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タイトル名 |
パンズ・ラビリンス |
レビュワー |
夢の中さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2008-01-17 12:22:36 |
変更日時 |
2008-01-17 12:24:41 |
レビュー内容 |
過酷なファシズムの現実と幻想世界との対比の中に 現実の方が遥かに重要である状況に驚きと新鮮さを感じた。 非常に面白く、インパクトもあったのだが、冷静に振り返れば 美しい感動は、物語の中には決してなかった。
幻想世界は少女の妄想なのか、彼女は幸せだったのか、そういう 神の目線も、一元的な批評視点も、この物語には必要で無い気がした。 すべてが主体で、それぞれの登場人物の中にそれぞれの物語が 存在している。それは固執であり、醜さであり、崇高であり、 一途であり、逃避と依存であり、純粋さであった。 (でも愛は無かったよね、正直いって。)
観終えて、一日たった今、無垢な少女という設定によって、 過激な現実表現を許され、浄化するだろうという 暗黙の了解な感覚を受けている。(ナウシカもそうだもんね)
パンフレットに、これをイニシエーションという人がいたが そうは思えなかった。なぜならイニシエーションは社会に、より 近づくための精神的な成長と成熟を得る儀式・経験だが、 この映画の少女の試練は、より現実から逃避するための儀式だった。
かといって、現実世界に喜びを見出せない人が、 幻想世界の中に幸せ(結果的には希望)を 求めることは決して悪いことでは無いと思った。 ただ、それはあまりに現実世界が悲惨で悲劇的な場合であって、 この太平の日本で不満不平と絶望しか感じないのならば、 どんな世の中ならば幸せになれるというのであろうか。 王女様にならなくても幸せにはなれる。
全体を通して、成熟した精神性の視点を感じなかった。 ずっと隠された性を(いや、むしろ公かな) ふつふつと感じさせられたが、それは主人公の女の子の 健全性でかなりクリアにされていた。
面白かったけれども、長く付き合いたい監督ではない。 観たた瞬間は夢中になったけれど、今はちょっと突き放したい。
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