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タイトル名 |
五番町夕霧楼(1963) |
レビュワー |
イニシャルKさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-01-05 18:36:57 |
変更日時 |
2025-01-05 18:36:57 |
レビュー内容 |
水上勉が三島由紀夫の「金閣寺」に対して書いた小説を原作にした田坂具隆監督の映画。「金閣寺」を原作にした市川崑監督の「炎上」を先日見たのでこちらも鑑賞。「炎上」が犯人である学生僧の内面を描いていたのに対し、こちらは学生僧の恋人である遊郭の女性を主人公にしていて、見た直後というのもあって「炎上」に少しだけ出てきた中村玉緒演じる遊女をどうしても思い浮かべてしまうが、本作では学生僧の事件に至る背景よりもこの主人公・夕子(佐久間良子)の悲しい運命が描かれていて、そこに原作の水上勉らしさを感じるし、田坂監督の視線にも優しさが感じられるものとなっているが、その田坂監督の演出も格調高く、女性の儚さや美しさを見事に描き出していて、映画としての深みももちろんじゅうぶん。主演の佐久間良子はこれまで何本か出演作を見ているが、単独の主演作を見るのはおそらくこれが初めてかもしれないが、そんな田坂監督の演出に応えて、素晴らしい演技を見せていて、夕子の悲しみの中にある純粋さというものがよく出ていて、間違いなく本作は田坂監督のみならず佐久間良子にとっても代表作の一本だろう。夕子の売られた遊郭の女性たち(木暮実千代演じる女将さんがすごくいい。)がみな優しく、家庭的な雰囲気を醸し出しているのは少し違和感を残すものの、千秋実演じる夕子の最初の客で、彼女に入れ込む男が肺を病んだ夕子に対して最後は冷たくなるのとの対比になっているのでこれで良いのだろうと思うし、正順(河原崎長一郎)の自殺を報道する新聞記事を見ながら夕子を思う遊女たちからは女性としての強い優しさを感じ、ラスト近くのこのシーンには心を打たれるものがある。夕子の故郷の百日紅の美しさも印象的なのだが、この百日紅が夕子の人生を象徴するような花として描かれているのもドラマに深みを与えている。 |
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