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タイトル名 |
キツツキと雨 |
レビュワー |
Balrogさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2013-03-23 12:18:32 |
変更日時 |
2013-03-23 12:18:32 |
レビュー内容 |
冒頭から「うまい」と唸らされる。構図や伏線、脚本など全てが自然でよどみがない。笑わせるテンポもいいし、しつこくならない程度に息子とのドラマが垣間見え、全体のバランスも崩さない。傑作。どちらの主人公も自分に厳しくストイックに生きてきた人間だが、どうもうまくいかない、不本意なことがある状況から始まる。これは「甘いものを食べない」ということを厳しくお互いが守ることによって象徴的に表現されている。お互いの交流をテンポ良く描きながら、似た者同士が理解し合っていく。一方で監督と岸は似ているだけでなく、岸は監督に息子の姿をも見出している。それが息子の理解にもつながる、といううまい流れとなる。中盤以降で二人がストイックさを有る意味捨て、あんみつをたっぷりのシロップで食べるが、そこから二人は不自然な厳しさ、無用なストイックさを捨て、ある意味素直になって初心に帰ることができたのである。監督は「父親にもらったビデオカメラが原点」という話に戻ることによって自信を深め、岸は「君の父親はそんなことを思っていない」と自分に重ねあわせることによって、息子を純粋にかわいく思う気持ちへと回帰している。序盤で「最初はかわいいが、すぐにかわいくなくなる」と岸自身が言っているのも重要で、その「最初」に戻ることを意味しているのである。他にも感心するような伏線がちりばめられており、素晴らしい映画であった。 |
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