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誰も知らない(2004) - まいかさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 誰も知らない(2004)
レビュワー まいかさん
点数 9点
投稿日時 2022-04-21 03:19:45
変更日時 2022-06-09 00:39:12
レビュー内容
GYAOの無料動画で視聴。すごい映画でした。劇映画の極限的な表現に達している。カンヌは「万引き」よりも、こちらをパルムドールにしておくべきでしたね。
これまで是枝作品を3~4本見てきて、何故そんなに評価が高いのか理解できなかったけど、この作品でようやく理解できた!これがおそらく彼の最高傑作なのだろうし、これなくしては、その後の作品もほとんど評価されなかったかもしれません。
いわば野坂昭如の「火垂るの墓」と同様の悲劇が現代にも存在しうる…という話ですね。どちらの場合も、たんに「個人の責任」を論じるだけでは済まされません。たんなる「虐待」だと解釈すれば、個人の「犯罪」の話で終わってしまうけど、これを社会的な「貧困」に付随する事象だと解釈すれば、その背後にある構造的な問題を考えざるを得ない。「家の結婚」が消滅して「個人の結婚」が全面化した結果、「老・老」「子・子」「子・老」などで構成された世帯が置き去りにされ、そこでは「共同体・セーフティーネットの不在」の問題や、行政・学校、コンビニ・不動産管理者、ガス・水道・電気など「社会インフラ事業者」の役割の問題など、この映画ひとつを見ても様々な問題が浮かび上がってきます。
一般に、こうした問題は「ブルジョワの良識」をもってでなければ構造的な批判が出来ません。なぜなら、貧困層に属する当事者は目先のことに精一杯で、社会構造の問題にまで考えが及ばないから。それどころか、貧困であればあるほど、権威に取り入って生き延びるほうが合理的になってしまうから、そこから権力批判や構造批判の話はけっして出てきません。中流層もまた、こうした末端の問題には無関心だし、さらに日本の場合は、バブル以降の成り上がりが多いので、ブルジョワ層にさえ良識が欠如しています。その意味で、この映画が2004年に国際的な評価を得た意義は大きいのだと思う。いまの若い世代には「ブルジョワの良識」も復活しているように見えます。
ちなみに是枝作品は、作品ごとに映画の文体がまったく異なるのですね。同じカメラマンでも文体が違う。率直にいって、こちらの初期の文体のほうが説得力があると思います。プロの俳優を起用した予算規模の大きい作品では、かえって文体を制御できなくなっているように見えるし、この映画だけを見ても、プロの俳優の演技よりもアマチュア同然の子供たちの動きのほうがはるかに説得力がある。もちろん本作にかんしていえば、柳楽優弥の存在なしに成立しなかっただろうし、アマチュア俳優を起用すればつねに成功するとも言えませんが。
カンヌの審査員長だったタランティーノは「柳楽優弥の顔が忘れられない」と言ったらしいけど、おそらくすべての観客が同じ感想をもつでしょうね。
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