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タイトル名 |
ワールド・トレード・センター |
レビュワー |
ザ・チャンバラさん |
点数 |
3点 |
投稿日時 |
2006-10-13 22:02:36 |
変更日時 |
2006-10-28 21:01:46 |
レビュー内容 |
9.11という大テーマを扱ってる割に得るものや感じるものがまったくなく、アメリカにとっても世界にとっても重大だったこの事件をテレビ並みの安っぽいドラマで描かれてもなぁって感じです。この映画は突然の脅威に見舞われた普通の人たちの驚きや悲しみ、そしてその恐怖を乗り越えて果敢に立ち向かうことの勇気を描こうとしたのでしょうが(いかにもアメリカ人の好みそうな図式です)、残念ながらそうした熱い感情を伝えるような出来ではありませんでした。職務のために身を犠牲にした主人公達の人となりや言動は、事件後さまざまなメディアで取り上げられ、美化されてきたニューヨークの勇気ある公務員そのもの。それ以上でもそれ以下でもないので、この映画固有の登場人物としての深みはほとんど感じられません。港湾警察が「本当か?」と思うほど多彩な人種でバランス良く構成されていたのもなんだかいやらしかったし。また主人公家族の葛藤も本当にありきたりで演出のレベルも高くなく、「炎のメモリアル」や「ワンス・アンド・フォーエバー」といったさほど完成度の高くない過去の作品と同程度のものしか見せてくれません。9.11というテーマがテーマだけに勝手に脚色できない、娯楽作として面白く作りすぎると不謹慎ととられる、それでいてアメリカ人の中にある9.11物語にかなった話にせねばならない等大きな制約がいくつもあったことは推測できます。日本において戦争映画を作ると、必ずと言っていいほど反戦平和を前提にしたつまらない映画ばかり出来てしまうのと同じ現象がここでも起こったのでしょう。しかしこれをよりによって元ハリウッドの問題児オリバー・ストーンが撮ったというのがおもしろい。思想を揺さぶるような映画を得意していた彼がまさかこんな飼い慣らされた映画を撮ってしまうだなんて。しかも一方では、批判にさらされることを覚悟の上でハリウッド歴の短い気鋭の監督が大胆に撮りあげた「ユナイテッド93」があるのですから、人って歳がいくと丸くなるんだなと、妙なところで納得してしまいました。 |
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