|
タイトル名 |
未完成交響楽(1933) |
レビュワー |
ユーカラさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2011-11-12 17:00:43 |
変更日時 |
2011-11-12 23:51:24 |
レビュー内容 |
アバンタイトルの風景画が粋にドラマへの導入を果たす。
ヴァイオリンを愛おしそうになでる手、ガラスに映る主人公のシルエットと、窓口を介したシューベルト(ハンス・ヤーライ)と質屋の娘(ルイーゼ・ウルリッヒ)の出会いのカットバックがまず素晴らしい。
質屋のチャイムの音色はさりげなく反復対比され、主人公の心情表現として響き、その窓口で娘が客を応対する声音の対比も、彼女のときめきを伝える。
あるいは彫刻の破砕音が凶兆を仄めかすなど、歌曲・楽曲だけでなく、風物を含めた様々な音響の活用にもトーキー初期の意欲が漲っている。
一方、天秤やメトロノームといった小道具の活用や、縦横無尽の巧みな移動ショットの充実ぶりも眼を瞠る。
小津のトーキー第一作『一人息子』の劇中にも借用された、マルタ・エゲルトが走る麦畑の横移動ショットがやはり際立って見事だ。
『一人息子』の日守新一は横で居眠りする飯田蝶子に目をやりながら、スクリーン上の主人公の姿に身につまされたのかも知れない。
|
|
ユーカラ さんの 最近のクチコミ・感想
未完成交響楽(1933)のレビュー一覧を見る
|