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タイトル名 |
太陽がいっぱい |
レビュワー |
anemoneさん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2003-12-10 22:07:27 |
変更日時 |
2003-12-10 22:07:27 |
レビュー内容 |
音楽と映画って切り離せない存在である。ニーノ・ロータのあまりにも有名なテーマ曲を聴くたびに、あの美しい海の青と空の青、何も知らずに電話の呼び出しに応じるアラン・ドロンの、孤独な、なのに満ち足りた表情を思い出して涙してしまう。ただでさえ青と黄の強いこの頃のカラー映像は、最近の映画では滅多にお目にかかれないほど、この暗い個性の俳優の目と、海や空の色をどこまでも青く映し出してしまう。まるでその瞳の奥に隠された富への狂おしいほどの憧れを映し出すかのように。友を殺し、女を欺いてまで彼が欲しいと願ったものは、決して友の持つ財産だけではなかった。彼が心の底から望んでいたのは、たまたま運命のいたずらから太陽の当たる場所に生まれて来た友人の存在そのもの。アメリカから渡って来た貧しい青年は、ヨーロッパで豪勢な毎日を送る友人になり代わることを願ったのだ。羨望から殺人を犯す若者の卑屈な個性に、飢えた目をしたアラン・ドロンが見事にはまった。原作のトム・リプリーは、卑屈というよりはむしろ大胆不敵さが売り物の稀代の天才詐欺師だが、映画はその彼のキャラクターをどこまでも暗く、陰鬱なものに変えて人々の心に永遠の哀愁を刻み、パトリシア・ハイスミスの名声を確固たるものにした。それにしてもあの音楽がなかったら、この映画はこれほどまでの傑作になり得たのだろうか。 |
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