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タイトル名 |
マリヤのお雪 |
レビュワー |
彦馬さん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2006-02-03 13:23:53 |
変更日時 |
2006-02-03 13:25:06 |
レビュー内容 |
西南戦争を背景に“お雪”=山田五十鈴と“おきん”=原駒子の田舎芸者2人の女の意地と悲哀が、官軍と賊軍の対立軸の周りで細やかに滲む傑作です。官軍の前線と床下に潜む賊軍密偵、杉木立で上から下から挟まれる賊軍密偵などの上下空間の利用、全編に見られる奥行きある被写界、「じれったいね」と山田がアップになりその向こうに小さく写る官軍将官の構図など見事なショットの数々に惚れ惚れします。杉木立のシーンでは美しいピンストライプの杉が写り、この縦の線が後半になると格子戸や窓の木枠、すだれなど縦のラインごしの山田や原に引き継がれます。これは賊軍密偵の潔き最期と芸者の一本気を直線的に表現したものではないでしょうか。また銃声、襖を閉めた向こうから聞こえる会話などの画面外を意識させる音の利用、緊迫したシーンから一転小川のせせらぎや菜の花畑、雲流れる空への転調、また官軍と賊軍の対立を無益に笑い飛ばすかのような馬、豚、犬、小鳥のさえずりもいいですね。そしてなんといっても、マリヤ像のシガレットケースのショットから繋がれた山田が官軍将官の元へ現れた時の、急須やコップに仄かに光る十字、ラスト付近で官軍将官のサーベルに光る十字・・・しびれます。乗船を拒否された山田と原が縦にゆらゆら揺れる船の中からのショット、その山田と原の無言の表情は涙なくしては見られず、ラストシーンの手前と奥の無言の2人・・・「マリヤのお雪」が深深と私の奥に降り積もっていくのでありました。
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