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タイトル名 |
残菊物語(1939) |
レビュワー |
よし坊さん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2008-07-12 06:31:48 |
変更日時 |
2008-07-12 06:31:48 |
レビュー内容 |
ようやく溝口健二監督作品初鑑賞です。初鑑賞がこの映画でよかったのかは分かりませんが・・・、鑑賞を終えて深い溜息と感慨に包まれています。とにかく立派な映画やなーと感嘆します。オープニング・クレジットから長回しの移動撮影(笑)ですが、その丁寧な文字のセンスから既に格調高い香りがたちこめています。内容はもちろんのこと、素人目にも感じる目も眩むような素晴らしい構図と、完璧に作りこまれた家屋内外のセットにさえ微塵の隙も感じさせません。汽車や駅構内の造りから、風鈴を売る屋台まで、僕には知る由もない当時の情景さえも、たまらなくその時代を偲ばせてしまうのです。そして映画の本筋ですが“芝居の世界には家柄というものが無くてはならない”この事実をお徳は最初からどこか冷静に理解していたから、大阪へと向かった時点でさえ下積みだけを共にする覚悟が出来ていたのでしょう。こう簡単に書いてしまうのも気が滅入るほど壮絶な覚悟ですが、それをお徳が求めたというこの一人の女の生きざまが、痛々しいほどに、しかもさりげなく描ききられているように思える。これは何ということだろうと思う。それにしてもテンポがいい映画とは思えないのに、観ていて時間がアッという間に過ぎていきます。これぞ静かなる躍動感、この出来栄え、この時代、この日本映画の力量に感無量です。 |
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