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タイトル名 |
黙秘 |
レビュワー |
ザ・チャンバラさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2015-09-08 16:07:20 |
変更日時 |
2015-09-08 16:07:20 |
レビュー内容 |
これは秀逸なサスペンスドラマ。過去と現在の殺人事件が密接な関わり合いを持ち、それらの謎が薄皮を剥がすように明かされていくという観客の好奇心に訴える構成と、明かされた真相にはドラマ性が多分に含まれているというオチのつけ方、どちらも見事なものでした。 本作のキャラクターで私がもっとも興味を引かれたのはマッケイ警部でした。家族はなく、仕事にのみ生きがいを見出しており、10年以上前の未解決事件であっても決して忘れず執念の捜査を続ける刑事。彼は『ランボー』のティーズル保安官や『許されざる者』のリトル・ビル保安官と同種のキャラクターであり、容疑者視点の物語だから悪役となっているだけで、一般的には、むしろ正義の人として描写される人物です。ジョーの死を殺人と見た刑事としての勘は正しく、実娘に対する性的虐待という事件の重要なファクターを知らなかったのだから、彼があれくらい厳しくやってもおかしくはありません。 対するドロレス。彼女には男社会に対する根深い不信感があって(学資預金のトラブルを事前に挿入しておいた構成の妙)、マッチョの権化であるマッケイを自分と娘の協力者として取り込むことはできないと直感的に判断し、「旦那の件はただの事故死」と言って一歩も譲りません。法治国家の原則からすれば間違っているのはドロレスの方なのですが、彼女にあるのは「自分が捨石になってでも娘のための道を作る」という狂気に近い執念であり、それは善悪を超越したレベルにまで達しています。男社会と母性の対立こそが本作の山場ですが、それぞれを象徴するクリストファー・プラマーとキャシー・ベイツの熱演もあって、これが壮絶な見せ場となっています。 無自覚のうちにそんな争いの中心にいたセリーナは、親の心子知らずの極致をいく難役でしたが、JJリーの繊細な演技のおかげで、観客から憎まれないギリギリの範囲内に収まっています。都会でバリバリやってる若者が、教養のない田舎の親をバカにして、ロクに話も聞かない。ちょっと前の私も似たような状態にあったので、彼女の態度に対しては共感とイラ立ちの両方を覚えました。ウザい、ダサいと疎ましく思っていた母親が、実は自分を守るために人生をかけていたことに気付いた時の感動や、それを受けて、マッケイ刑事への反撃を開始する場面の爽快感など、深いドラマ性とある程度の娯楽性を両立させた演出バランスも優れていると感じました。 |
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