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誰も知らない(2004) - しったか偽善者さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 誰も知らない(2004)
レビュワー しったか偽善者さん
点数 9点
投稿日時 2004-12-15 00:02:40
変更日時 2004-12-15 00:18:54
レビュー内容
実在の事件の「真実」が我々にとって意味するものとはなんでしょうか?。裁判の判決理由の事実認定さえも一義的には「真実」を明らかにしません。また、事件に利害関係のない私など大多数の人間は恣意的に、いいかげんに、無責任に事件を解釈評価します。つまり、乱暴を承知で言えば、こういう新聞に載った事件なんてのは「真実」など人の数だけあり、なおかつ所詮他人事なのです。誰もがあの兄弟たちのアパートの他の住人と同じです。この映画のヒューマニズムも傍観者は加害者というような説教的な意味では所詮無責任だと思うのです。極端な例えですが、我々があの子供たちを見る目とアフリカの餓死する子供たちを見る目はどう違うのでしょう?。本作には当事者を傷つけるという問題もあります。人物を美化したこの映画でさえも実在の当事者に対する私刑のような面を持つことは否定できないでしょう。罪を犯せば法や社会の公正なルールに則って罰せられるべきなのは当然ですが、あの母親も我々他人の無責任な正義感や義憤によって被害を受ける理由はないでしょう。この映画だって無責任な傍観者なのです。しかし、にもかかわらずこの映画のヒューマニズムにはワイドショー的義憤とは全く違う特別な何か、心に訴えかけるものを感じます。私は映画に引き込まれ、痛みを感じ、感動する他ありませんでした。本作は事件の裏に優しく居心地の良い美しい世界を見出しました。限りなく無条件に互いが信頼し愛し合う共同体はまるで一個の人格のように外部がズカズカ入り込むことで傷つき、外部を自ら拒絶します。あまりに危うく脆く痛々しいユートピア。見たことのない美しく同時に醜い不自然に閉塞した世界。無慈悲な仕打ちによって突き落とされたひどい生活の中にしかこんな世界は現れないという皮肉な逆説でしょうか?。事件について私はほとんど知りませんし、私のこの文章も無知のまま匿名で書く全く無責任なものです。私は他人事として、映画として、あの不思議な世界に感動するのみです。
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