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タイトル名 |
ドッグヴィル |
レビュワー |
no oneさん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2005-03-19 07:56:35 |
変更日時 |
2005-03-19 08:02:47 |
レビュー内容 |
ある小説の一説を思い出しました。「おれは正義など求めていない。何が正義なのかすらわかっていない。ほかの人間と同じように、こうしたいと思うことを、したいだけなのだ。」その小説の題名は『ドッグ・イート・ドッグ』(E・バンカー)。 人間のモラルに期待しちゃダメなのかもしれない。所詮は人間も動物。犬と同じで、どんなに高尚な道徳も、その根底には骨を盗られそうになると噛み付くのと同じ、本能的な怒りがある。 ドッグヴィルの村人たちにはもちろん怒りを覚えたが、かといってグレイスの言葉もすっきりしない。環境が悪いから仕方がない、なんて言い方で許そうとしたかと思えば、子供もろとも皆殺しにしろと命令する。何もかも理解して許そうとする偽善的な態度にもぞっとするが、無差別殺人を命令する冷酷さもおぞましい。 結局は誰一人まちがいなく正しいと言える行動を選択していないし、文句なく正しい選択があったとも思えない。やりたいことをやってるだけ。そして後からどうとでも理屈をつけて正当化する。気色悪いなあ。でもその気色の悪いものが、人間の本性なんだと思う。 そこから目を逸らさず、自分たちが犬同然だってことを自覚して、自分たちを首輪で繋いでおくべきなのかもしれない。そうしないと我慢できずに噛み付いてしまう――首輪をはずされたグレイスがそうだったように。少なくともあのラストにカタルシスを感じてしまう自分には、首輪が必要だと感じる。 |
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