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タイトル名 |
4匹の蝿 |
レビュワー |
鱗歌さん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2024-08-25 17:14:19 |
変更日時 |
2024-08-25 17:14:19 |
レビュー内容 |
夜の公園でオバサンが謎の人物に襲われる場面。公園の生垣の間をオバサンが逃げ回ると、まるでそこが立体迷路であるかのような、シャイニングチックなシーンに見えてきて、するとそこには何となくペンデレツキチックな気がしないでもない鋭い音楽が被さる。もちろんアルジェントがキューブリックをパクった訳でも何でもなく、そもそもこの映画が作られた時にはキングの原作小説すら世に出ていない訳で。さすが、ダリオ・アルジェント。 などと、無理して褒めてくれとはいいませんけれども。 その前の場面、オバサンが公園のベンチで誰かを待ち続ける姿が、不穏な空気を伴ってやたら長く描かれます。さらにその前には、オバサンが誰かと電話する場面。これがまた、カメラが電話線を追いかけていって我々を会話先の謎の人物のところまでいざなうような、奇妙な演出になってます。こういったシーンが醸し出す得体の知れない空気感の中、ついに起こる惨劇、という訳ですが、突然襲われるにせよ何にせよ、被害者が殺されること自体よりも、殺害に向けてジワジワと追い詰められていく姿、それを描くことが、主眼。アルジェントらしさ。オバサンの死はカメラの前で直接描写されはしないけれど、ジワジワ感は充分です。 他の被害者も、ロクな殺され方をしません。いや、映画の中でジワジワ死んでいかないようなヤツは要注意。実は生きていました、ってなことになり、改めて死んでもらうことになってしまう・・・。 ミステリ仕立ての作品ながら、謎解きよりは、幻想シーンを含め、ヤな感じを醸し出すことに重点が置かれていて、真犯人が明らかになるくだりも「そんなアホな」ではありますが、タイトルの「4匹の蠅」にも強引ながらちゃんと意味があったりするのが、作品の意外性。さらにこの作品、陰惨な内容ながら、トボけた探偵とか、犯人と間違えられて主人公にタコ殴りにされる気の毒な郵便配達とか、ユーモアも盛り込まれていたりするが、さらなる意外性。 真犯人は誰なのか。これが一番、意外性が無いかもしれないけれど(笑)、その最期は誰の死よりも唐突かつ派手に描かれていて、これぞミステリにおける犯人の特権。先ほど、ミステリ仕立て、などと言いましたが、謎解きだけがミステリではなく、怪しさと妖しさを兼ね備えたこの作品もまた、立派なミステリ作品と言えるのではないかと。 |
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