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タイトル名 |
私は貝になりたい(1959) |
レビュワー |
Tolbieさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2011-07-20 15:09:22 |
変更日時 |
2011-07-20 15:09:22 |
レビュー内容 |
こういう映画って、どうしても「反戦」のメッセージを読み取らないといけないと言うような風潮の中で、学生時代を学んだ。当然、その時代に自主上映会で最初に観た時には、「この映画は、反戦を訴えているんだ」と考えながら観た。しかし、今から見るとまだまだ戦後を引きずっていた、あの時から時間が過ぎ、"洗脳"も溶けかかってきた今、これを見ると、この映画の主題は「絶望」ではないかと思えてくる。 激しい戦闘シーンで殺し殺される恐怖を描くのでもなく、戦闘による重症や被爆などによる悲しみを見せるでもないこの映画が、かくも絶望を思わせるのは、表題にもなったこの「今度生まれ変わるときには、誰にも邪魔されることもない、深い海の底の貝になりたい」という言葉に現れている。直前に妻や子供に対して、もう一度会いたいという思いを綴りながら、来世にはもう何ものとも関わりないことを望む。すべてを拒絶する絶望感。「戦争」というよりは、理不尽に対する怒り。いや、怒りという能動的な力もない悲しさ。 同じように戦闘のない戦争を描いた映画、「戦場のメリークリスマス」のハラ軍曹も、同じように死刑になる。彼もまた、自分の行動は、日本軍の軍人としては当たり前の行動だと理不尽を嘆く。それでも彼は「メリークリスマス」と祝いの言葉を他者に与えた。
豊松の絶望感、いかばかりであったか。
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