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タイトル名 |
思い出のマーニー |
レビュワー |
マーチェンカさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2014-08-10 23:21:56 |
変更日時 |
2014-08-10 23:34:01 |
レビュー内容 |
一度見た後に、杏奈とマーニーの本当の関係を思い起こしながら劇中の二人の様子を反芻し、二度目見る事があれば、その時には二人の関係を念頭に置きつつリアルタイムで彼らの内面に注目しながら見返す・・・そんな楽しみ方ができる映画だと思います。
劇中杏奈が見せるような「愛されていない」「見捨てられた」という意識は、まだまだ未成熟な年若い精神にとって、とても辛い、孤独で切実なものだと思います。
また冒頭の、公園で描いた絵を杏奈が先生に見せようとする時に、頬を赤らめながら、しかし何か期待するようにその絵を先生に差し出そうとした場面を考えると、杏奈は最初から「誰かに受け入れられること」を求めていたのではないかという風にも見えます。
その事と、養母が自分を養育するのに市から交付金を受け取っているという事実に深く傷ついた様子を考え合わせると、彼女は「誰かから愛され、また自分も愛したいのに、それが裏切られるのが怖い、そしてそんな裏切りを犯した対象を許せない」というメンタリティを持っていたようにも見えます。
そんな未成熟ながらも一生懸命に悩んでいる若い精神にとって、例えば劇中でのマーニーとの関係を通して杏奈が得たような「無条件に愛され、そして愛している、そしてその上で裏切られたと自分が感じても相手を許し、愛し続ける」という経験は、そのような辛さや孤独、そして「誰かを愛そうとして裏切られることへの怖れと怒り」を乗り越えるために必要な物だったのだと思います(実際杏奈は、マーニーと貴重な関係を築き、最終的に彼女を許すという経験を通して初めて、養母の愛に気付くことができました)。
「太っちょブタ」と杏奈から罵られたあの娘が傍から見れば普通に良い子であるはずなのに明確に美醜を基準にして悪者のように表現されているという手つきの安易さや、あるいは痛ましい虐待事件がしばしば報道される今の時代状況を考え合わせた上での、杏奈の「幸せさ」とその悩みの「生温さ」を指摘することも、もしかしたらできるかもしれません。
しかし僕自身はそれでも、この作品の中にある杏奈の悩みは、決して少なくない人たちが経験するものであり、そして彼女がその悩みを克服するうえで通過した「愛し愛される、そして相手を許す」という経験は、間違いなく人間にとって不可欠なものだと思います。この映画では、そのような「葛藤と浄化の過程」が、「祖母と孫の時を超えた交流」というドラマチックな要素も含めて、静かに、しかし確実に感動的に表現されていると思います。 |
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