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タイトル名 |
カラオケ行こ! |
レビュワー |
目隠シストさん |
点数 |
9点 |
投稿日時 |
2025-04-18 18:24:07 |
変更日時 |
2025-04-18 18:24:07 |
レビュー内容 |
原作は『アメトーーク』でオススメ漫画として紹介されていた記憶がありますが、正直言って惹かれる内容ではありませんでした。カラオケは自分で歌ってナンボ。他人の、ましてや素人のカラオケに興味はありませんから。しかし!この映画は面白い!!大いに笑い、心を掴まれました。先生の言うところの"大人の階段昇る"少年の成長物語にグッときます。成長とはすなわち変化。身体の変化であり、心の変化でもある。仲間が変わり、居場所も変わる。少年の階段はカラオケルームに繋がっていました。 クライマックスは主人公が歌う『紅』でした。これがまあ沁みるのなんの。なぜ彼の歌は心を打つのでしょう。それは愛が詰まっていたからです。合唱部顧問の先生が言う「最後は愛やで」はお花畑ではありません。紛れも無い真実。少年の、いや青年の歌は本物の鎮魂歌だから皆の胸に響いたのです。たぶん歌で一番大切なのは完璧さでもなければ、テクニックでもありません。相手を思いやる心です。心ある歌は必ず響きます。青年の晴れ舞台は大勢の観客が見守る大ホールではなく、場末のスナックの小さなステージでしたが。 合唱部部長。エースでソプラノ。そんな主人公に訪れた「変声期」は自然の摂理とはいえ彼を苦しめました。綺麗に出せない高音。さぞ辛かったでしょう。少年とは往々にして完璧主義者です。完璧でなければ意味がない。後輩くんもまさに同じメンタルで、もがき苦しむ部長が怠けているように見えたのでしょう。「少年の物差し」ならそう見えて当然です。そういう意味ては完璧主義からの脱却が「大人になること」の第一歩かもしれません。この点、男の子より女の子の方が一歩先を進んでいるのが分かります。 完璧主義とは無知に由来する幻想と考えます。世界を知れば知るほど、どんなに無意味な信仰か思い知るもの。きっと彼は世界のかたちを少し知ったのだと思います。ままならぬ声。カラオケの上手い下手で人生が狂わされる集団。完璧なんて目指していたら生きていけません。不完全上等。不完全の何が悪い。一般的に忌み嫌われる「妥協」とは全く性質が異なる「許容」であります。かすれて高音が出ない『紅』が私たちの胸を打ち、愛おしく思えるのは「不完全こそ美しい」からだと思います。 最後に老婆心ながら。狂児は人たらしの天才です。主人公でなくてもメロメロにされて当たり前。ですが反社であることには変わりはありません。付き合ってはいけない、というより付き合えない人たちです。本作はコメディであり寓話でもあるので問題視しませんが、狼と羊の友情が成立しないのとおなじ世の摂理なのでお間違いなく。 |
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