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タイトル名 |
黒い画集 あるサラリーマンの証言 |
レビュワー |
六本木ソルジャーさん |
点数 |
7点 |
投稿日時 |
2009-12-21 23:26:15 |
変更日時 |
2009-12-21 23:26:15 |
レビュー内容 |
他の松本清張作品にも「証言するしない」「他人を貶めたようなことが自分にも降り掛かる」といったことが描かれているが、ワンパターンにならずにそれぞれが独自の作品に仕上がっている。 言うも地獄、言わないのも地獄という不倫中年サラリーマンの苦しみがよく感じられる。 因果応報、負の連鎖は見ている者には面白く、かつ教訓を得られるようなところがある。 殺人事件には発展しないだろうが、保身のためにつまらない嘘を付くということは我々にも起き得るシチュエーションかもしれない。 愛人を作るなとは言わないが、状況に応じては正直にならなくてはいけないようだ。 本作を観ると、女性も意外と怖いなと感じられるところがある。 課長に正直に証言しろと迫るわけではなくて、逆にアリバイ作りには熱心となる。 脅されたとはいえ相手に体を許して、別の男性と簡単に結婚までもしてしまう。 男性のズルさというのももちろんあるが、女性の割り切り感も凄い。 その辺りをもうちょっとクローズアップしてもよかったかもしれない。 課長の煮え切らない小心者らしい態度と、OLの割り切り感のよくポジティブな態度が事態をより一層に泥沼化させていくという流れでもよい(実際の女性にはネガティブ思考も多いが)。 凡人ならば、釈放されずに刑に処せられるというオチに持っていくところだが、釈放されるところがある種のポイントかもしれない。 社会的な信用を失い、家族を失い、愛人も失ったであろう主人公には刑務所に入るよりも悲惨な人生が待ち受けている。 この辺りの落としどころは上手いと唸らざるを得ない。 |
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