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マイ・プライベート・アイダホ - 映画の奴隷さんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 マイ・プライベート・アイダホ
レビュワー 映画の奴隷さん
点数 8点
投稿日時 2023-03-09 19:55:54
変更日時 2023-03-09 19:55:54
レビュー内容
いやー、景色が美しく、時間の進むのが早い映画だった。

何より(好みは別として)撮影手法が生々しくも素晴らしい。
そして、思い起こす…胸の奥の奥にある記憶。
それが事実としてあったのか?それとも俺の妄想か?
多感な時期故に、何かが胸に突き刺さり、ズキズキと痛くなる。

この作品は…そうだ、一言でいうならば。
青年になってから味わう(かも知れない)「スタンドバイミー」って印象。

いや、それについては人それぞれだろう。
けど、味わった人は「本当の大人」になれるんじゃないか?と思う。

そう「本当の大人」だ。

もちろん、年齢だけの事じゃない。
表現するなら「人の気持ちが分かって同情できる人間」だ。

この作品は例えるなら…少年が、射精を覚えてから青年にるまでの時期。
微妙かつ、これから大人になる時に、影響を与えるだろう慎重なタイミングだ。
感化され易く、そして影響を受けやすい時期…。

――朱に交われば赤くなる。

まさに多感かつ、末端に広がってゆく心を持った者にとって世界とは……(例として)赤き世界。
狂った「赤き世の中」でも、狂った人間にならないように防護壁を作り…ただただ自分を護る。
そして、狂わなかったが故に「何の存在意味もなくなった大人」になってゆく。
そんな悲しい場所が、我々の済んでいる……この世界だ。

青く産まれようが、緑の癒しを持とうが…赤き世界で生きるのは過酷だ。
ならば――「朱に交わり赤くなれ」と大人や偉い人は問う。
それがこの狂った世界で…赤き人らの創るルールだ。

ああ、その世界の異常さよ。
個人の突出などは、何の意味もない。
赤き世界の目線で「狂ってない人間」を量産するため、生産を促す。

永遠の命などは決して無い。
なのに、誰がそんな世界で永らえたいのか?
人はそこまで長生きできない。
狂ってる世界だからこそ…寿命すらも全う出来ない人間も出てくる。

やれやれだ…心の底から、赤き世界に失望する。

     *


     *

ん―――で、だ。
この映画はガス・ヴァン・サントの特異な演出で進んでゆく。
想えば、過去…1989年、マット・ディロンの「ドラッグストア・カウボーイ」で知った職人監督だった。
その後も「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」や、1998年版の「サイコ」とか
あ、そうそう!ショーン・コネリーの「小説家を見つけたら」などもあった。
作品のバリエーションも素晴らしく、その多彩さに感銘を受けたのを想い出す。
編集とか録音とか…かなり細部に拘る監督なのかな、と推察してる…作品を観てると、かなり細かい配慮がされてるしね。

しかし、なんと言っても主役の2人が素敵だ。
今は亡き「リバー・フェニックス」が「居眠り病」という奇異な難病持ちのマイクを好演。
そして「キアヌ・リーヴス」が演じるスコット…その2人の関係が「過去の何か」を想い出させて、個人的に胸に来た。

映画は…男娼、同性愛、ドラッグ、近親相姦、ナルコレプシー(居眠り病)などの人間が故の業(カルマ)を扱いつつも、若者の心情を鋭く描く事に挑戦している。
なんでも、聞いた話によると…アレ。
ウィリアム・シェイクスピアによる「ヘンリー四世/第1部」と「ヘンリー四世/第2部」、そして「ヘンリー五世」の三戯曲を原作としているらしい。

若者としての多感さ、そして繊細さを持ちつつ…互いに傷つけ合うのを恐れても、寄り添い合う2人が悲しくも切ない。
そして…結果が残酷過ぎた…俺には。

そして、この作品が上映されてから30年以上前だ…早いな。

キアヌとリバーの友情の話は、今も…胸に衝動を与え続けている。
今も、リバーに貰った靴(にテーピングをしながらも)履き続けているキアヌ・リーブス。
中には「あれはポーズ」とか言う奴も居るけど、そんな事を言う奴にとっては……うん、それでいいと思う。
ただ、本当の友情を知る奴にとっては、当たり前の光景でしかない。
有るはずのモノが見えない……悲しい人生だな、と同情する。
そして、永遠の友情を生きている姿って、本当に素晴らしいんだな、と思う。

映画のラスト…アレはアレで残酷だけど自然だった。
想うのは…人間の繋がりって、自分だけじゃなく周囲からも伸びている。

この狂った赤い世界であろうが、うん。
そこを、見失ってはいけない。
そして、大切な人を彷徨わせてもいけない。

ああ、美しい景色よ。
ああ、流れる雲の早さよ

ああ、残酷な日々よ…。


Have a Nice Day


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