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タイトル名 |
黒部の太陽 |
レビュワー |
どっぐすさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2013-01-31 22:10:46 |
変更日時 |
2013-02-01 00:27:58 |
レビュー内容 |
かつて映画は映画館だけで観るために作られていた。 ビデオやDVDで既に知っている映画をリバイバルで観るとそれを実感できる。 自分の場合は例えば、「アラビアのロレンス」であったり、「七人の侍」であったり、「地獄の黙示録」といった作品だ。 これらをスクリーンで観たとき、自分はその映画の魅力の10分の一ぐらいしか体感していなかったことがよくわかった。 「黒部の太陽」はこれまでDVD等で目にすることはできなかったわけだが、この度、東劇のスクリーンで観られたことは幸運に思う。 ただ自分は、以前、実際に黒四ダムに足を運び、本作が観られない故に、原作や熊井啓監督の著書、脚本を読み、最近のテレビドラマも観たりと事前の情報を仕入れすぎていたので、すべてにおいて先が読めてしまったのが残念だ。 電気事業者のPR的映画でもあるので、今の社会状況を考えると複雑な気持ちでもあった。 個人的には衝撃や感動は薄れてしまったが、やはりこの映画、スクリーンを前提とした確固とした撮り方をしている。 会話に合わせてカメラが絶妙なタイミングで移動したり、テレビドラマ的な考えでは当然カットバックで見せるような会話のシーンで、三船や裕次郎のアップだけを執拗に長まわしで見せる撮り方は無駄がなく緊張感があり、風格を感じる。綿密な計算とリハーサルに基づいた「映画」の撮り方だ。 音の使い方も印象的だ。 雄大な風景もまさに「絵」がドラマを語っている。人夫が断崖絶壁を歩くシーンは怖すぎるし、大出水シーンでは役者は演技どころではない迫力だ。 東劇の観客は、当時を知っているであろう御高齢の方がほとんどであった。上映の宣伝が懐古的で、うまい宣伝ではないと思う。 年寄りの自慢話であっても今の若者が観る価値はあると思うのにもったいないことである。 かつて黒澤明監督が、日本映画に客が入らないなら昔のいい映画を流せばいいじゃないかという発言をしたことがある。 映画会社もそれで儲かるはずだと。 そうなのだ。名画座や懐古的な特集上映ばかりでなく、スクリーンで観る価値のある映画を、新鮮味のある切り口で宣伝して、定期的にリバイバルしてくれれば映画館はもっと楽しくなると思う。 今の若者にとっても新鮮であるに違いない。 裕次郎の遺志は、多くの映画人の遺志でもあると今回の上映を観て考えてしまいました。 |
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