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タイトル名 |
リトル・チルドレン |
レビュワー |
ザ・チャンバラさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2009-05-30 17:49:35 |
変更日時 |
2009-05-30 17:49:35 |
レビュー内容 |
大学院まで出たのに今は郊外で退屈に暮らす主婦と、ロースクールを卒業して華々しい人生を送るつもりが司法試験に合格できない主夫の不倫を通して、普通の人たちの抱える心の隙間、満たされないモヤモヤがうまく描かれた作品でした。豪邸に住んでるんだからいいじゃないか、美男美女の夫婦でうらやましい、世間的には満たされているように見えても、当の本人は満足していません。それは今の生活への不満ではなく、「ほどほど」で落ち着こうとしている今の自分を認めたくない、自分には何か可能性があるのだと信じ続けたいという欲求でしょうか。大人になるのは切ないことで、若い頃には持つことができた漠然とした希望を捨てねばならない、自分には何ができて何ができないのかを悟らされるため、広がった自我と限られた現実を突き合わせないといけない。そのギャップに悩まされるのが20代後半から30代前半という主人公達の年齢に当たります。反発すべき明確な対象もなく、努力すべき目標も見つからない(サラはただ退屈に日々を送り、ブラッドは司法試験に合格できないことを悟っているものの、他にやるべきことがありません)、しかし今の自分は自分ではないのだと思いたいという自我のみが存在する。その隙間を埋めるために見つけたのがフットボールであり不倫なのでしょう。本作の不倫は独特で、普通不倫といえば生活感ありすぎの奥さんから派手なものへ魅かれていくのですが、ここではスーパー美人のジェニファー・コネリーを捨て、主婦丸出しのケイト・ウィンスレットと駆け落ちしようとします。サラもブラッドも人生を賭けていいほど相手に魅かれているのではなく、このままでは認めざるをえない現実を否定するための幻想として不倫をしているのです。ラスト、サラは自分が守るべきものを再認識し、ブラッドはスケボー(!)で満足感を味わうことで、あっけなく駆け落ちを思いとどまります。ラストがつまらんという意見もありますが、このあっけなさこそが大事でした。もしここが劇的であると、映画の主張しようとすることが見えなくなります。また不評のナレーションも曲者で、状況説明や上っ面の心情描写はするものの、映画の主題に当たる部分については一切語らず、そこは見る者に投げています。小説のように行間を読むことを観客に要求してきており、そのため文学作品に近い質感を作るべく無機質なナレーションを挿入したのでしょう。 |
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