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タイトル名 |
誰かに見られてる |
レビュワー |
鱗歌さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-03-23 08:42:55 |
変更日時 |
2025-03-23 08:42:55 |
レビュー内容 |
『誰かに見られてる』ってのも妙な邦題ですが、おそらく、メアリ・H・クラークの小説のタイトル「誰かが見ている」をモジって付けたんでしょうなあ。原題が『Someone to Watch Over Me』だから、当たらずとも遠からず・・・だいぶ遠いけど。先日、エンドクレジットを眺めてて初めて知ったのですが、この原題は、ガーシュインの歌曲のタイトルから来ているようで。あと、さらに余談ですが、その昔、日曜洋画劇場で『ニューヨーク25時・少女誘拐/恐怖の地下密室!レイプ殺人が招く二重犯罪』なる映画が放送されていて、これが実はメアリ・H・クラークの「誰かが見ている」の映画化作品であったのだそうな。そりゃ気づかんかったわい(笑)。何となく原作小説よりも面白かった印象もあるのですが、シャワールームの少女を映す無駄なサービスカットがあったりして(大したシーンでは無いけど)、もうテレビ放送とかはできないのかなあ、とか。 余談が過ぎました。さて。 1980年代にリドリー・スコットに対して持っていたイメージというと、「CF出身のスタイリッシュな映像作家」というもので、要は都会的なイメージ。特にブレードランナーあたりの印象が強かったんでしょうなあ。ところが90年代以降を見てると、結局どうやら、そういう監督さんでは無かったらしくって。『デュエリスト/決闘者』の監督であり、『エイリアン』の監督なのであって、「都会的」どころか、時代が現代ではなかったり、そもそも舞台が地球上ですらなかったり。現代が舞台であっても、都会的、というのとは大なり小なり、距離があるような。 そんな彼のフィルモグラフィの中で、この『誰かに見られてる』は珍しく、「都会的」と言ってよい作品だと思います。大都会の中心、ではなく、多少ゴミゴミしてますが、夜の街の雰囲気。リドリー・スコットって本当は、こういう作品をこそ撮りたかったんじゃなかろうか、と思えてくるぐらい、神経を使って作られた作品であるように感じられます。ぶっちゃけ、ストーリーは大してオモシロくないんですけどね、雰囲気が魅力的なのです。 大人の恋愛を絡めたサスペンス。いや、サスペンスを絡めた大人の恋愛映画、なのかな。殺人事件を目撃した女性と、彼女を警護することになった刑事のちょっと不器用なラブロマンス。彼女を付け狙う犯人役は、あの『逃亡者』の「片腕の男」のヒトで、確かに悪そうだし怖そうでもあるのですが、ガンガン襲ってきて大活躍するようなタイプでもないので、どちらかというと主人公である男女をめぐり合わせる方便として存在しているような、やや黒子じみたところがあります。 トム・ベレンジャー演じる刑事には妻と息子がいて、家族仲睦まじく暮らしてきたのですが、この事件に関わるようになり、警護のために夜は家を空ける生活に。さらには、その守るべき対象であるミミ・ロジャースとも何となくいい関係になってしまって、家族との間がギクシャクしてくる。 という設定も映画のための一種の方便であって、この設定のお陰で、ミミ・ロジャースと逢うのはいつも夜。彼女は、夜の雰囲気をまとった女性、なんですね。一方、妻や息子と会うシーンは、主に昼間となる。夜、妻と息子が不安そうにしていても、そこにはトム・ベレンジャーはいない。 女性と夜に逢う、と聞くと、何となく隠微な感じがいたしますが、実際にはあまりそういう印象が無いのは、刑事の不器用さ、ってのもあるのですが、彼女に関わるシーンでバロック音楽やオペラが流される、ということも関係しているようです。これがジャズ全開だったら、一気に2人はいい関係になりそうなところですが、そうはならないし、映画もそういう演出はしない。最初の方で小雨の中をトム・ベレンジャーが機嫌よく(?)歩いていると、流れてくるのはやや場違いとも思える、ヴィヴァルディのグローリア。ただの夜の雰囲気では、無いんですね。こういう音楽の使い方もあって、二人の関係がベタベタした印象にもならず、二人がだんだんいい関係になったとて、共に朝を迎えるシーンが無いから、エロい感じはいたしません。 二人でダンスするシーンは、これはやっぱりジャズですね。二人っきりではないので、ジャズが流れても安心です。いい雰囲気ではありますが、すでに少し、二人の間には距離もある。 で、クライマックス。例の悪人との対決。ですが、浮気相手と妻子が鉢合わせ、なもんで、ある意味、それ以上の修羅場かもしれぬ。男は妻子のもとに行き、女とは視線のみを交わす。このシーンも夜。夜が明けてから改めて別れるシーンとしてもいいのかもしれないけれど、あくまで夜のまま、女は立ち去り、映画も終わる。 うーん。いいじゃないですか。 |
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