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バリー・リンドン - no oneさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 バリー・リンドン
レビュワー no oneさん
点数 9点
投稿日時 2006-01-04 01:59:32
変更日時 2006-03-31 19:38:20
レビュー内容
ロココ絵画の名作を思わせる、夢のように美しくて荘厳な映像。絵画を観るのが好きな人なら、これだけでも観る価値があると思う。脚本も恐ろしく完成されており、映像がそうであるように全体の構成が完璧なシンメトリーを描いている(前半は決闘に勝利したバリーが故郷を追われた後に富と名誉を得るまで、後半は財産を浪費したあげく名誉を失ったバリーが決闘に敗れ、故郷へ舞い戻るまで)。登場人物への感情移入を拒否するような作りも面白い。バリー・リンドンは間違っても善人とはいえないが、かといってとんでもない悪党と言い切ることもできない、ある意味ではすごく人間くさいキャラクターだ。エピローグの言葉を人間に対する否定ととる向きが多いようだけど、逆に救いを読み取ることもできないわけではない。ブロンテの『嵐ヶ丘』の結末にも似たような言葉があって、そちらは激しい生を全うした人物たちがようやく安らぎを得た、という慈愛の意味で使われている。栄光を求めて這い上がり、最後には己の欲望に足をとられて転落したバリー・リンドン。ひとりの人間の生涯を、綺麗な部分も醜い部分もひっくるめてまるまる映画にする。ただ「彼が生きた」ということをありのままに提示する。人間を描く方法として、もっとも実直で嘘のないやり方だ。いつものキューブリック作品には人間に対する皮肉や批判が見られるが、今回は趣きが違う。人間の愚かさを受容する、キューブリック流の人生賛歌を唄っているのではないかとも思えた。
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