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タイトル名 |
落下の解剖学 |
レビュワー |
onomichiさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2024-03-05 19:21:31 |
変更日時 |
2024-03-09 21:54:55 |
レビュー内容 |
この映画は「おとなのけんか」である(ポランスキーにそういう映画があったが)。夫婦が喧嘩するだけでなく、裁判での検察官と被告、証人、弁護人とのやり取りも口喧嘩のようなもの。言葉尻を捉える子供じみたソレである。そういえば、冒頭にキャストの子供の頃の写真が出ていたなと。 被疑者の女はドイツ人で、転落死した夫はフランス人。裁判ではフランス語の質問に英語で答える。言葉の壁に子供っぽい心理が加わり、共通のコードを持たないコミュニケーション不全が前提であれば、それは言語ゲーム(ウィトゲンシュタイン!)となる。
言語ゲームとは、言葉と意志が通わないところに起こる本来的な他者との邂逅。結局のところ、彼らの子どもで、おとなになろうとする盲目のダニエルにこそ全能性が宿るラストが象徴的であった。 転落死した男は自殺か他殺か? 彼は落下する。私には、それもダニエルに見透かされたように、言葉を失いながら、言葉を紡ぐしかない作家の子供っぽさ所以の自作自演の典型のように思えた。
『ある言葉の根拠を示そうとして、いくら言葉を尽くそうとも、その説明のための言葉すら、根拠のないルールをもとに述べられているにすぎない。自分自身で決めたルールのなかで、自分自身を正しいとしているのだから、つまるところ「論理」というものは、すべて「自作自演」となる』 飲茶「哲学的な何か、あと科学とか」より |
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