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タイトル名 |
ラストマイル |
レビュワー |
ころりさんさん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2024-09-11 16:39:04 |
変更日時 |
2024-09-11 16:39:04 |
レビュー内容 |
『アンナチュラル』『MIU』はじめ、野木亜紀子さん脚本のドラマはだいたい履修済み。こうゆう「お祭り」っぽい企画はいろいろ中途半端で残念な出来になることが多いので、期待よりも不安のほうが大きいものの、せっかくなので映画館へ。平日昼間だけど大学生くらいの若い人も多くて活気がある劇場内は久しぶり。みんなが楽しそうにポップコーン食べながら映画始まるのを待つのを見るだけで、ちょっと幸せな気分に。
肝心の本編は、序盤はうーん、不安が的中という感じ。(野木さんが今回チャレンジしてると思われる)問題の根っこがなかなか見えないまま、やや中途半端で類型的な群像劇が続く。誰にも感情移入できないまま、「ヤマサキ」の存在から事件の真相がちらちらと見えてきても、今ひとつ盛り上がらない。その原因の一つは「爆発」のVFXのしょぼさにあったように思う。冒頭の炎から、どれも音だけでびっくりさせる系で迫力に欠けていて、いまいち事態の緊迫感が上がってこない。低予算の自主製作映画ではなく、大企業が結構な予算をかけて作ってる「映画」であれば、そこはこだわってほしかったと思う。そうでなければ、映画」でやったことの意味が半減。結局は、みんな友情出演で大集合のお祭り「テレビスペシャル」だったのかな、なんて結構な失望感を抱えて見てました。
ただ、後半になってくると野木脚本の切れ味がどんどん鋭くなっていく。あきらかに「ア○ゾン」を思い浮かべる巨大EC企業とそれに依存する物流産業の構造。コロナ禍以来、あきらかに増えた軽ワゴンの配送業者の背景にどんな物語があるのか。あの巨大倉庫のなかで何が起きているのか。格差社会の現実とそのなかでの「勝ち組」も「負け組」も誰もが直面するメンタルヘルスの危機まで盛り込みながら、ECが煽る欲望資本主義への批判と「そのなかで」一体私たちに何ができるのかを描く展開には感心することしきり。そして、最後に娘ちゃんがお母さんに贈ったものには、いまを生きるすべての人にとって最も重要なことーー「ぐっすりと眠ること」ーーが示唆されてて、さすがの野木脚本、恐れ入りました。
というわけで物語には十分満足したし、エンタメとメッセージのバランスは相変わらず素晴らしく、これをたくさんの老若男女が見ること自体、すばらしいと思うものの、テレビ的な平板な演出を映画館の大画面で見続けるのはやや辛かった。加えて、「爆弾」そのものの迫力不足なども最後まで解消されず、不満の残る一作でした。 |
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