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タイトル名 |
ブルーバレンタイン |
レビュワー |
ザ・チャンバラさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2015-08-29 00:09:20 |
変更日時 |
2015-08-29 00:09:20 |
レビュー内容 |
子供とふざけていると「バカバカしいからやめて」、付き合っていた頃には喜んで聞いてくれていた冗談を言うと「うるさい」、ムードを出そうとすると「気持ち悪いから近寄らないで」、我が家で日夜繰り広げられている光景ですが、本作にはこれらに相当する場面がことごとく盛り込まれており、倦怠期に入った夫婦生活の実態が容赦なく描写されています。結婚を経験した人であれば世界中の誰もが「わかる、わかる」と頷ける内容となっており、個々の描写のリアリティで本作は他作品を圧倒しています。 同時に、ストーリーテリングの技の多さや、その洗練度でも本作は驚異的な水準に達しています。説明的なセリフはまったくないものの、小さなエピソードの積み重ねによって登場人物の背景や感情は完璧に伝わって来るし、何気なく眺めていたことの意味が後に明かされるという語り口は、映画全体に対する観客の関心を維持することに繋がっています。『エターナル・サンシャイン』や『(500)日のサマー』等、恋の始まりと終わりを同時に見せる映画は他にもあり、かつ、このジャンルは良作揃いだったりもしますが、映画としての完成度の高さでは、本作が最高ではないかと思います。 偶然の出会いから劇的な結婚まで「私たちは特別なカップル」と思っていた夫婦であっても、お互いへの熱を維持することは難しい。この二人は破局しますが、どちらが悪いわけでもないという点に男女関係の難しさがあります。冒頭、ある朝の一幕がすべてを物語っているのですが、この二人は生活のテンポがまるで噛み合っていません。物事が手順通りに進んでいかないとイライラするシンディに対して、子供の悪ふざけに付き合い、完全に立ち止まることもあるディーン。この差は人生観にも影響を与えていて、何かを成し遂げねばならないと常に目的意識を持つシンディに対して、家族と楽しく生きられることこそが重要であり、仕事なんて食べるための手段に過ぎないんだから一生懸命やる必要はないと考えるディーン。どちらも間違っていないからこそ問題は深刻で、直すべきものが見当たらない中で、時限爆弾のように破局が迫ってきます。そして一線を超えた後は、二人がともに引き返すことを願っても、もう戻れません。ディーンが勢いで結婚指輪を茂みに捨てるものの、すぐ間違いに気づいて指輪を探しに戻るが、もう見つからない。この場面が象徴的でした。 |
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