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タイトル名 |
ショーシャンクの空に |
レビュワー |
マーク・レスターさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2004-03-28 00:39:09 |
変更日時 |
2004-03-28 01:03:16 |
レビュー内容 |
刑務所限定の、非常に特徴的な“ピンポイント大河ドラマ”となってい ました。空間的な広がりを<横展開>、時間の推移を<縦方向> として、映画を敢えて彫刻のような「立体物」として捉えてみる と、この特異性が明確になります。 この映画は、面積や距離という<横展開>が全く期待できない刑 務所という“点”が、20年という長い時間軸を<縦方向>に移動 した結果生成される、“針のように細長い”実に奇妙な“カタチ” をしているのです。この極細な外観を形成する「刑務所の壁」 が、結果的には「経験」という人間の内面的な広がりをも否定し てしまう悲劇に、強く心を動かされました。「刑務所の壁」は長 期の隔離により、“娑婆(シャバ)”での常識(日常慣習・対人関係・ 社会システム)を脳内から一掃し、刑務所だけでしか通用しない 「非日常的で非常識的な常識」に囚われた、“廃人”を量産していたのです。仮釈放者の人生は、この映画と同じ脆弱な極細形状を 成し、彼らの消え入りそうな存在感は、高層の針(極細の<縦方 向>)のテッペンで、爆発的に膨張する<横展開>(“娑婆”で の常識)という重い十字架を背負い、危なげなバランスを取る道 化師になぞらえます。偏見・差別・疎外感という強風により、今 にも転落しそうな情況にあったのです。 (ロープを首に巻き付け、極細の人生から飛び降りたブルックス という存在もいました...。) 主人公達が目指す場所はこの危険なアメリカ社会ではなく、“記 憶の無い海”なのです。“娑婆”の致命的な点は、刑務所での偏 重した極細の<縦方向>が、危険な“位置エネルギー”へと転換されることですから、「記憶の無い→過去が問われない→時間軸< 縦方向>の極細形状がリセットされる」と解釈するならば、“記 憶の無い海”は彼らの危機状況を構造的に是正できる、聖なる場所 だったのです。 ラスト近く、この映画の全貌が、実は極細ではなかったことに驚 愕します。極細の<縦方向>から、直角に横方向に伸びる、見す ぼらしく、しかしながら強い意志を持つ“抜け穴”が水面下で形 成されていたのです。それは一瞬だけアメリカ社会に通じ、遥か “記憶の無い海”へと直結。 穏やかに広がる<横展開>と豊かに熟する<縦方向>。 忌まわしき過去を払拭するべく、今、人生がこの海から再生して いくのです。 |
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