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タイトル名 |
天使のたまご(1985) |
レビュワー |
猫の足跡さん |
点数 |
6点 |
投稿日時 |
2008-01-03 03:02:12 |
変更日時 |
2008-01-03 03:02:12 |
レビュー内容 |
男性器を模したような戦車(大人/死/現実)に乗って現れた男と、卵(子供/生/希望)を守るように抱え、逃げ出す少女。「あなたは誰?」という問いかけは、お互いがお互いを求めつつ、決して完全には理解し得ぬ男女の存在を表しているようだ。卵を服の下に入れた少女の姿はまさに妊婦のそれであり、愛しそうに命の象徴である「水」眺める様には母性を感じさせる。一方、ジャムを舐める仕草などは非常にエロティックであり、追ってくる男に対し、異性への興味と警戒という少女らしさを見せたかと思えば、次の瞬間、魔性の表情を覗かせ女の不可思議さを描き出す。希望の象徴である卵(鳥)を有し、育んでいる少女にはまた、「大人になる前の少年」という側面もあるように思われる。「剣で卵を刺す」というのは性交の暗喩であると思うが、新たな命を生むはずの生殖行動が、同時に「死」や「希望を絶つ」という結果に繋がっているのが興味深い。「ノアの方舟」をモチーフとしたこの物語に於いて「水」は「滅びと再生」を意味し、物語の最後、少女が女になると同時に街を満たして世界を滅ぼす。「少女(少年)の死」・・・即ちそれは「成人の誕生(大人への成長)」であり、閉じた世界からの脱却、夢の世界の終焉であるのだろう。卵が割れる前にある可能性は無限で、そこに幾らでも「夢や希望」を託していられる。そこに留まって夢を見続けている限りは幸せだが、割ってみなければ中身(真実)は分からない。ひとたびそこから足を踏み出せば、もう後戻りは出来ない。自分は何者なのか。何のために存在するのか。何処へ行こうとするのか。永遠にそれを探し彷徨う旅人となる。しかしその答えを見出せずとも、男と女が出会うことで新しい命が生まれ、大人になり、そしてそのことにより世界は成り立ち、また連綿と続いていく。卵を割ることで男は少女を、そして自らの中にある少年を大人にするが、少女は「女」という別のものに生まれ変わり、別の世界へ旅立つ。男にはかつて自分が希望を追う少年だったという記憶だけが残り、独り立ち尽くす。自らの体内から新たな生を産むことにより、少なくとも生物や時間の歯車の一端であるという実感を持てる女と、永遠にそれが持てぬ男の虚無感でもあるのだろうか。様々な解釈が成り立ち非常に想像力を掻き立てられたが、正直評価は難しい。人に薦めようとは思わないが、こういうものもあって良いかなと思う。6点献上。 |
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