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ギターを持った渡り鳥 - ユーカラさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ギターを持った渡り鳥
レビュワー ユーカラさん
点数 8点
投稿日時 2012-02-26 21:51:53
変更日時 2012-02-26 22:01:17
レビュー内容
雄大な山肌を背にした一本道を荷車が往くファーストショットから素晴らしすぎる。
灌木が疎らに散らばる平原。あたかも演出されたかのような雲の表情。それはいかにも北米西部の荒野の風情だ。函館方向と大沼方向を示す道標から、背後の山が北海道大沼の駒ケ岳とわかる。

続いて函館山から俯瞰した市街、その夜景、そして歓楽街の街路へと画面は移り、バーの店内ではアメリカ人らしき船員らが揉めている。そのバーの長いカウンターテーブルの美術がまた彼国風でいい。
そこへ至る一連の流れも鮮やかだ。

映画は港の倉庫街、連絡船乗り場、湾内の堤防、函館独特の坂道などを奥深いパースを用いながらシネスコ画面を目一杯使って的確にフレーミングしてみせる。

とりわけ、序盤で通りがかりの子供のために風船を買ってやる小林旭の、橋を使った縦構図のロングショットなどは絶品だ。

洋上の船の荒々しいローリングも素晴らしく、ロケーションの魅力が全編に亘って存分に詰まっている。
その揺れる船上で対決する小林旭と宍戸錠も相当なタフであり、殴り合い主体の擬斗シーンもカットを割ることなく、持続的なアクションを当人が見事にこなしている。

ビリヤード台を挟んだ二人の、因縁の対決の瞬発性。
主人公の過去を数ショットに留め、多くを語らない経済性。
シンプルな物語を効率よく語りながら、主題歌のメロディを明確に印象付けてしまう洗練された技能。

それらが、充実しながら無駄のない77分を創り出している。
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