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タイトル名 |
メゾン・ド・ヒミコ |
レビュワー |
花守湖さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2007-11-15 19:53:02 |
変更日時 |
2008-01-20 13:06:43 |
レビュー内容 |
大半のゲイたちが明るく振舞うのは、天性の明るさを持っているからではなく、長年の経験で培った処世術だとおもう。彼らは鈍感力を身につけ、自ら道化を演じることで社会からの敵意を逸らしている。若いゲイなら自立できる。しかし歳をとったゲイほど醜く、そして救い難いものは無い。老人になったゲイが生きていく術は、やはりゲイ同士で寄り添って生きていくしかないのだろう。柴崎が言った台詞が印象に残る。「ゲイが老人になり、介護が必要になったからといって、家族に面倒を見てもらおうと考えるのは都合が良すぎる」彼女は、家族の絆の強さを信じているゲイたちの「偽善」を痛烈に批判しているのだ。 捨てる神あれば拾う神あり、という言葉があるが、自分から捨てておいて、捨てた相手に拾ってもらうのは甘えである。ヒミコ自身も妻と娘を捨てた。そして因果応報という言葉の如く不治の病になり血を吐いて、そして死んでいく。もしここで娘の柴崎がヒミコを赦していたならば、この物語は茶番劇で終わっていた。人間は決してそれほど寛大ではない。家族はけっして運命共同体ではない。映画的な偽善を廃し、現実の厳しさを描いている点を評価したい。人間は誰しも老いる。しかしゲイの老いは深刻だ。青い空の美しいジャケットが印象に残る。しかし実際の映像は、台風のために鉛色の空で覆われている。そしてそこに聳え立つメゾン・ド・ヒミコは、ゲイを救うための、ノアの箱舟であった。こうやって人は必死で生きていく。
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