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タイトル名 |
ミスト |
レビュワー |
ザ・チャンバラさん |
点数 |
10点 |
投稿日時 |
2008-06-02 02:46:37 |
変更日時 |
2008-06-02 02:46:37 |
レビュー内容 |
監督は一般にドラマ路線のイメージの強い人ですが、「エルム街の悪夢3」でデビューした、元はこっち方面の人。その時代の「ブロブ/宇宙からの不明物体」は出色の出来で、観客の先読みを読んでその裏をかいてきたり、静かなテンポからスペクタクルへの大転換をやってみせたりと、B級モンスター作品でありながらかなりの技量を見せた人物です。また「ザ・フライ2」や「フランケンシュタイン」では異形の者の悲しみを描いており、ホラーとドラマをこなす人物なのですが、その2つの才能が本作では見事に発揮されています。丁寧かつ周到な人間描写と、タイミングを心得たモンスター描写の巧さ。何も見えない霧という設定が非常に秀逸なのですが、外部の状況が読めない、解決策が見えない分、人々は答えをスーパー内部に求めようとします。最初は「変な人ね」とバカにされてたあのウザイおばちゃんが、人々の不安の中で多数派の指導者となっていきます。主人公のような具体的な行動は何ひとつしていないのですが、「悔い改めて神の意志に従うことで救われる」という解決策を唯一持っている人物なので、答えを求める人々が彼女の元に集まってくるのです。そして宗教的な熱狂と集団心理から、何の責任もない下っ端の軍人をリンチし、子どもを生贄として差し出そうとまで言い始めるあたりの怖さとリアルさ。主人公もまた、この事態から脱するための答えを求めています。彼の信じた答えはより現実的で、駐車場の車まではなんとか辿り着けるだろうから、車に乗ってともかく行けるところまで逃げようというものでした。観客にとってもマトモに思える答えでしたが、これを正解としなかったのがこの映画のニクいところ。エンドクレジットで響くヘリの音は軍による大規模な救援を意味し、スーパーに留まっていればじきに助けが来ていたことの暗示でしょう。「主人公のやることは最終的に正しい」という映画の定石を逆手にとり、とんでもなく絶望的な印象で映画を締めくくってしまいます。またモンスター描写も圧巻で、モンスターが登場するシーンはそれほど多くないのですが、圧倒的な恐怖演出と描写の不快感、タイミングのうまさで、終始とんでもないモンスターに取り囲まれているという緊張感が全編を貫いています。ここまで全身に力を入れながら見入った映画はここ数年なかったと言えるほどで、久しぶりに10点を献上できる作品に出会いました。 |
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