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ショコラ(2000) - マーク・レスターさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ショコラ(2000)
レビュワー マーク・レスターさん
点数 6点
投稿日時 2003-12-01 23:57:12
変更日時 2003-12-01 23:58:57
レビュー内容
「母親から主人公へ」、「主人公から娘へ」と連綿と続く「世代間連鎖」に強い興味を持ちました。
昨今、取りざたされている「幼児の虐待連鎖」に例を見ると、
「幼児期に虐待された心の傷(トラウマ)が、時間を経て親となった時に、“我が子への押さえられない虐待衝動”として噴出する悲劇のサイクルで、被害者がいつしか加害者に変貌し、新たな被害者と同時に次代の加害者をも作り続ける冷たい鎖。」なのです。この主人公は幼児虐待はしないが、「放浪」という行為で「世代間連鎖」の大きな鎖となっているのです。
主人公は母親と放浪した子供時代に、何らかのトラウマ的精神傾向を植え付けられ、押さえ切れない衝動のまま、自分の娘にも「放浪」という極端な生き様を強要してしまうのです。
問題なのは、深層的に娘がそのライフスタイルを望んでいないところにあり、居もしないカンガルーを唯一の友にしている点に、そんな娘の「心の闇」が見えてきます。
主人公は他者への心くばりを見せる前に、最も身近な存在である自分の娘が持つ、この構造的な悲劇を理解し、一刻も早く解決するべきだったのです。

そんな閉塞情況に、それこそ「河原者」(反権力、芸能の象徴)の彼が船に乗って登場。村の“正統”に突然“異端者”がチョコレート店を開業し、追い討ちをかけるように水上生活者という“異教徒”が大挙して侵入して来たワケで、ちょっとした宗教戦争の様相を呈するのです。(異教徒は“えせ十字軍”に火あぶりの奇襲にあって一時的にその勢力を縮小しますが......。)
筋書きの取りあえずの和解を見て、「中世の宗教的価値観に支配されていた村に、近代の夜明けが訪れる。」という大団円を迎えます。しかし、主人公たちに真の開放がやって来るのは、その後なのです。「河原者」の彼が丘にあがり、「変わり者」の主人公と村に定住するという、“異端者”と“異教徒”の改宗という穏やかな形で具現化するのです。
娘の精神的危うさの象徴であったカンガルーが娘のもとを去り、
放浪衝動の発生起因である「北風」に、トラウマの元凶だった母親の遺灰をゆだねる姿から、幾世代にもわたり強固に繋がってきた「鎖」が切れる音を聞きました。
この映画は主人公の「血縁的因習からの開放」と村人の「地縁的因習からの開放」という二重構造があったからこそ、映画としての膨らみを持つことができたのです。
マーク・レスター さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2013-07-27ディア・ドクター87.05点
2013-04-03ハート・ロッカー96.21点
2013-04-03ゴッドファーザー PART Ⅱ98.35点
2011-05-14サマーウォーズ76.38点
2010-08-08洲崎パラダイス 赤信号98.16点
2010-04-30スラムドッグ$ミリオネア77.09点
2010-02-13ベンジャミン・バトン/数奇な人生86.50点
2009-12-27見知らぬ乗客76.90点
2009-10-20おくりびと87.04点
2009-08-19ウォーターボーイズ77.00点
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