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タイトル名 |
沈黙のパレード |
レビュワー |
目隠シストさん |
点数 |
5点 |
投稿日時 |
2023-10-17 18:17:51 |
変更日時 |
2023-10-17 18:17:51 |
レビュー内容 |
ネタバレあります。ご注意ください。
黙秘を貫き通し無罪となった過去を持つ犯人へ「沈黙」を武器とした報復を。宮沢麻耶の台詞「沈黙は罪になるのですか」が意図するのはこれ。またタイトルが意味するところでもあります。共謀者全員が「知らぬ存ぜぬ」を突き通せたなら、仮説と状況証拠だけでの犯罪立証は難しかったのでは。ですから団結して口を閉ざす人々の心をどう開かせるかが物語の焦点・・・のはずだったのですが、一人があっさり自供して腰砕け。そう、身も蓋もない言い方ですが犯人への恨みの度合いは人それぞれ。いみじくも戸島修作が言った「悔しさの次元が違う」は関係者全員に当てはまりました。「殺してやりたいくらい憎い」と「殺す」とでは天と地ほども差があるということ。「覚悟」の違いとも言えます。現代日本において仇討ちを(自身の心の内であっても)正当化するのは難しい。それだけ多様な価値観が認められ、遵法精神が浸透した成熟した社会という事なのかもしれませんが。 もっとも本件の場合、純粋な復讐劇ではありません。入り口は復讐でも出口は怨恨。実行犯は私的な事情で犯行に及んだ事が判明しました。殺害動機の裏に「隠された真実」あり。ところがこの隠された真実とやらがどうにもお粗末で。「本当は殺してないのに殺してしまったと思い込む」は理解できます。錯乱していれば尚更です。しかし今回のケースは無理があり過ぎました。あれで死ぬなら、私は今までに3回は死んでいます。せめて傍から見て「そう思い込んでも仕方がない」くらいにはリアリティが欲しいわけです。突き飛ばした場面はあくまで回想の中の出来事。尖った岩や遊具の角に頭をぶつけたと事実を誤認(記憶を改ざん)してください。それで初めて「髪留めからは血痕が検出されず」という「事実」が「実は殺していなかった」という「真実」に変わるのですから。 映画化もされているアガサ・クリスティの某有名ミステリーと同じ集団復讐。ポイントは「私人による復讐は許されるか」ではなく「真実を知って目を瞑ることは許されるか」です。共謀者たちには「黙秘権」が認められているので当然に可。しかし黙秘権は草薙刑事には及びません。望まぬ真実であろうとも追及し詳らかにするのが職業倫理でしょう。問題は湯川先生。事件に関与していない湯川先生に「黙秘権」は発生しませんが「沈黙」が罪になる訳でもありません。でも気づいてしまった事実を知らなかった事にするのは性分的に無理でしょう。それが研究者の性だと思います。今回真実を暴いた清算はいかほどか。自分が人殺しだと思い込んでいたあの人は救われました。実行犯のあの人の罪は重くなりました。その他の関係者は概ね罪が軽くなりました。言い方はあれですが関係者全体の損得勘定で言えばプラス査定と言えそうです。 殺人方法は奇想天外でもなければ、専門家以外扱えない特殊な技術も必要ありませんでした。その為かお約束の「湯川先生の数式推理シーン」は無し。久々のガリレオシリーズ、しかも劇場版と考えれば些か寂しい気もしますが、TVドラマ版ファーストシリーズのレギュラーをキャスティングした功績により不問とします。やはりオリジナルメンバーというのは良いものです。ただ、ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても平坦な印象で「見応え」があったとは言えず、本作に対する評価は「キャスティングがいい」「KOH+の新曲が聴けて嬉しかった」に集約されてしまいます。 |
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