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タイトル名 |
ヒストリー・オブ・バイオレンス |
レビュワー |
六本木ソルジャーさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2006-03-20 23:57:40 |
変更日時 |
2006-03-20 23:57:40 |
レビュー内容 |
クローネンバーグ監督作品はほとんど馴染みがなく、代表作の「デッドゾーン」もあまりピンと来なかったので、自分に合うかどうか不安だったが、アメリカでも評価が高かったと聞いており、噂に違わず素晴らしい映画だった。 原作もあるらしいけれども、そんな余計な知識は要らない。96分という短い時間に、無駄な部分を省いて、適度な重み、観客へのメッセージや問いかけを残して、ボールを観客に投げ込む。 そのボール(問いかけ)にどう想うかは観客に委ねられるというラストはまさにプロの業の一言。中途半端なラストが多い昨今の映画の中でこの映画はベストに締め括ったといえよう。 個人的に気に入ったセリフは「なんでも暴力で解決しようとするな」ヴィゴが息子に語ったセリフ。この一言がとてつもなく重い、心に響いた。 恐らくヴィゴは、暴力で解決することへの後悔や無意味さを知り、暴力では何も解決できないということを自分が重々知っているのであろう。 だからこそ、ヴィゴはジョーイからトムへと生まれ変わったのである。生まれ変わり、家族を持つ事で解決しようとしたヴィゴだからこそ、あの一言が重く感じる。 そのことをなんとしてでも息子に教えたかったのだろう。だからこそ、暴力の連鎖が起きたときの彼の表情や息子への接し方に複雑な心境が感じられる。あれは見事な演技だったと思う。 ラストでヴィゴは「どうすれば償えるのか」とウィリアムハートに問いかける。しかし、暴力以外で解決したくても、暴力でしか物事を収束できないというもどかしさ、虚しさを湖面でたたずむヴィゴに感じずにはいられない。 また、この映画では家族や妻の役割の重さも感じずにはいられない。自分の素性が妻にばれたときの階段での二人の行為には「自分を信じて欲しい」という無言でのヴィゴの問いかけと「どうすれば信じられるのか」というマリアベロの反論、それぞれに開いた心の傷を埋めようとする言葉よりも何よりも必要な行為ではなかったか。 そして、傷つきながらも家族の元へと帰るヴィゴに何も聞かずに、皿や肉を差し出す息子と娘の姿が温かい。「なんで結婚なんてしたんだ」「いい女なんていっぱいいるだろう」というハートの問いかけの答えのような気がしてならない。 |
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