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タイトル名 |
ゼロの焦点(1961) |
レビュワー |
六本木ソルジャーさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2009-11-16 23:02:57 |
変更日時 |
2009-11-16 23:02:57 |
レビュー内容 |
“北陸”という場所が非常にマッチした映画に仕上がっている。 冬の北陸へは数度しか行った事はないので、個人イメージというところもあるが、鉛色の空が似合うちょっと寂しい感じの街だった気がする。 本作において、新婚旅行のときだろうか電車に乗っている際に、金沢への憧れを表す妻と金沢に対する嫌気を表す夫のやり取りが印象的に残っている。 夫にとっては、金沢という場所は想像以上に孤独で寂しい場所だったのではないか(鵜原だけではなくて、社長夫人や久子も含めて)。 ハイヒールを履いて雪の上を歩く妻の姿を見れば、その憧れは単なる憧れであり、現実が分かっていなかったこともよく分かる。 そのため、“北陸”という過酷な地において、それほど好きではない久子とその孤独のスキマを埋めざるを得なかったのかなと感じられた。 それがこの“悲劇”の始まりだろうか。 本社復帰を何度か断ったというセリフはあったが、いったん泥沼にはまると抜け出したくてもなかなか抜け出せないというのはよくあることだ。 パンパンという言葉を初めて聞いたが、当時としては相当な差別対象だったと想像される。 どんなに偽っても、どんなに誤魔化してもそういった“過去”というものは消えず、“過去”は付きまとい、“過去”という亡霊に怯え続けるざるを得ないのだと思い知らされる。 また、人を愛するということは、その人の全てを知りたいと願うことなのかもしれない。 妻はたった7日間の結婚生活だったけれども夫を愛していた。 社長は妻のことを愛していた。 人から愛される度に“過去”というものが浮かび上がってきてしまうもののようだ。 人を愛さなければ、人から愛されなければ“過去”というものは問題ならないのかもしれない。 “過去”というものが非常に厄介なものだということも思い知らされる。 “謎”自体はそれほど複雑で面白みのあるものではないが、それがまた何かを感じさせるものとなっている。 一瞬の感情や偶然によって、事件が複雑に絡まってしまっているだけであり、真実はそれほどドロドロしいものでもなければ、計画的な残酷性があるわけではない。 それが悲しみを引き立てる効果となっていると感じられた。 |
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