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タイトル名 |
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 |
レビュワー |
ドラえもんさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2005-05-12 01:12:26 |
変更日時 |
2005-05-13 23:08:41 |
レビュー内容 |
突然の火災で両親と住むところを失った三人の幼い子供たちに、さらなる不幸が襲いかかるという事以外まったく予備知識なしで本作に接したのだが、これがまったくの拾い物の実に良く出来たファンタジー・アドベンチャーだった。 原作が世界的ベストセラーだと言っても「ハリ・ポタ」ほど日本では馴染みがないだけに、劇場公開も少々地味で、多くの人の目に触れないまま終わってしまうには、あまりにも勿体無い作品である。本作でなにより素晴らしいのが凝り凝った数々のゴシック風美術デザイン。小道具から豪華な衣裳、あるいは大掛かりなセットに至るまで、このお伽噺を語る上で無くてはならない物ばかり。それらが作品の成否のカギを握っているともとれ、そういう意味においては絶大な効果を上げていると言える。また物語の性格上、存在し得ない世界を構築する為のヴィジュアルは、余計なものは排するという簡素化に徹し、必要とする描写(例えば、暴風で釘が抜け出るようなシーンなど)には事細かく取り入れるという拘りを感じさせる。それは全篇が曇りがちのぼんやりとしたトーンで貫かれている点にも感じられ、「スリーピー・ホロウ」の撮影監督E・ルベッキの手腕がここでも大いに発揮されたと言える。子供目線に徹したカメラアングルや遠近法を巧みに利用した撮影技術など、まさにプロの仕事である。利発で機知に富み極めてマトモな子供たちに対し、ことごとく選択を間違える感度の鈍い大人たちにイライラが募り、そのハラハラ感が面白いのだが、大人を出し抜く爽快感には欠けているようだ。J・キャリーは、こういった役にはやはりこの人でないとと思えるぐらい、その怪人ぶりを発揮。水を得た魚の如く、悪役を実に楽しげに演じている。また、M・ストリープには極めて珍しい役どころだが、ジムの演技を確りと受けとめ、少ない出番ながら、さすが大女優の存在感を示している。二人の本格的な初共演がこんな形で実現するとは夢にも思わなかっただけに、ファンとしては嬉しい限りだ。本作はオープニングからエンドロールに至るまで、実に細やかで丁寧な作りの映画であり、内容的にもファンタジーと呼ばれる作品の中でも群を抜いている。子供たちの不幸はまだ始まったばかりだと考えると、本作に物足らなさを感じた人もきっと納得してくれると思うが、果たして続篇はあるのだろうか? |
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