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タイトル名 |
近松物語 |
レビュワー |
スロウボートさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2004-03-07 20:51:45 |
変更日時 |
2004-03-07 22:31:05 |
レビュー内容 |
個人的には長谷川一夫はあまり好きではないのですが、ここでの彼は別格です。もっとも、おさんを演じた香川京子はそれ以上。ラストの馬上での、あの堂々とした表情。あれはまさに「女の強さ」に他なりません。あまりにもいい顔をしているので感動しました。スタッフワークも素晴らしく、特に宮川一夫のキャメラは絶品。残念ながら、劇場でこの映画を観たのは一度きりですが、モノトーンのグレーの階調の細やかさには驚きました。「水墨画」の様にと言いますが、この映画の映像はまさにそれです。画調に関して言えば、大映時代の溝口作品は日本映画史におけるモノクロ映像の到達点なのかも知れません。 構図も「おさんと茂兵衛が結ばれるまでは、二人の間に障子や柱、襖などの縦の線を入れた」と宮川が語っている通り、脚本の流れに沿っていて実に的確です。意図は完全に達成されていると感じます。そもそもワンシーンワンカットというスタイルも、芝居の途切れを嫌ったことから多用したものであって、溝口監督のキャメラワークは常に芝居本意。キャメラが勝手に動くことなく、あくまでも芝居に合わせて動かす。キャメラワークにしても、構図にしても脚本に沿っているからこそ、印象に残ります。画と脚本が合ってないと、迫力がなくなったり、情緒が消え失せたりと、メチャクチャになってしまうのが映画ですから、その意味では、単に奇麗で美しい画作りではなく、キャメラワークや構図によって物語を巧みに語る溝口監督の映像はやっぱり超一流です。撮影設計のほとんど全てをまかされていたと言われる宮川の功績も多大。「画が整い過ぎている」と評されることもある本作ですが、それもどこかこの物語の抑制の効いた脚本自体に起因しているのではないでしょうか。ただ、ラストはおさんのクローズアップで終わらせて欲しかった、という思いもあります。往復移動を用いてキャメラが引いてしまいますが、『祇園の姉妹』のように極めて主観的な「大写」で終わらせても溝口監督らしくて、より感動できたような気がします。なにしろこれは「女の強さ」を描いた女の映画であって、主役はおさんなのですから。 |
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