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タイトル名 |
イル・ポスティーノ |
レビュワー |
鱗歌さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2004-12-19 00:35:12 |
変更日時 |
2004-12-19 00:35:12 |
レビュー内容 |
この映画、例えば、詩人の目を通してすべてを描く方法もあったかもしれない。「詩人がかつて生活を送った南イタリアの島。そこには美しい自然と素朴な人々の暮らしがあり、ひとりの郵便配達夫との交流があった。やがて詩人は島を去る。月日は流れ、久しぶりに島を訪れる彼、しかし郵便配達夫の姿はそこにはない。彼に何が起こったのか?残された妻の話から、郵便配達夫の生前の姿、生き様がよみがえる」・・・こういう、謎解き風のストーリー設計の方が、緊張感もあり、バランスいいのかもしれません。しかし。本作は敢えて、このような描き方はしなかった。しなかったからこそ、これほど独特の叙情性を持たせることができたのでしょう。映画はひとつの基準では決して語りつくせない・・・。映画の中心人物は郵便配達夫マリオですが、彼の恋愛の顛末だけみれば、何とも単純素朴すぎて、深みが感じられない、という感想になりかねない。しかし、この映画の、あまりにも素晴らしい色彩!空や海の色だけではない。屋内シーンの壁の色まで、控えめながらその色合いをアピールし、我々を魅了する。この世界の中で、マリオもまた、いわば風景の一部をなす存在。彼の素朴さこそが、存在感そのもの。そして、詩人が去り、言葉を紡ぐ者がいなくなった島で、やがて、マリオ自身が端緒となり「詩」が自ら迸り始める!・・・。やはり、この映画にはこの構成こそが相応しかったのでしょう。ちなみに、主人公を演じたマッシモ・トロイージがこのすぐ後に他界したことは、私はこの映画を観たときには知らず、後で聞いて、愕然としました。人生最後の瞬間をこの映画にかけ、しかも、あくまで個性を抑え、素朴な南イタリアの青年の姿として自らを深く沈めていったその姿。間違いなく不滅のものでしょう。 |
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