが多いというのは、やはり今ひとつ引き込まれないです。そういった、かなり無茶な展開に加えて、使い古された設定も目立ってきますが、そこそこ、最後まで楽しめるのは、作り手の手慣れた手腕もあるのでしょうが、やはり、佐藤寛子氏のお陰なのでしょうか。氏の「たわわ」な感じが功を奏したのでしょうか。氏のことは初めて尻ましたが、今後は注目したいと思います。作品の暗い世界観と、劇場のロケーションは、なかなかあっていたように思います。[映画館(字幕)] 6点(2024-06-25 17:21:59) 19. レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ 《ネタバレ》 架空のロシア出身バンドが、アメリカに渡って、一旗、一儲けをめざすというコメディ。バンドメンバーたちの極端にとんがったリーゼントと革靴が特徴的で、見た目からしてベタベタなコメディで、事実そうなのですが、おちゃらけた軽快なノリのようなものとは一切無縁で、ばかばかしいことを、朴訥に進めることでじわじわと沁み出てくるとぼけたおかしみのようなものがメインで、バカバカしさゲージがジワジワとたまっていき、許容値を越えると笑わざるを得ないという感じなので、瞬発的に大笑いすることもないのですが、押しつけがましさを感じることもないのですよね。ストーリーはあってないようなものなのですが、変てこなバンドがテキサスの廃れた盛り場を転々と巡るロードムービーとして、あまり飽きることなく、そこそこ楽しむことができました。[インターネット(字幕)] 5点(2024-06-20 18:27:16) 20. レナードの朝 《ネタバレ》 原作の医療ノンフィクションは未読。原題は「Awakenings」。邦題は詩的でさわやか過ぎて、個人的には今一つ。岸田智史の「きみの朝」だよが頭に流れてしまうようなイメージ。飾りのない原題の方が、内容にマッチしてると思います。嗜眠性脳炎患者(表情が硬直、人間的な精神活動はほぼ停止)に、新薬を投薬したところ、劇的な効果があったものの、徐々に薬が効かなくなり、元通りに戻ってしまうというような話です。原作未読なものの、相当に脚色されていることは容易に推測できます。結果的に、既存のSF作品である「アルジャーノンに花束を」に近づきすぎてしまい、鉄板の感動は得られているものの、同時に二番煎じ感も否めないという、手放しで称賛できない複雑な気持ちになってしまいましたかね。ロビン・ウィリアムズは適役でした。[インターネット(字幕)] 5点(2024-06-20 18:25:01)
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