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タイトル名 |
容疑者Xの献身 |
レビュワー |
六本木ソルジャーさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2008-10-20 23:19:10 |
変更日時 |
2008-10-20 23:19:10 |
レビュー内容 |
原作未読。1ページも読んでいない。 原作は相当に素晴らしいのだろうなというのが第一印象。 堤真一が演じる石神が素晴らしかった。 自分の才能を活かせる場がなく、自分の人生に絶望していた際に、愛する人たちのために自分の才能を活かせる場を与えられたことに対する喜びのようなものが伝わってきた。彼は初めて生きることへの意味を見出せたのではないか。 彼が唯一失敗したとするならば、あまりに“美しい回答”を求めすぎたことだ。 石神がただ単にアリバイ作りや遺体処理をしただけならば、恐らく花岡靖子も彼に最後まで従っただろう。 自分の組み立てた方程式が崩れたときに、泥臭く泣き崩れる姿が印象的だった。 いかに天才であろうとも、人間の感情までも計算どおりにはならないということか。 また、意外だったのは湯川が真相を暴いたことだ。 鑑賞中は友人のために真相を闇の中へ葬るのかと思っていたが、暴いたことでさらなる“深み”が増したような気がした。 友達のために真相を暴くべきではないという苦悩や葛藤、真実を明らかにしなくてはいけないという使命、同じ志を持つ同士として頭脳を犯罪に利用したという怒り、そういった複雑でどうしようもならない感情が湯川には渦巻いていた。 本作において影が薄かったところがある湯川だが、内海を冷たくあしらったり、内海に打ち明けたりと悩める深みのあるキャラクターには仕上がっている。 そして、本作で一番伝えたかったことは、人間の不可思議さということではないかと感じられた。石神が罪を犯そうとした心理、花岡が最後に取った行動、湯川が真相を暴こうとした理由、どれも論理的ではない。 科学や数式や論理では解明できないのが“人間の感情”ということなのがよく分かる作品だ。 本作において問題になりそうなのは、演出ではないか。 冒頭の実験やドッペルゲンガー的な分身といったシーンはあるものの、“過剰な演出”は極力避けようとしているように思われた。恐らく原作の良さを殺さないようにという意図を込めて、ニュートラルな状態を保とうとしたのだろう。 確かに、原作の良さは殺していないのかもしれないが、原作の良さを活かし切ってもいないようにも感じられた。 もうちょっと自分らしさを出してもよかったような気もする。 |
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