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タイトル名 |
ウォー・ゲーム(1983) |
レビュワー |
えんでばーさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-02-20 09:02:31 |
変更日時 |
2025-02-20 09:02:31 |
レビュー内容 |
自分がコンピュータに触りだした頃に見たときは、単に、へえ面白いなあと感じただけだったんですが、歳を取って今になって再見すると、いろいろ考えられていた映画だったんだなあと感じ入っています。 冒頭の、ミサイルサイトの軍人が、結局は人を殺すための発射はできないと拒む場面。最初に見たときはWOPR導入のための作りエピソードかなと思っただけでした。しかし、日清日露の両戦争で日本の軍人さんも人を殺す嫌悪感から、最初は半分以上が相手に当てないようにわざと小銃の照準を外して撃っていたこと、第一次大戦の欧州でも同じだったこと、ウォーゲーム当時のアメリカでも未だに大問題であったことなど、全く架空のエピソードではなかったことを知ったのは随分あとになってのこと。また、ここの感想でもウォーゲームの設定は荒唐無稽と思う人が多いみたいですが、実際にNORADのコンピュータが複数回侵入されていたこと、当時のコンピュータシステムの故障でミサイル発射寸前まで行った事例が本当にあったこと・・。この映画はおもちゃ箱みたいな感じで撮ってますが、根幹の危険性は実際にあったというのが戦慄します。試写を見たレーガン大統領が精査をしたところ、システムの杜撰さは映画以上に酷かったという驚愕のエピソードもあります。WOPRに入れ替えてなくて良かったね。 細部の描写はNORAD内部を除いてよく考えられています。主人公デビッドのマシンはIMSAI8080。これにキーボード、モニタ、フロッピーディスク、音響カプラ、プリンタのてんこ盛り仕様。いやあ金持ちだなあと思ってましたが、同時執筆のノベライズを読むと、映画でも出てきた大学とかのジャンクヤードから拾ってきて修理したという設定。ちなみにノベライズではマシンはAltair8800。中身は両機は互換ですが、なるほどと納得。Altair8800のトグルスイッチより、IMSAI8080のカラフルスイッチの方が映画映えしますものね。音響カプラ、懐かしいなあ。これもわかりやすいアイコンです。ノベライズでは箱のモデムになってる。箱よりは電話機の方が当時のネットワークの象徴としては直感的。 デビッドの、暗証キーをテープ録音で細工したのも、原理的には可能。そういえば、当時ピポパポの音を聞いただけで電話番号がわかる友達もいたなあ。公衆電話ただ掛けは、あの方法ではできません。やる方法もあるんですが、真似されないように映画ではわざわざ不可能なやり方に変えたそうです。今見ると何もかもが懐かしい、古き良きパソコン通信の時代。あえて、NORADの部分には言及しませんが。 映画は、かなりアップテンポ。女子高生が人の言うことを聞かず、喋りがうざいのは全世界共通仕様。デビッド役のマシュー・ブロデリックは当時21歳。若くて細くて「プロデューサーズ」とは懸け離れた体型です。フォルケン役のジョン・ワット、さすがオックスフォード出のイギリス人、厭世的で理屈っぽいキャラを上手く演じています。 定義にもよるんですが、コンピュータが無益を理解できるかどうかについては当時は荒唐無稽の議論でした。エキスパート・システムからAIと段階を踏んできて、今ようやくセルフディープラーニングの時代になって、現実化してきているとは言えますかねえ。まあ、当時も「勝者なしで相互確実破壊なら実行不可って条件入れるだけでいいじゃん」と言われていて、それだと映画の根幹が崩れますが。 ただ、今の子はこの映画を見てわかるんだろうか。この映画について、若い人がパソコン通信とインターネットを混同している評論を時折見ます。インターネットはこの時代にはまだ前身のALPANETしかないです。もっとも、ALPANETは核戦争で中央コンピュータが全滅しても、ネットワークが無事であることを目的として設計されたもの。ある意味繋がってはいるんですね。 |
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